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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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割れた大地

こんばんは。

コロナ接種3回目が決まり、悲しいかな、またお酒を控える日々です。

毎日飲酒していましたが、現在週末飲酒。

少しは誤字脱字がマシかもしれない。

        ※


 ソフィアがリンフィーナを押し退けて出現しようとした時、どうして間合いの良いことか、自分の存在を気づかせないように、リンフィーナの精神を守ったのは風の精霊長だった。


 使役する精霊に対して慎重を期した命令をしたラーディオヌ一族のアセスという存在に、ソフィアは舌打ちする。

 どいつもこいつも過保護なこと。


 ラーディオヌ一族総帥アセスの加護の元、今から自分がリンフィーナに代わって行う残虐なことを、アセスが使役する精霊の手によって、彼女は目隠しされて知らずに済むというわけだ。

 それは自分にとっても好都合。

「遠慮はいらないということ」


 ソフィアは口の端を持ち上げた。

 同時に大地の底から、重くねっとりとしたマグマのような空気が湧き出てきたかと思うと、彼女を取り巻く周囲のすべての者が死というものを覚悟していた。


 後にその時水月の宮に居て生き残った者達の口を借りれば、「生きた心地はしなかった!」自分の身体の重力が急に無になったり何十倍にも重くなったりを繰り返し始めたのだと語られた。


 ソフィアは無表情な顔に冷笑を浮かべ、その右手を地に向けていた。彼女が手を向けた地点から、おぞましい魑魅魍魎が湧き上がってきていたのだが、それを目にすることができない人間には、とたんに空気が悪意を持つ生き物に変えられたように感じたのだ。


「冥府の王、ヨアズ」

 彼女が発している言葉は、人に有する何語でもなく、精霊にのみ届く振動だった。

 ソフィアは死を司る、精霊長というにはあまりにも精霊の魂からさえかけ離れてしまった存在の名を使役していた。


 大地が裂けはじめ、風圧でソフィアの銀色の髪が風になびき、力が溜まりはじめていた。


 死の死者の形は様々だった。

 完全に白骨化したもの、まだ死肉が完全に削げ落ちていないもの、四肢の一部が朽ち果てているもの。人のそれもあれば、動物のそれもある。ただ骨だけが暗闇に白い残像を残し、裂けた大地から立ち上がってくる。


 冥府の主人の存在は、人のみならず精霊をも滅ぼし、自然をも破壊する。

 呪術は基本的に自然界にある精霊を使役するものだったが、彼女が口にした名は異質だった。


 ヨアズの名は死、つまり破滅だ。

 危険を察知し、風の精霊長が一瞬で姿を眩ました様子に、ソフィアは風の精霊の逃げ足の速さを称賛していた。

 おまえは正しい、と。


 それなのにトンチンカンな人間がどこから現れたのか、ソフィアの後ろで叫び声を上げた。

「リンフィーナ!! 地震の前兆です! 大地が割れます!」

 遠くからそう叫びながら、何の物おじもせず息を切らしてヨロヨロと走ってくる。


 木々が倒れ、建物の殆どが崩壊し、地面をひっくり返したかのような状態に、目の前の世界を変えようとしているのは自分だというのに、その自分に向かって細長いシルエットの男が近づいてきた。


 そしてあろうことか、もうすぐ四方八方を吹き飛ばしてやろうとしている自分に向かって、彼は思いっきり飛び付いてきた。


 通常の人であれば、近づくことなど出来はしない威圧を感じるはずのところを、全く頓着していない。走ってきた勢いのまま長細い腕に歯が苛めにされ、ソフィアは大きく体制を崩した。


「危ないです、リンフィーナ! 1人で戦うなんて無茶ですし、また大きな地震がくる!」

「危ないのはおまえだ!」


 もう少しだったのに。

 もう少しで、自分を狙った命知らずなラーディオヌ一族の私兵を殲滅させられたというのに。


「だっだ、大丈夫ですよ。僕はこれでも大人なんですから。心配してくださって、ありがとうございます!」

 どこまでも拍子抜けする回答だった。


 ヒビの入ったメガネがずり落ちているのも構わず、頬を上気させながら、彼は自分の怪我の具合を気にして、「わっ、痛そうですね。すぐ手当てしないと」と、長い手を落ち着きなく動かしている。そうして幼子にするように、自分の頭を撫でにくる。


 不意をつかれて気概を削がれ、ソフィアは唖然と彼を見つめる。

「何人かは仕留めた。ーーでも……、おまえのせいで!」

「充分です。それよりも自然災害の方が怖いですから、よ……余震とか、いつ起こるかわからないんですから、高い木があるところは離れましょう、絶対危ないですって。は、早く!」

 そう言って彼は自分の手を引いた。


 お前のせいでと言っているのに、充分だと言ってくるなんて、完全に話を聞いていないな。

 闇の精霊をこの地に召喚しようとしている時ですら、飛びついてくるほど空気を読めない男だった。


 こいつ誰だったか?

 確かサナレスと一緒にいるのを見た。


 リトウ先生。

 サナレスは先生と呼んでいた。


 ソフィアは敵意を向ける矛先を完全に失った。

 こいつがサナレスの先生?


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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