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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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話術による作用

こんばんは。


さて今日も書いています。

お付き合いよろしくお願いします。


        ※


 戦争というのは大抵、誰かが始めようとして、故意に始まったことではないのかもしれない。

 どちらが悪いという訳ではなく、ミスコミュニケーションによって起こる捩れの蓄積の結果、勃発する。


 こんなにも突然民の心は一つに固まり、敵国を作り上げ、世論は時に勝手に走り出していく。

 政権の核になる統治者を追いて、嘘偽りが人の口で語り継がれる。


 目の前の国民の勢い、その高揚した声と形相を知って、アセスはわずかに眉目を寄せた。


 一族の玉座に戻り、収集した民の噂話はこうだ。


 ラーディア一族の次期後継者であるサナレスが乱心し、兄弟国であったラーディオヌ一族を一方的に攻め落とした、だとか。総帥であるアセスを拘束した上、あわば暗殺しようとしただとか、そんな偽りが面白おかしく広まる速度は、実に早い。


 あたかもそれが真実であるかのように伝承されている。


 特にラーディオヌ一族にとっては、アセスがラーディア一族のサナレスに一時拘束された事実は、破天荒なほど苦い記憶となっている。原因は、ラーディオヌ一族の兵は虚をつかれて襲撃され、それを阻止できなかったからだ。自国の王が裏切った敵国に奪われてしまうという事実は、国力の弱さを危機感と共に飲み込んでいた。


 けれどーー、彼らは信じたい。

 我がラーディオヌ一族の王である総帥は真実の神であり、ラーディアの侵略を乗り越えて、この地に戻られ民を導く。


 だから湧くのだ。

 単にラーディオヌ一族の象徴である自分が白磁の塔に戻り、民の前に立っただけで、その熱は自分を巻き込んで圧倒する。熱狂した民達が白磁の塔に昼夜問わずに押しかけてくる。


 総帥アセスという自分を神格化した言葉が、民の感情の渦となって、ラーディア一族を敵にしていた。


 理解はした。けれど何日も収まらないこの騒動を自分はいったいどうすればよいというのか?


 ラーディオヌ一族は別称夜の民と言われる、活気や熱意とは程遠いところに存在した民だった。王族など飾りもので、執政に対しても貴族任せの民でしかなかったというのに、民の熱をアセスは今初めて感じていた。


「姫を献上すると言っては同盟を築く振りをして、結局は我が氏族を支配下に置くためだったのか?」

「可哀想な王よ」

「結局はラーディア一族の皇女は誰1人として、ラーディオヌ一族に嫁いではいないではないか!?」


 騙された!!!

 喧騒は日毎にひどくなる。

 民の声と、心の不満が、白磁の塔の上に立った自分を襲ってきた。


 なんだ?

 どうしようもなく巻き込まれていく、この感じ?


 驚いて呼吸を整えるために、生唾を飲んだ。


 誹謗中傷のレベルを超え、群衆はラーディア一族を憎んでさえいる。政権に関わらないでいた民は団結し、敵を倒したい一心で急遽兵士として設られたかのように叫んでいる。

 踏み締める土地はアルス大陸の領土、そしてラーディオヌの氏族としての民の踏ん張りだ。


「総帥アセス!!」

 民の声が大きくなるのを聞きながら、アセスは目眩を覚えた、


 ここまで膨れ上がった不満が、脆い風船のように割れるのは早かった。


 誰かが口火を切った。

 まるで運命を口にするかのような強い口調だった。


「裏切ったのはラーディア一族!!」

「そもそも我々を迫害した氏族だ!!」

「今こそ我が一族の無念を晴らすとき!!」


 民の心は、一つだった。

 市政に対する不満も、アセスに対する反駁も、今は何も表出されない。ただ表立って敵だと思えるラーディア一族に対し、負の感情が一気に噴出する。


 もう取り返しがつかない。

 アセスは動作を凍らせて、青ざめる顔で視線だけを背後に向けた。


 言葉での駆け引きで、民の感情をここまで揺さぶった存在が、自分の後ろで楽しそうにクツクツと喉を鳴らしている。


「ヨースケ、ーー私はそんな指示をしていないが?」

 強張って抑揚なく言う自分に、ヨースケは相槌を打った。


「確かに。ですが貴方は時代を動かしてでも、サナレスに勝負したいと言っていた。そして貴方の留守を私に任せた。ーーそれが、こういう事態を招いたということです。何か問題でも?」


 珈琲を飲みますか?

 そんな気軽さで問われた。

 

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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