ジェスチャーは言葉を超える
こんばんは。
今日は二話目投稿。シリーズは後書きに載せておりますが、長編です。
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みっともなくもルージェの背中にしがみついて暗闇を逃げ回っていると、偶然なのか必然だったのかわからないけれど、水月の宮の地下にある研究室の前辺りに行き当たっていた。
ルージェは鼻息を荒くして、後ろ足で踏ん張り、予想を遥かに上回る行動に出た。
「ちょっと、おまえ! おまえ落ちるってば!!」
先刻まで落ちたらタダでは済まない速度で逃げてきたかと思うと、今度は180度逆さになって、重力が自分を襲ってきた。
研究室の上の部屋の窓ガラスを、いきなり前足で蹴り割った彼女は、立髪を靡かせながらサナレスの所在を確かめているようだった。
ああそうか。
彼女にとってこの行動は必然だ。
最近サナレスが水月の宮にいるときは、ここにいることが多かったから。彼女はサナレスを探しにきたのだ。
「いないよ。ここにはいない……」
おまえがどれだけサナレス兄様を好きなのか、よくわかる。自分だって何も知らなければ、サナレスをここに探しにきたはずだった。
目つきを鋭くして兄を探す彼女は健気で、自分は語りかける。
「居ないよ。ここは誰も居ないから、もうおまえは逃げたらいい」
そう言ったリンフィーナに、不意に声をかけてきた者がいた。
「ーーいやぁ……。誰もいないってことは無いんだけどさ。ぼっ……僕がいるし」
え?
誰よ?
割れた窓から頭をかきながら現れたのは、リトウ・モリだった。
「サナレスじゃなくてごめん」
申し訳なさそうにしてはいるが、地震で埃を被り、いきなり闇討ちを食らった彼は、声を震わせながら苦笑いを浮かべている。
「いやっ……、僕のこと探しにきてくれたんじゃないってわかってるんだけどさ。ーーでも誰も居ないってわけではなくて、僕がいるわけだし」
おまえじゃないよ!
ルージェがそっぽを向く。
わ、すごい。馬にもこんなにも表情があると言うことを見てしまい、リンフィーナは絶句した。眉根を寄せ、存在を拒絶し、まるで言葉すら聞こえてきそうなほど、サナレスじゃなかった落胆があからさまになっている。
襲撃されていつ死ぬかもしれないという緊張感の中で、思わず笑えた。
「ルージェ! 彼はサナレス兄様の恩師なの。私より彼を護って! 彼と逃げて!」
命を狙われているのは自分で、馬であるルージェとリトウ・モリは見逃されることもあるだろう。
「え? え?え、えぇ? ダメですよ、そそそ、それはダメですって!」
リトウは慌てているのか、言葉を詰まらせまくっていたが、リンフィーナはルージェが前足を起こして体を縦にした隙をついて、地上に足をついていた。
「この人!」
ルージェに対して、ビシッと指を刺す。
「この人死なせてしまったら、サナレス兄様怒るわよ! ほんと激怒して酷いんだからね!」
メガネがずり落ちることが通常のリトウは、メガネの奥で目をまん丸にしてこちらを見てきた。
「おまえ、兄様に絶好される。おまえの世話どころか。もうその背中に兄様を乗せることなんて二度とできないんだからね。この人を、死なせたら!!」
リンフィーナはルージェに負けないよう鼻を鳴らして、リトウを指差したまま踏ん反り返った。
動物には態度は大仰な方がいい。
案の定、サナレスの愛馬であるルージェは自分の表情や態度をガン見していた。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




