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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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オートミールとかいうエサを食べるの?

こんばんは。

最近不定期に更新しています。

反応、感想ありがとうございます。

        ※


 はなから負ける勝負を挑む気なんてない。

 それはサナレスを兄として、彼の妹として育ってきた自分の中に、根付いた根性とプライドだった。


 言い出した限り、勝つ。


 なぜだか妹として、仮に負けたら兄の恥になると気合が入っていて、リンフィーナの眉間には皺がよった。


 兵士達が大半を占めるけれど、ラーディア一族の民が多く滞在する水月の宮にいる者の胃袋を満足させるには、やっぱり肉が必要だとリンフィーナは思った。ハウデスがいた頃は魚を民の食料にして彼らの胃袋を満たしてきたが、アルス大陸ラーディアの民は、どちらかというと魚より肉を好む。

 そして魚嫌い(一応は隠している)であるサナレスの臣下であれば、自ずと肉派の者が多くなってしまっていることをリンフィーナは知っていた。


 だから時期が限定されても渡鳥を狙い、食糧庫に眠る干し肉や燻製、そして加工肉を小出しにしてきたのだ。

 でも昨今の地震で地下食糧庫は潰れ、近寄れない。


 つまり今、肉はない。

 ハウデスがいなくなり、湖からの魚という恩恵もない。


 だったらこんな近場でたまたま遭遇する動物を狩っていては、今晩の夕食の食材調達はギロダイに劣るということだ。


 ギロダイはリンフィーナがふっかけた勝負でも、ラーディア一族水月の宮に滞在している自身の部下の指揮が上がると思ってか、早々に勝負を引き受けて水月の宮を経った。

 かなりひどい怪我をしているというのに、部下二人ほどを従え、さっそうと出て行く後ろ姿を見ながら、リンフィーナは化け物かと項垂れた。


 例えサナレスが飼っている化け物だったとしても、いずれ彼とは仲良くならないとなぁ。

 いや化け物だったとしても、怪我をしているギロダイに勝負を挑むのは、サナレスの妹として卑怯ではなかったか?

 

 勝負を挑んておいて取り残された水月の宮で、リンフィーナは考えていた。


 狩に向いていそうだから、きっとギロダイはなんらかの収穫を持って帰る。つまりリンフィーナは負けても、民の食料が手に入るから、それでいいのだ。

 負けても勝ち。


 けれど本当にそれで良いのだろうか?


 サナレスなら絶対に小手先で他人頼りにしない。

 いどんだ勝負なら、純粋に勝ちに行くのだけれど、化け物相手に挑んだ勝負、果たして勝てる食材は何があるかなと考え、リンフィーナはサナレスが好んでよく食べていた物を思い出して、ぽんと手を打った。


 リンフィーナは、インスタント麺の他、常備食として食糧庫に眠らせていた不人気の食材の前に立っていた。

 インスタント麺は人気の食材だったけれど、これはーー。


『まずい!! 美味しくない兄さま!!』

 リンフィーナはその食べ物に出会った時、即時反応して、サナレスに対して苦渋の表情で舌を出した。

『これって肥料じゃない? 鳥とか家畜にあげる肥料でしょ!?』

 人って味覚がある。こんな味のない、いや美味しくはない食べ物を口にすることはできない。

『私、鳥じゃないし!!』


『間違いない!!』

 そういってサナレスは手を打って吹き出した。

『人にとっての栄養素、つまり不足気味のタンパク質を補うオートミールって食べ物なんだけど、やっぱまずい?』

 サナレスはイタズラっ子の表情になってリンフィーナの反応を楽しんでいるようだ。


『不味い、兄様!! 兄様は最近これを朝ご飯にしてるって言ってたけど、こんな不味いの食べるの!? 本当に?』

 サナレスは結構な美食家だったはずなのに、信じられないとリンフィーナは渋面になった。

『忙しいからな。栄養失調で先生が倒れるし、お前が心配するし、これで必要な栄養を効率よくとっているんだが……』

『そんなものじゃないでしょ!? 食事って栄養取れればいいって考え方だけじゃないよね!!』


 サナレスは少し黙って、「考え方を変えたんだ」とこともなげに言った。


『食事は余裕のある時だけ、つまり味わいたい時に存分に食事を味わえればそれでいいんじゃないかな? この時勢じゃ飢えないし』

『飢えないからいいって、こんな不味い食事は反対!!』

『そうか……?』


 サナレスがお手上げポーズをとるので、リンフィーナは腰に手をやって批判した。

『オートミールってのも、美味しく食べる方法を探すべきなのかもな』

 ーー心の中で、例え家畜の飼料であってもとつぶやいたサナレスを、リンフィーナはじっと睨んだ。




偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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