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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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最悪の疫病

こんばんは。

最近は余暇を見つけて書いていますが、過去の作品の校正をやり始めている状態であまり進んでおりません。

新年度は忙しいですね。


本日コロナワクチン3回目摂取で、明日は一日ダウンする日と決めており、今のうちに書いておこうと筆を進めました。

       ※


 アルス大陸水月の宮に魔女が降臨したと人々の噂が広まる頃、アルス大陸中央よりも北南に位置するハガ国では、深刻な疫病が流行っていた。


 その病魔は人の形を異形に変える。

 人々はふるいあがった。


 最初はハガ国の王が犠牲になり、王族は動揺し、揺らいだ政権はもはや元に戻らなくなった。王が徐々に人ではない異形なものに変質してしまい、王妃は王の子を妊んでいたが、産まれたその子の悍ましさに、すぐさま隠蔽を図り暗殺することを命じたと言う。


 民は恐ろしいことだと判じてはいたが、所詮血が濃くなった王族内の問題であると、政権を危ぶむ気概しかなかった。

 王族内で起こる惨事など、民にとっては所詮天井人や貴族の間で巻き起こった非日常でしかなかったのだ。


 それなのに、異形の怪物に変わり果てた王が、王妃自らの手によって暗殺され、一月もしないうちに、民の間にも異変が起こった。最初は王のお手つきになった宮殿女官の親族に派生する。


 お手つきになった宮廷女官は、王宮にひまを出した後は里に戻ったが、半ば気がふれていた。

「私……、王妃様のように、私も……あんな怪物を!?」

 民に愛されていた王の狂気が始まってから、王宮内に使える女官は力ずくで王が望むままに組み敷かれた。


 異変に気づかない当初は、王のお手つきになることは名誉なことだと、王妃に後ろめたさを感じながらも、望んでその身を差し出した女官も多い。


 けれど今になって知ることになる。

 王妃は正しかった。


 王妃が王を敬遠し始めた頃から、王の狂気が始まっていたのだ。

 あれほど仲睦まじかった関係が壊れるのには理由があるということだ。


 故郷に帰ってからもその時のことを思い出して嫌悪感にガタガタと身を震わせる元女官に、親族は献身的に話しかけた。

「大丈夫。おまえは子供を宿してなどいないし、王はご逝去されている」

「そうだよ姉ちゃん、もう何も心配することはないよ。王は火葬されて、皇子は殺されたはずなんだから。もう少しすれば王妃様がきっとこの国を立て直してくれるから」


 女には弟と父親が居た。

 母親は山暮らしの貧しさに飽きて、とうの昔に自分達家族を残して居なくなった。


 母がそんなだったから、自分は王宮女官になって家族を支えるのだと、一念発起したのは3年ほど前のことだ。王も王妃も評判が良く、使えることは名誉なことだと、難しい試験を受け王都に入って女官になった。


 それなのに王は乱心した。

 思い出すと腹の底から嗚咽が込み上げてきて、どれだけ食事を飲み込むように摂取しても、受け付けなくなっていた。

 頭蓋骨の形状がわかるほど痩せ衰え、目ばかりが目立つように窪み皮ばった顔の中で鋭くなっていく。


 乾いてシワのよった唇に、弟は毎日水を運んできた。父は栄養があるものをと、貧しい暮らしの中から選り好んできてくれた。


 それでも女は回復しなかった。

 日毎痩せ衰え、気がつくと褐色の髪だった彼女の頭は、根本から真っ白に変わり果てていた。その姿を確認した彼女の気は、どんどん狂れていった。

 鏡を見るのが怖い。

 自分もやがて王のようにゾッとするような、鱗の生え揃った肌に変わっていくのではないか。


 そう思うといてもたってもいられずに、彼女は自分の肌をかきむしった。

「お願い父さん! 私が怪物になってしまったら、私を殺して!!」

 女の唯一の願いは、死ねない自分を誰かに殺してもらうことになっていた。

 怪物になってまで、奇異の目に晒されてまで生きていたいとは思わなかった。

「お願い!!!」

 死ぬ覚悟はできていた。


 それなのにーー。

 肌に異変が生じたのは、父と女が何よりも可愛がっていた弟にだった。


「ねぇちゃん、背中が痒いよ」

 最近首筋のあたりも痒いんだ、と弟が話した。


 父親が眉を寄せて弟の衣服をはぐり確認して、その表情を凍り付かせた。

「ーー父ちゃん、何かできてる? カサカサして痒いんだ」

 父親は一瞬変えたとてつもない嫌悪感を隠し、弟に向かって微笑んだ。

 それを見過ごす女ではない。この時ばかりは、女は自分のことはそっちのけでひとときでも正気に戻り、弟がいない隙を見繕って、父親に質問した。


「ねぇ父さん? ねぇ、あのこも発症したの?」

 みるみるうちに父の顔は真っ青になった。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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