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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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抜け出せない関係

こんばんは。

物語進めるのは久しぶりになります。

最近は過去の修正を行うのがマイブームですが、そんな中でも少しずづ本編を進めます。

お付き合い頂いている方、ありがとうございます。


        ※


 情報は全てを制する。

 人が人を武力で制圧する時代は終わり、情報戦術が世界を制するのだと、いったい誰が最初に口に出したのか?


 ヨースケ・ワギという裏社会に君臨する男に関わる一連の人脈は、枝葉を成長させ続けていた。

 けれど唯一その上を越えようとしてきたのは稀有で、サナレス・アルス・ラーディアだった。


 戦乱の時代を迎える頃にヨースケ・ワギに出会い、彼に負けたと認識したサナレスは100年間虎視眈々とヨースケ以上の情報網を築き上げることに執着した。


 サナレスの辞書に敗北という文字はない。親友ルカを失った時、横に並んだり前を歩いたりする者を排除するために、そのページを破って捨てた。辞書の一冊や二冊など軽く頭の中に刻み込めるサナレスが、わざとそうしたのには理由がある。自由を諦めた世界の中で、親友以外のものを認めたくない、ただその一心で、右に出るものを許さないためだ。


 ギロダイという王族武将の存在に危機感を覚えたサナレスはアルス大陸に、兵士募集の伝令を出した。それと同時にヨースケ・ワギとの情報戦に勝つため、サナレスは裏社会を仕切る組織の更に裏側に、息がかかったものを布石のようにして置いていった。


 サナレスは戦乱の時代エヴァに終止符を打ったけれど、それはどうにかこうにか成し遂げたことで、足らない点を分析することを続けていた。

 自分に、つまりラーディア一族に足らないものは、武力、呪力、科学、情報、人間力、そして一番足らないのは危機感だった。平和ボケした危機感のない民に栄光はない。

 そう思い全てを整えた。


 足らないと認識するだけでは具体性がなく、サナレスは足らない者全てに自分より優れたものを当て込んでいった。


 武力ーー亡き王国の最後の王ギロダイ、彼に学ぶ。

 呪力ーールカが成し遂げた天道士が指標になるが、呪力に精通しないサナレスが漸く軸においたのは、ラーディオヌ一族総帥アセスだった。

 科学はリトウ・モリ。彼の知力は計り知れない。

 情報は、裏社会のボスと言われるヨースケ・ワギ。

 人間力については、リンフィーナから教わった。


 リンフィーナはすごい。

 自分が持っていないモノ全てを持っていて、止まった時の中にいる自分を開眼させてくれる存在だった。


 例えば自分は、人に一ミクロも興味がなかった。

 特にムーブルージェとルカを見送ったあと、同じ幼馴染のレイトリージェと彼女の子供の身辺を気にかけながらも、それは自分に課した責務に過ぎないことだった。


 子供が可愛いか?

 親友の子供は可愛い。それは本心だった。


 けれど自分はどこか別次元に存在し、絵を愛でるように母息子の日常を眺め、それを整えることに神経を尖らせていたように思う。

 リンフィーナに出会う前の自分にとって、全てが親友との間に果たせなかったことへの償いの延長戦だった。


 過去に囚われている自覚があった。

 100年前から自分の時は止まっていた。

 

 それなのに妹として出会ったリンフィーナに、今どれだけ振り回されていることだろう。

 究極まで合理主義を追求する性質だったはずの自分は、なぜだか小さな赤子であった彼女を育てる決意をしてしまい、そして彼女の人間性に翻弄され続けている。


 蒼い幼子の魅了眼に魅入られた。

 リンフィーナは弱く、時にすぐにでも壊れそうになるのに、一瞬で意志の力で強くなれる。彼女は驚くほど強い。


 きっと若い頃の自分の側にいたルカやムーブルージェ、そしてレイトリージェと、今の自分が関われたなら、もっと違った未来になっていた。自分を変えたのは時であり、その中で出会ったリンフィーナだ。


 銀髪ゆえに迫害されたリンフィーナは、ある時より笑顔を絶やさなくなった。それから思っていることを全身全霊で喜怒哀楽に表現するようになった。また人が怖いと逃げていた少女は、生誕祭を迎えた時に「ずっとこんなふうな私だったら、兄様にふさわしくない」と言って真っ直ぐに前を向くようになった。


 自分とは違い周囲にいる人全てを気にして、果敢にもその者達に対応しようとしている。

 その姿に驚かされた。

 尊敬できる姿勢だった。


 そんな彼女は自分に言う。

『兄様はすごい!! どんな人とでもすぐに親しくなって。貴族とか平民とか、分け隔てなく人気があって、とにかくすごい!!』


 妹に絶賛されて初めて、自分が築いてきた虚無に気づいた。

 誰にでも気さくに話しかける次期総帥サナレスを、望まれるままに演じてきたことを恥じる。陽気で誰とでも会話し、気にかかることにすぐに対応しようと真摯になるサナレスは、作り上げてきた虚像だった。


 サナレスは全ての情勢を把握し、ラーディア一族に君臨し、アルス大陸を手中に収めるほどの策略を練ってきた。


 突然、ラーディア一族のジウス・アルス・ラーディアは鎖国し、外界からの侵入者のいっさいを遮断した。

 遮断された中に自分も入っていて、それは拒絶されたような、本質を見破られたかのような気持ちになる。


 けれどサナレスの興味は今、これから先を行くために具象化して、ジウスが排除した者達より劣らないようにしなければならない。たとえ大神ジウスに排除されても、一存在として一目おかれるようにと先を見据えることを忘れなかった。


 かつて描いた自分の夢とは、大きく違ってきている。


 世界を旅したい。


 サナレスが描いた夢の中の真ん中にあったのは、貿易としてだけラーディア一族に伝わってくる摩訶不思議なキシル大陸の存在があったからだ。


 その国は憧れにも近い存在だった。

 けれどようやく、サナレスはキシル大陸に自らの足で渡る機会を得ることになった。

 そうして、キシル大陸の文明を体感し、今まで自分がどれだけ籠の中の鳥であったのかを知ることになった。


 その文明はリトウの科学を上回り、ヨースケの情報を網羅し、力であるギロダイと呪力のアセスを退けるほど圧倒的だ。


 そいつと触れ合った時、完全に負けたと覚悟して全面撤退をしたかったのだけれど、すでにリンフィーナも自分も、そしてリンフィーナの中に眠る魔女ソフィアは、キシル大陸が存在する意味に大きく関わっていく現状が見えた。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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