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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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とらえ方の相違で病気になった

こんばんは。

連日投稿、いやU Pすることになっています。


花の金曜日、飲んで小説書く!

これが楽しいですね。


(誤字脱字などすみません。そのうちまとめてなおしていきます)



       ※


 水月の宮に滞在していた者の数が報告された。

 ラーディア一族のサナレス直下の近衛兵367名中、生存者21名。

 敵兵、おそらくはラーディオヌ一族の私兵、死体の数は497名。


 数日後には、神の兄弟氏族が戦うことに天罰が降り、魔を呼び寄せ、水月の宮に銀の森の魔女が降臨し、アルス大陸の歴史に残る戦場になったと噂が広まっていた。


 これはラーディア一族の次期総帥であるサナレス皇太子がラーディオヌ一族の総帥アセス殿下を不当に拉致した結果であるとか、歴史上呪術の存在の賛否を巡って確執をこじらした兄弟氏族の末路なのだとか、その他少数派の意見の中にはラーディアがラーディオヌの総帥に自国の皇女との政略結婚を強要した痴情のもつれであるとか、大惨事の理由は好き勝手に捏造されて広まっていった。


 歴史の中で、事実というものはいかに希薄なものだろう。

 その夜なぜか水月の宮に居たというのに、星林の神殿で発見され、まだ目覚めてこないリンフィーナの中で、意識の主導権を持ったソフィアは嘲笑した。


 サナレスが建築設計したという水月の宮は、さすがというべきか三分の一ほど、建屋が残っていた。

 その三分の一の廃墟で、生き残ったラーディア一族の21名が沈鬱な表情で顔を突き合わす日々だったが、広まった噂だけは食料を調達したり、負傷者の薬を買いに言ったりする者が、望まなくとも耳にした内容だった。


「次にラーディオヌ一族に攻撃されれば、ここは持ちません!」

「猿姫、いえっ! 皇女リンフィーナ、どうか王都に戻るご判断を!」


 生き残った近衛兵が、リンフィーナではない自分、つまりあの事件をより複雑に、そして残虐に幕引きをした張本人である自分に進言してくる。


 ラーディオヌ一族の攻撃など問題ではない。

 高位の魔道士など、世界にはそう何人もいるわけではなく、ソフィアの相手ではなかった。


 王都に戻る?


 本心を吐露するなら、どちらでもよかった。

 ラーディア一族王都に戻っても、ここに留まっても、ーーどちらでもいい。


 どうでもいいことだとしか思えなくて、必死に進言するサナレスの臣下の姿など、瞳の端に映るだけだ。うるさいなと、右の耳から左の耳に抜けていってしまう。


「ショックを受けられているのはわかります。でもサナレス殿下が不在の今、皇女リンフィーナ様がご決断を!」


 ああ、サナレスがここに居ない……。

 それだけが感情に引っかかってきて、ソフィアは確認事項としてぶつぶつと呟いた。


 空虚な眼差しで部屋を見渡すと、生き残りの兵士が3名、その他養育係のタキとかいう女、そして冴えない眼鏡のリトウとかいう男が側にいた。


「食料調達は、ーー兵士が減った分さほど重要な仕事ではなくなりましたが、生き残ったものの大半が、ひどく負傷しております。薬も医師も不足してございます」

「姫様が殿下の留守を守られてたい気持ちはお察しします。ーーですが、どうかご決断を」


 兵士の2人は、見当違いの相手に向かってよく吠えた。

 お前達の仲間を殺した敵は、ラーディオヌ一族ではなく自分だ。

 それを暴露できないから黙っているだけだというのに、また違う解釈を思いついて喋ってくる。 


 食べ物に飢えても、しばらくは死なないし。

 怪我で死ぬ? 

 だから治療したいとは聞かされても、誰かに治してもらおうという考えが、そもそも甘えであるわけだし。


 ソフィアにとってどうでもいいことばかり聞かされていた。


 生命なんて、いつか自然に帰る。

 いつかってね、今すぐにでも起こりうることだ。


 うるさいな。

 たかるハエのように鬱陶しい。

 ソフィアは視線を逸らした。


 けれど兵士3名のうちの1人は腕を組み、その様子をじっと見ていた。

 サナレスの直属、ならず組と言われる近衛兵の副隊長だったか。


「おまえ達はもう下がっていろ。皇女には、私が話す」

 ギロダイという名の副隊長がそういうと、兵士2人は頭を下げて部屋から出ていった。


 食事の用意に呼ばれたタキもこの場を出て、しばらくするとギロダイとリトウ、そして自分だけになった。


 部下謁見のために、執務室の体裁を取った椅子に座らされたソフィアは、胸の前で腕を組んで顎を上げ、退屈そうに周囲を眺めていた。


 王都に戻る?

 戻ってもサナレスはそこにいないだろうし……。

 せっかくリンフィーナから意識を奪えたというのに、ただ時間を持て余しているのが口惜しい。


「あんた誰なんだ?」

 ギロダイは不遜な態度になって苦笑いを浮かべながらこちらに近づいてきた。片眉を上げ、息がかかるくらいの距離で、自分の顔をじっと見つめてくる。

「あんた姫さんじゃ、ないよなぁ?」

 体格のいい兵士だったが、傷だらけで、本来の能力値ではない生命力の男が、睨め付けるように自分を見定めている。


 ソフィアはため息をついて肩をすくめ、何も言わなかったけれど、否定はしなかった。サナレスの愛しい妹であるリンフィーナを演じてみたところで、自分とリンフィーナは違いすぎて、すぐに見破られることだろうから、2人を見破った者に取り繕っても仕方がないと思っていた。


「おまえ、サナレスはいつ戻ってくると思う?」

 こっちから逆に問うと、ギロダイは腰に腕を当てたまま、さらに片眉を上げてこちらの様子を伺っている。

「やっぱ違うよなぁ。こんな自信過剰な態度とれるやつと、あのいつも弱くて、臆病なくせに育ちのせいか、なんだか自由奔放な姫さんとじぁ、印象が違う。ーーあんた、誰?」

 互いに互いの質問にあっさりと答えるほど、素直な性格ではないらしい。


 睨み合っていると、また場の空気を完全に壊してくる眼鏡の男が横入りしてきた。

 こいつには空気感を読むという芸当ができないらしい。

 ソフィアは気を削がれてため息をついた。


「うん、僕もさ。サナレスの妹さん、リンフィーナ姫はさ、ちょっと、い…いやっ、だいぶん前と印象が違うんだよね。でもリンフィーナ姫は、リンフィーナ姫だしさ」

 とりなすような、それでいて遠慮がちな声掛けで、その場を収めようとする。


 そして自分に絡みつくように憎々しい態度をとる兵士に対して、リトウは耳打ちした。たぶん自分に聞こえないであろうと思うほどの小さい声で言っている。


「姫さま、病気かもしれない。心の、ううん脳の病気かな。僕の世界ーー、いや、ぼ、僕の見識だと彼女の病気、統合失調症って言うんだけど、人格障害かもしれないから……。責めたらダメなんだよ」

 動物並みの聴覚を持つ自分にははっきりとそう聞こえた。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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