目覚めれば、食欲旺盛
そろそろ書きたい欲が収まらず、また再開しています。
今年も描きたいまま、書きます。
たまに誤字脱直したり、設定見直したり、過去の修正も行いつつですが。
お付き合いよろしくお願いします。
※
「リンフィーナ、こっちにおいで」
最上の微笑みを浮かべたサナレスがいる。一瞬今までの出来事は全て悪夢で、水月の宮にいるこの時は過去の幸福な時間からずっと続いているかのように錯覚してしまう。
本当にそうだったらどれだけいいだろう。
一族やのしがらみや男女の問題、世俗を超えて、私たち三人はずっと一緒にいられたらいいと、ママゴトのように願っていた。
自分とアセスが一族間を超えて結婚して国交を築き、サナレスが親交を深める大使になって、三人はずっと一緒にいられる。
リンフィーナは過去、そう思っていた。
実現したかのような束の間の休息が余計につらい。
「兄様、ーーサナレス私たちはもう……」
アセスを裏切った自分達はもう、過去に戻ることなんてできないのだと、リンフィーナは頭を振った。
それなのにサナレスは相変わらず微笑みを絶やさず、こっちにおいでと手招きして、朝食の場に座るように言ってくる。リンフィーナは恐る恐るサナレスが座る横に近寄って、気まずい表情で、斜交いにアセスを見ながら席についた。
「よく眠れましたか?」
こちらの反応など完全に無視して、日頃無口なアセスが唐突に声をかけてきて面食らう。
やっぱり怒っているのだろうかと、サナレスの左腕に隠れるようにしてアセスの表情を見るが、愛も変わらず感情が読み取れない。
「うん。アセスが無事ーーアセス様がご息災でいらっしゃると知って、安心いたしました」
少し敬語気味になり、表情筋を引き攣らせていると、アセスは「ありがとう」と謝辞を述べてクスと笑った。
見惚れてしまうぐらい麗しい。
本当にこの人が死んでしまわなくてよかったと、この世の文化遺産の尊さにリンフィーナは心底手を合わして拝んでしまった。
「リンフィーナも目を覚ましたことですし……」
アセスは滅多に来ない来客用の水月の宮に用意された茶器をつまみ、彼の好物であるコーヒーを啜りながら言い出した。
「私はそろそろ、我が一族に帰らなければなりません」
「うむ」
サナレスが吐息と共に言葉を発した。
「私としてはずっとここにこうして居てもらいたいんだがなぁ?」
「ーーそれは立場上叶いませんよ、サナレス殿下」
アセスがサナレスに殿下と継承を付けるときは、親しさとは別の含みを持たせる。ラーディアとラーディオヌ、共に背負う氏族が違うことを明確化しており、サナレスもそれ以上に引き留めない。
「そうか。だがアセス、このところ一国の王、そして氏族の長の首が狙われていることを話しただろ? それからラーディア一族のジウスがそう言った理由から王族を守って鎖国状態になり、ラーディア一族に強力な結界を張っていることもお前には伝えたよな」
サナレスも全く表情を変えず、紅茶をすすりながら、だから気を付けてほしいと話をしている。
そうしているかと思えば、サナレスとアセスは2人とも自分の顔をじっと見つめた。
何?
やっぱり気まずいから、なんか、なんかなの!?
焦ってさらに小さくなろうと肩を落としていたのに、2人は同時に自分に問いかけた。
「今、腹鳴ったな?」
「お腹が空いたのですね?」
え!?
注目されているのは、サナレスを伴侶と決めた自分の決意ではなく、パスタを前に空腹の合図をした自分のお腹だった。
リンフィーナは居たたまれずに腹を抑え、背中を丸める。
「パスタソースを7種類ぐらいアレンジして用意させてあるが、やはり朝食にはオリーブオイルのシンプルなパスタか? もしくは牛のミルクのまろやかなクリームパスタを温めてもらうか?」
ちょっと、兄様恥ずかしいじゃない!
そんな食い意地張ってないってば!
そう取り繕うとしてはいたが、自分の両手にはフォークとスプーンというカラトリーが握られ、おねだりする用意は万端だった。
うう。
私ってこんなに、悪食だったかな!?
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー