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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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なんでも理由って必要かも

こんばんは。

このところ続けて書いています。

今月は出張が多すぎますが、書きたい時にUPしますね。


応援反応、何かとよろしくお願いします。


        ※


 煩わしい仕事は未だ残っていた。

 サナレスは大切なもの全てを水月の宮に残してきたので、常に後ろ髪を引かれる思いですべきことを実行しなければならない。

 さっさと片付けて、水月の宮に戻りたい。


 故郷というものは、実は土地ではない。関わってきた大切な人との思い出の多さなのではないだろうか。

 自分の場合、出会った大半がラーディア一族にあって、今生存者としてあるのは水月の宮だ。


 早く帰りたい。

 改めてそう思う素直な気持ちを見つめると、サナレスは自らの感情の可笑しさに気がついて破顔した。


 見果てぬ世界に夢を見て、何者にも縛られない旅人になりたいと思っていた自分が、妹であるリンフィーナを中心にして完全に戻りたい場所を見つけている。それはかなり笑える事態だ。


 いつの間にかそんな存在ができてしまった。

 ーーそして最悪なことにサナレスは、そんな存在を現状で盾に取られてしまっているのだ。

 これには舌打ちして対処法を考える他なく、気がつけばサナレスの眉間には皺が寄っていた。


 相手に抵抗はした。

『リンフィーナに危害を加えるな。彼女の意思を尊重してくれ』

 だがタダで望みが叶えられるはずはなく、相手からその分の要求を突きつけられる。


『ーーラーディアの末裔であるおまえが、責任をとって私の望むことを叶えるならそうしよう』

 その時から自分は、リンフィーナを盾に取った魔女の犬に成り下がっている。

 意にそわぬことでも、最優先するものを護るためであれば、従わないわけにいかない。


 彼女は言った。

『私を処刑した王族を殺せ。一人残らず、……一人残らずだ! 駆逐してこの恨みをはらせ』

 感情のままに発せられた言葉には威力があった。


 千年前に何があったのか?

 歴史は学びはしたけれどその怨念の強さを知らず、サナレスは戸惑った。


 ソフィアの口と歴史書のを総合して判じたところによると、当時「魔女狩り」を率先して行ったのは王族貴族だった。人とは異質な特質を持った者、つまり呪術者の力に目覚めた物がこういった世襲の被害者になり、国を追われ迫害されたという史実がある。


『だがソフィア、おまえ……、ジウスとヨアズは……」

 少なくとも歴史上、魔女と言われたおまえに惚れ込んで、ラーディア一族を危機に貶めるほど彼女に入れ込み大惨事を起こしているというのに、この魔女ソフィアは何も思わないと言うのだろうか?


『関係ない。私には何も関係ない』

 神を名乗る者に自分は騙されたのだと、ソフィアは言った。

 ソフィアはジウスにもヨアズにも積年の恨みを募らせていて、ジウスを含めたラーディア一族の王族貴族でさえ、サナレスに恨みを晴らして殺めよと言ってくる。


 リンフィーナを盾に取られている以上、それは承知せざるを得なかったが、サナレスにとって故郷だと認識してしまった地を焼き払いたくはなく、サナレスは物理的にラーディア一族を遠く離れた。


 せめてラーディア一族とは無関係の王族を、魔女ソフィアの言う通り狩って、彼女の無念を晴らそうとする。

 その行為は正しいとは言えない。

 けれどサナレスの正義は自分が大切だと思う者や、記憶にある故郷を贔屓する。


 貴族とは呼ばれない、つまり重氏族ではない人の世の王族の王都を焼き払うことなど容易いことだった。


 だからサナレスは冷静に考えていた。

 人は治療するよりも殺す方が数万倍容易いのだ。

 サナレスは一方で奇病を治そうと試みてはいたが、街を閉鎖してそのまま街毎焼き払う未来を思い描いた。


 そして一方で、自分が関わらないでいる健康な王族の命を、残虐に奪った。


 そういう矛盾ってあるよな……。

 心の中で呟くが、完璧主義であるサナレスに限ってそう言う矛盾が許されるはずもなく、自身の行動は刃となってサナレスを苦しめていった。


 これでいいのかーー?

 いいわけがない。


 けれど大切な妹リンフィーナを護るためであれば、この汚れ役は自分がなすべきことなのだろうと諦めた。


 アセス。

 あいつはラーディオヌ一族の総帥としてリンフィーナのために禁忌を犯し、魔道士に落ちることすら厭わなかった。


 あいつと競うと、リンフィーナに言ったからではないけれど、今犠牲を払ってでも魔女ソフィアから彼女の人格を守れるのは自分でしかないと思っていた。


 今のサナレスは医者ではなく死神だ。

 魔女ソフィアが望むままに王族貴族を狩っていた。戦争を経験したサナレスが人の命を殺めることに抵抗はなかったが、その大義は私的なことだ。大義は、ただリンフィーナを人質に取られているからと弁明する他なかった。

 


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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