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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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血清採取

こんばんは。

GW、今回はわりとあちこち出掛けていました。

コロナが流行してから久しぶりかもしれない。


けれど混雑するところはやっぱり意識的に避ける努力。

自転車で120キロ走るとか、都内に車で行くとか。


それでも密になるの避けようのないシーンはあったりする。

連休明け、また増えるのかなぁ。

        ※


 サナレスには決められた生活習慣がある。

 朝は顔を洗って湯浴みして、日の光を浴びて馬の世話をし、ひと駆け風を切って脳を起こす。

 夜は本を読みながら酒を飲んで体を温め、水を飲んで眠りにつく。

 細かく言えば彼の生活習慣にしていることには切りがないくらいだ。


 けれどこのところの日々は、決めていたルーティンを立て続けに破らなければならなかった。外出することが多くなるとこうして生活は乱れていくのだなと、サナレスは実感した。


 かつて吟遊詩人のように旅をして世界をめぐることを夢見たサナレスは、旅先であっても生活を整える術について考えたことがあった。

 日常のルーティンは場所が変わっても実行することは可能なはずだ。


 けれど今それができない。


 こうも不測の事態ばかり起こってはな……。

 魔道士シヴァールの出現によって生死を彷徨うことになるわ、妹リンフィーナの中に魔女が住み着いて自分を誘惑してくるわ、挙句父であるラーディア一族のジウスは王都ダイナグラムを鎖国した。あり得ない。

 アルス大陸の民の魚人化と、頻繁に起こる地震。目まぐるしく起こる災厄に、さしものサナレスだったが対応が追いつかないでいる。


 丑三つ時に民を呼び出すのであれば、甘んじて習慣を無視する必要があった。

 サナレスはため息をつく。


 鈍る頭で集まった数の民を数えたが、16名だった。


 当初から、切羽詰まっている者のみがここに来ると踏んでいた。

 だから生気を失った顔や、家族のために必死な形相が目の前に並んでいたとしても全く動じず、目の前の少数の民のために自らの生活習慣を乱していることにため息が漏れた。


 以前薬の投与を始めた者は10名だったか。

 だが今回の16名の中で、前回と同じ顔ぶれは7名しかいない。


「3名は?」

「確認したところ亡くなりました」

 アイラが答えた。


「順番に並ばせてくれ」

 サナレスは椅子に座り、医師のように集まった者達に問診を行った。


 薬の投与後、10名中3名が亡くなり7名が生存しているが、病気の進行は治っていないようだった。それだけではない。この港町で、また新たな患者が6名増えた。


「血清ーー? お貴族様それは何ですか?」

「弟に頂いた薬を飲ませましたが、弟は回復しません」

 心労のためか痩せおろとえた女と、目をくぼませた男がサナレスの前に座っていた。


「異形へと変わり、ご逝去なされた王にうちの娘が手つきになったのですが、王が逝去されています。この先どうやって責任をーー。いえ……、どの貴族様に意見を拝聴する機会がありますか?」


 父親の言葉には、身内への心配と、自身の立場からくる心配が入り混じっている。

 サナレスは貴族の医師だと身分を偽っているので、文字どおり藁にも縋りつきたいような有様だ。


「先生、私も弟のように発症するかもしれない! 同じ処方をお願いします!」

 女の方にも狂気を感じた。

 二人の間で車椅子に座らされた弟は、ぐったりとしている。


 包帯を巻いて隠してはいるが、以前よりも魚人化が進んでいるようで、身体が時折ピクリと痙攣している。


「とても痛いみたいです。それにかゆいって。皮膚をかきむしるから血が出てて。見ている方が辛い」

「落ち着いて。痛みは薬で抑えよう。できれば体をかかない方がいいから、寝るときは両手を何かに縛っておくといい」

「血清ってのを体に入れれば、治るのですか?」

「いや。その逆だ。今日は患者から血を取り出す」


 治すほどの力はないにしても、患者の血清から家族や市民に免疫を投与する。サンプルは多いほどいい。

 サナレスは全ての患者から注射器で血をとって、ガラス管に一本一本保管していった。


 作業だけさせてくれればいいのだが、治療する家族が入れ替わるたびに、恐怖と不安からくる質問攻めだ。


 市民の一人が言いにくそうに聞いてきた。

「ーー貴族の先生、これってうつる病気なのか?」

 途端に周囲の空気がざわついた。

 皆が一様に聞きたかったけれど、家族が罹っているという憂鬱から聞くことができなかったことを、一人が口に出したからだ。


「うつるーー」

「いや……。それだったら隔離しないと」

「でも……」

 波のように不安が伝染していく。


「黙れ!!」

 パニックで収拾がつかなくなる前に、サナレスは短く一喝した。


「うつるかどうかを調べるんだ。だが少なくとも空気感染する類のものではないから安心するといい」


「ですがーー」

「臆病になるな。家族のために耐えるんだ」

 サナレスは口の端を上げた。

「でなければ私はもう、お前達を診ない」

 軽く脅してやると、その場がしんと静まり返った。


 貴族の薬を分け、治療されている恩恵がなくなれば、彼らには絶望しか残らない。患者とその家族らは手を合わして項垂れた。


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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