表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
32/84

厄介な契約

こんばんは。

少し暖かくなってきました。桜の季節、お外に出かけて、公園でお弁当など食べたいですね。


一日一章からペースは落ちていますが、相変わらず楽しく書いています。

やっぱり書いてるのが好きなんでしょう。好きこそものの上手なれで、もうちょっと成長すればいいのだけれど。


お付き合いいただいている方、ありがとうございます。

応援、反応励みにします。

        ※


 自らの生まれ育った宮を守って、逃げ惑いながら戦う少女の滑稽さに、ソフィアは彼女の中で失笑する。


 力のない娘、アルス家の皇女などという偽りの盾に守られながら、ぬくぬくと育てられた銀髪の少女。彼女は自分が喉から手が出るほど望んでも得られなかったものを、生まれた瞬間に手に入れていた。


 自分と同じ銀色の髪に、アイスブルーの瞳。

 未成熟な身体のまま、手足だけが伸びて、お世辞にも大人の女子として魅力的だとは言われない痩せた容姿だ。


 生前の自分と瓜二つだというのに、幼さだと一言で片付けていいのかどうか、経験値の全てが違った。


 圧倒的に弱い。

 そして力がない。非力なのだからせめて大人しくしていればいいのに、剣を振り回し、下手くそなりに呪術を使う。能力の全てが良く言えば発展途上、言い換えれば中途半端だった。


 風の精霊長を使役してなんとか水月の宮で襲われる兵士を助けようとしているが、ラーディオヌ一族の私兵の数に圧倒され、彼女自身が傷を負っていた。


 足が痛い。

 ソフィアは非力なリンフィーナが負傷する度に、自らにも痛みを感じてイライラした。


 風の精霊長の加護にある少女は、相手の攻撃を受けても致命傷は負わなかった。けれどリンフィーナが逃げながら攻撃したり、ラーディアの兵を護ったりしているせいで、彼女は気が動転しているのだろう、良く転けて傷だらけだ。


 痛いってば。

 ぼやくソフィアの主張には気づかない。

 この様子ではリンフィーナ自身は痛みすら忘れているようだ。


 自分が同居しているのはお構いなしの彼女は、転がった拍子に長い髪を自分の足で踏みつけて、さらに体制を崩すような醜さだ。

 正直言って無様だった。


 自分ならばこれくらいの人数、一瞬で灰にも変えられるし、火炙りにもできるし、氷漬けにすることもできる。風を使うなら人体の原型が残らないほど、木っ端微塵に切り裂いてやることも可能だった。

 だが自分の分身は自分とは違い、とんでもなく弱かった。


 それに、とソフィアは思う。

 リンフィーナは底抜けに甘いお人好しだ。

 自分ならば、自分に害をなすものを無差別に殺戮するが、彼女はなんの選別もせず、ただ無作為に人を傷つけまいとしているようだった。


 気まぐれな風の精霊長を使役できているのだから、早く決着をつけたければ方法はいくらでも思いつくはずだというのに、味方を守るのみならず、ラーディオヌ一族の私兵をも殺さないようにと遠慮して立ち回っている。


 おそらくはアセスとかいう男のことを慮っての配慮なのかと推測するが、それにしても馬鹿げていた。


 そんなことをしている場合か?

 心底ソフィアはため息をつく。


 先刻までラーディア一族で火事を消すために奔走し、馬の面倒を見た煤こけて汚れたままの姿で、必死になって自らの命を繋いでいる。そのような状態で相手に容赦するなど、ソフィアには考えにも及ばなかった。


 時間が無駄では?


 自分が出ていって、一瞬でこの事態を収集することは容易かったが、ソフィアはサナレスと約束した。

 リンフィーナの意識があるうちに、彼女の身体を勝手に奪わないこと。意識を支配しないこと。ーーそれはサナレスと交わした、契約条項に入っている。


 自分と違う点はまだあった。

 この点について理解できず、腹が立つ。


 容姿ははったはった。

 自分と似通ってさほども美しくないというのに、リンフィーナはサナレスを味方につけた。そしておそらくはアセスという男も彼女の味方なのだろう。


 自分には、味方など生まれてこの方、1人だっていなかった。

 当然だ。生まれてすぐに不吉だと捨てられた赤子だったソフィアの味方をする人など存在しない。


 圧倒的な違いは彼等の存在。

 ソフィアレニスがまだ崩壊していなかった頃、自分が望んで得られなかった存在が、なぜだかリンフィーナのそばにいる。


 水月の宮で、臣下に親しげに話しかけられる彼女を見ていて、ソフィアは自分の心が不自然に痛む感覚を知った。サナレスがリンフィーナに笑いかけ、優しく眼差しを向けた時は、更に心が壊れそうに痛んだ。


 似ているけれど違う存在のリンフィーナは、いつも死にそうな状態だった。

 そう、いつでも、今すぐにでも死にそうだ。


 息が切れて、彼女は敵に追い詰められていた。

 敵は彼女に対して明確な殺意があった。捕らえるのが目的ではないのは、彼らの瞳に宿る剣呑さで察知できる。


 このまま未熟なリンフィーナを殺してしまおうか。ソフィアは思った。

 なんとか身体だけを手に入れる方法があればと、幾度となく考えた。


 けれどサナレスとの契約には続きがあった。

『おまえが望むこと全てを、私が叶えてやる。だからリンフィーナに手を出すな』

『命令しているのは……、私だ』

 ソフィアはサナレスに反論したが、サナレスの真剣さに怯み、言い淀んだ。


『彼女の意識があるうちは、おまえは表出しないでくれ。そして彼女の命が危ない時にだけ、護ってくれ』


 なんて勝手な申し分だろうか。


 けれどソフィアは首肯した。

 サナレスが言ったからだ。

『私の全てはおまえに差し出すから』

『承知した』


 それは契約。

 リンフィーナが死にそうな時は、ひ弱で甘いリンフィーナに代わる。彼女の意識があるうちは表出しない。けれど例外が今だった。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ