不在の間に
こんばんは。
また少しづつ本編を進めて参ります。
反応、応援よろしくお願いします。
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自分のことを妹が案じているだろうと思いながらも、サナレスはしばらくは彼女の元に帰れないことを自覚していた。アセスがリンフィーナのことを護ろうとしている真心を見てしまうと、なぜか自分の出る幕がないと思えるほど安心できた。少しの間なら彼女の側を離れても差し障りはないだろうという思考に行きつき、自分のすべきことを優先する時間ができた。
調子のいい考えであることはわかっていた。以前自分が彼ら二人を残してラーディア一族の地を去った時、二人は窮地に陥り、結果アセスは魔道に落ちるという不名誉な事になっている。
だから長く離れることはできないと、サナレスは片付けるべきことの多さに焦っていた。
サナレスが張り巡らした情報網によれば、ランシールド一族が陸上に浮上するまでにも、人の子の魚人化は進んでいた。
神々の時代、水中に沈んだ神子の都市ランシールドのシルフィードは、永らく水中で暮らすようになり退化した。そして人と交わる少数の種族が子種を残し、その子らの血脈は息づいて今の魚人化が進行したのだと考えられた。
それが証拠に、魚人化するという奇妙な噂話が広まるのは、決まって港町なのだ。
サナレスはラーディア一族王族直属の近衛兵に志願してきた民里の中から口が硬い者を選別し、近衛兵としてではなくサナレスの密偵として雇用する提案をした。ラーディア一族近衛兵、影の伏兵であり、その数すでに百人を越えようとしており、湊町にもサナレスが雇用したスパイがいる。
その存在を知るものはサナレスと、そして総帥ジウスのみだという隠密集団は、各地でいち民里として日常に溶け込み、命令が下るのを待っていた。
「サナレス殿下」
ハガ国に潜ませた王宮女官が、サナレスを案内する場所があった。
以前リンフィーナ一の行と共に訪れた時は、王妃の混乱を解決することが最善に思えたが、女官アイラによると混乱は続いていた。
王妃の目の届かないところで、王は何人もの女官に手をつけており、彼女らから生まれた子供は、なぜだかリンフィーナが引き取りたいと言ったハウデスのように、異形の容姿で生まれていた。
「殿下のご命令通り、生まれた時に抗体を作る薬の針を刺してきましたが、何人かが海に帰り、何人かが命を落としました。その姿のおぞましさに、身内に殺された者を含めると、相当件数が昇っております」
発病した者には、血清の投与では効かないか。
サナレスはため息をついた。
「ではもう仕方がない。今回持参した薬をハガ国の民里全員の体内に投与してくれ」
サナレスの提案にアイラが眉根を寄せて首を振る。
「サナレス殿下。私は神々の意志に従いたいと思います。けれどこの混乱するハガ国の民にどうやって薬を投与しましょう? その手法、私には思いつきません」
サナレスは目を細めた。部下として配置していたとしても、一を聞いて十を知る者が全てではないことは理解している。わからぬ者、そしてわからぬことを疑問にも思わぬ者には、一から十まで説明する面倒くささが必要だった。
時間がかかるなぁ。
手近に置いて徐々にスキルを上げていくことができた配下とは違い、遠隔にいる部隊にいる者のレベルは様々だ。
「ではアイラ、お前はこのハガ国の密偵3名を今宵丑三つ時に集めること、それから現状で問題を孕んでいる家族をピックアップして報告しろ」
「ピック?」
「問題のある家屋全て報告してほしいということだ」
キシル大陸から伝わった外来語は、アルス大陸のほとんどの民には通じない。
サナレスは指示を出して、今日明日は未だリンフィーナの元に帰れないことを呪った。
昨夜ダイナグラムで火事が起こり、彼女の身の回りが平穏ではないと知っていながら、動けない自分がいる。
アセスーー、そしてジウスがいるラーディア一族の内地でなら、リンフィーナが無事でいてくれると信じる他ない状態だ。
そして自分はいつの間にかもう一人、リンフィーナの中に存在してしまっている魔女ソフィアの存在を認めていた。
いざとなれば、彼女は自身の肉体であるリンフィーナを守るはずだ。
おかしな信頼関係が生まれていることにサナレスは苦笑した。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




