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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
52/84

変化する属性

こんばんは。


長編ですが定期的に更新しています。

お付き合いよろしくお願いします。


        ※


 ラーディオヌ一族から水月の宮に戻る道中、ナンスと二人でいる時間は幸いなことに平和だった。

 なんとなく同レベルの呪術師としてここ最近アルス大陸に起こる異変について話題にしていた。


「ここ数日、何か危ないとしたら、水と火に関することばかりですからね。地と風は安全圏内です」

 ナンスの言葉は実にラーディオヌ一族らしい、呪術に精通した者の意見だった。


「確かにね。水と火の精霊たちは騒がしそう」

 率直に答えた。


「リンフィーナーー皇女リンフィーナ様の属性は?」

「もう、そういうのいいって。様付けにしないでもいいんじゃない?」

「いえ、総帥アセス様に使える身にあって、失礼があってはいけませんので」

 ナンスは頑なだ。


 リンフィーナはガックリと項垂れる。

 もっと前から親しいのに、そういう丁寧さって逆に慇懃無礼って言うんだけどね。

 リンフィーナはナンスの融通が効かない一面を垣間見て苦笑した。


「私の属性は、たぶん前にも言ったけど風。初めて地道士の進級試験を受けたときに、風だって出たよ」

 でも私の中に眠るソフィアは、風どころか全ての属性に精通している。ソフィアーー彼女の根本はたぶん水なのだ。

 だからアンバランスな自分の力なわけだけれど、ナンスはそれに気がついていない。だからこそ属性を確認してくるのだと精神が消耗した。


「そうなのですね。ということはリンフィーナ、やっぱり貴方はアセス様に害なす存在ではないのですね」

「うんーー」

 アセスに害なすなんて考えたこともないから、そこは素直にうなづいた。

 だからナンスがつぶやいた言葉を聞き逃す。

「最初はね」

 そういうふうに聞こえていたが、リンフィーナは、「そう自分はアセスの敵にはならない」と自信を持っていた。

 

「私の属性も風です」

 リンフィーナはナンスが言ったことに少し驚く。

「私と同じ属性だったよね?」


 改めて言うことかと思ったけれど、ナンスは失笑して首をすくめた。

「ええ」

 ナンスは自分の速度に馬の足を合わせながら淡々と答えた。


「最初は自分も、ああ風なのかと思っていたんですがね、どうしてだかアセス様のそば遣いになって、本当に風なのかと思ってしまいました。それで力の中に、地の属性があることに気づきました」

「そんなことある? 最初呪術者として認められた属性が全てではないの?」

 リンフィーナが問うとナンスはしれっと「そのはずですよね」と言った。


「変化します」

 そして次に答えた言葉は、鋭利な刃物のように研ぎ澄まされている。

「最初の属性なんて、さしたる意味はない。今ではそう思います。関わる人や置かれる環境で、術者の属性は左右されていく」

「それってーー??」


 思い当たる節があった。

 自分の中に目覚めた魔女ソフィアは海を割るほど、水の力を内包する魔女で、リンフィーナにはあずかり知らない能力を発していた。


 でもそれって、魔女ソフィアという特殊な存在と関わったからなのでは?

 リンフィーナは訝った。


「アセス様のそば遣いになって、最初の属性が風だったのに、私は地の属性を得た」

 わぁ、すごいね。

 賞賛しようとするのに、ナンスの表情は暗かった。


「でも日が経って、しばらく地の属性にいた私は、闇の属性を無視できない」

 え?

 わからなくて素っ頓狂な顔になるリンフィーナにナンスは言った。

「属性は周囲にいる属性によって影響を受けるし、変化するってことです」


 んーー。

 それは理解できた。


 鱗の皮膚を持つハウデスを育てようとした時から、水辺にいるものに共感したし、魔女ソフィアが自分に意識を重ねてきた時から、「水」というものは皮膚の一部のようになっている。


「それでいうと風の属性が私にはいまいち合っていなかったのかも……」

 アセスが彼の使役下に置く精霊長ジルダーラと、自分の折り合いの悪さを思い出して、リンフィーナは吐息をつく。


「今の属性が変化してきているのかもしれません」

「わからないわ」

 今はラーディア一族の水月の宮にいる民が餓えなければそれでいいとしか思えなかった。

「私今は、食の恵みがあればそれでいいんだけど……」


「食ーー、それって光の属性ってことかな?」

 ナンスに言われ、リンフィーナは首を捻った。 


前回の後書き参照願います。

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