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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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食文化が違っているから

こんばんは。

今年も国家試験が間近になる月ですが、ぼちぼちUPしています。

正直書いてすぐUPしているので、誤字脱字など、展開のわかりやすさを意識していられないです。

そのうち、シリーズ全てにテコ入れして訂正して行きます。


そんな感じですが、お付き合いいただいている方、ありがとうございます。


落ち着きましたら、全てのシリーズ進めていきます。

        ※


「サナレス殿下大変です! 血清を投与した者のうち発症したものが出ました」

「ーーそうか……」

 相槌を打つ力が削げてはいたが、返答しないでいるわけにはいかない。報告は、自分が施した予防という治療は充分ではなかったという落胆する事実だった。


 何かが足りない。

 病気になり今にも命を落とそうとしている患者から得て作った血清では、決定的に足りないものがあった。ハウデスのように罹患しても適応していく者の血液がもっと必要だ。


 リンフィーナは顔を顰めていたが、ハウデスから何度か血液を採取して調べていた。病歴を感じさせない血液は、今集めた罹患した患者のものとはまるで別のものだ。


 ここにある血液だけでは未完成だ。

 サナレスはぎりと奥歯を噛んで、自らが計算を記した用紙を握りしめて机に押し付ける。


「殿下、食事を」

 悠長に調理されたものを食べている時間はなく、水分だけは切らさないように口にしようと限られた時間の中、置かれた食事の中で唯一野菜とスープは飲み込むように接触した肉は消化に時間がかかり、消化するためにエネルギーを使うことは、今サナレスにはご法度だ。


 睡眠時間を極限まで削っている。寝るわけにはいかないのだと思った。


 人は摂食を勘違いしている者が多い。

 食事とは、腹を膨らますことではなく、消化吸収するまでをいう。だから食べたものを消化吸収するための時間は、きちんと考えて摂食するのが正しい。アルコールは消化を鈍らせるから、ぎりぎりの状態では更に断酒する必要があり、今の自分は食べたり飲んだりする楽しみの全てを自粛していた。


 ふと思いついたことがあった。

 食糧?


 港から発症したこの病気は、魚人化ばかりを気にして人体の血液を調べてきたが、口にする食糧は調べてこなかった。

 魚?

 もしくは海産物が原因なのか!?

 貝等には貝毒と言って中毒性のあるものが含まれていた、過去の事例を知っていた。


 最初から着眼点が間違っていたのだろうか?

 それから発症して死ぬものと、進化するものがいる。その違いも調べなければならない。

 少なくとも王妃に殺された王を別にして、王族の血筋で死んだ者はいなかった。

 魚人化は進んだが、生死に関わることにはならなかったということで、耐性があったはずだ。


 サナレスは指令を出した。

「今発症している患者の嗜好品、いやここ一月間食べているもの全てを聞きとってくれ」

 何が足りないのかを足りている者と比較し、しらみつぶしに調べて行く他ない。


 全ては理論。

 何か理由があることを論理だって調べることが科学であり、医学にも通ずる。ここにきて口にする食物の大事さを再認識した。


        ※


「オートミール30グラムに、水60CCを混ぜて熱したら、米の少し柔らかいぐらいになりますね。だったらこれを米に見立てて、色々アレンジできるかもしれません。蒸す、焼く、揚げる、全て試せますがどれからいたします?」

 タキに聞かれて、リンフィーナは水月の宮にいる体格のいい男たちを思い出して、間髪入れず揚げる方がいいのではないかと言いそうになった。


 でも揚げものって視覚の満足感は高いけれど、量は食べにくい気がする。今は栄養を摂ることが大事だから、量を食べてもらえないのも問題だ。

 眉間に指をあてがいながら熟考する。


「ーー本当は揚げる方がいいと思うのだけどね、中にいろんなもの挟めないかな? おにぎりみたいにして、食感も大事だから揚げたり、焼いたりできればいいかなって」

「ああ、バリエーションで豪華になりますものね」

 ナンスはそれならば、とラーディオヌ一族から献上された様々な瓶を取り出した。

「香油と海苔、あとそれらを使った佃煮なんていかがでしょう?」


 どんなものを持ち帰ったのかはナンス任せだったけれど、貴重な食材がゴロゴロと出てくる。

「すごいですわね。こんな貴重な調味料や旨味。言いたくはないですが、ラーディオヌ一族にラーディア一族が敵わない点があるとすれば、こういったところですわ……」

 ラーディア一族はどちらかというと素材の味を生かすシンプルな食文化を好み、一方でラーディオヌ一族は味付けを追求していた。


「美味しいよね。研究されてるし」

 タキが少しラーディオヌ一族のことを認めてくれたのが嬉しくなって、リンフィーナは色々な瓶の蓋を開けながら頬を赤めた。


 その横でナンスは同じように蓋を開けながら、平然という。

「それだけじゃないですよ。ラーディオヌ一族が調味料にこだわったのは、呪術の一環で薬から、つまり薬膳なども追求しているうちに、ラーディア一族と袂を分けた後に変革したのだと思います」

「そうだよね。薬、体に作用をもたらすもの。それを研究したからラーディオヌ一族の文化に行き着いたんだよね」


「アセス様がお好きなーー」

「珈琲も同じ!!」

 リンフィーナはナンスの言葉を奪った。


「タキ、ラーディアもラーディオヌも元は同じ氏族で、兄弟氏族だよ。歴史によって文化による暮らしが変わっていっただけだと思う。呪術を使うのが邪道なら、私もすでにラーディア一族では銀髪の異端児なんだしね」

 タキは肩をすくめ、リンフィーナを彼女の胸に引き寄せた。


「ーー未だ忘れられない恋心なのですわよね。ーーわかりましたわ姫様。ひとまずラーディア一族のことを敵視するのはやめにして、試しましょう。サナレス殿下が残したものと、ラーディオヌ一族の文化により寄付された調味料の可能性で」


 タキがどう理解したのか?

 その思考回路には頭の中に疑問符がたくさん浮かぶ。

 けれどタキがラーディオヌ一族のアセスを敵視する姿勢が少しでも変化したのであれば嬉しいことだと受け止めた。


「うん!!」

 リンフィーナはタキを抱きしめた。

 

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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