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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
24/84

それってこと、だから。

こんばんは。

今日は久しぶりに更新続けました。

反応が励みになりますので、ブクマや感想などお待ちしています。

       ※


 世界というものはそれほど慈悲深くおとなしいものではない。

 つまり、どの国の王が優勢で、どの国が劣勢かなどという、人が慮る未来予想図で収まってくれるほど、簡単ではないことを、人は、ーー思い知らなければならない。

 それは世界の意志というよりも、人の国の喧騒に起きた悪意が原因だと人々は人の世を振り返り、勝手に反省して平和を願う。


 そんな過去を繰り返してきたと言うのに、また血を分けた兄弟氏族は諍いを起こそうとしていた。

 

 ラーディア一族の後継であるサナレスが、ラーディオヌ一族のアセスに対し、いかなる理由があったとしても強行に国を侵略しようとし、彼等ラーディオヌ一族の動向を抑えようとした時、アセスが率いるラーディオヌ一族の民はラーディア一族を敵視したのだ。


「なるべく領土の民を傷つけるな。そして彼等の文化を踏み荒らさないように」

 サナレスがラーディアの長としてそのように命じたとしても、末端の兵士には細かい指示が届いていたかどうか。


 わずかな蓄えで買って増やした花の鉢植えを、ラーディアの兵士が傷つけたりはしなかったのだろうか。

 そして逃げ惑うラーディオヌ一族の民に高圧的な態度で接しなかったのか。


 長は全てを管理できるわけではないから、おそらくラーディオヌ一族の民はこう思った。


『我々は、かつての兄弟氏族に襲われ、国を奪われる!!』

 誰もが、サナレスがラーディオヌ一族と友好関係を築きたいがために行われた行為だと、思う事はなかった。


 アセスが帰ったラーディオヌ一族の民は、死んだものと報じられた王の帰還に、心を振るわせ歓声をあげた。


『よくぞご無事で!』

『よく死線を乗り越えられ、お戻りになりました!』

 涙を流す民までいる。

 ラーディオヌ一族の貴族から平民、また貧民層までラーディオヌ一族の民は、歓喜した。


 戻ったアセス本人は戸惑うばかりだ。

 貴族は自分の政権に不満を持っていたはず。

 国民は裕福とはいえず、統治下にいてもその暮らしを嘆いていたというのに、これはいったいどういうことか?


 なぜ今、この微妙でしかない情勢の中、これほど統率が取れているのだろうか?

『アセス王、万歳!』

『我が王族直系がお戻りになられた』


 白磁の塔から顔を覗かせたアセスは、国民の熱狂振りに眉根をよせ、そのまま背後に控えるいっとき国を預けた異国の民を振り返る。


「おまえいったい……何をやった? ヨースケ・ワキ……?」


「何も」

 注目を集める自分の脇に控えた彼は、薄くて大きな唇の端を片方だけ上にあげる。


 何もしていないなどという事はない。

 少なくとも自分は、これほど国民から求められる王ではなかった。単なるお飾りだった。象徴としての自分が、形式上ラーディア一族の捕虜のようになったとしても、これほど注目される事はなかったはずだ。


「ーー答えよ。お前が何もしていないというのは納得できない。いつの間に我が国民はこれほど感情を豊かにした!?」

 我知らず声色に感情が混じる。


 これはまずい。

 非常にまずい状態だった。


 国民に顔を出しながら、テラスの枠に置いた手がワナワナと震えた。それを悟られないように、鉄壁の無表情を装ったまま、アセスは自分の後方に居るものに言及していた。


「総帥アセス」

 部屋の影からヨースケは少し喉を鳴らして笑っていた。


「もともとラーディオヌ一族の民は不平不満を募らせていた。そんなのはいつかは爆発する。だから私は常々改革すべきだと思っていたわけですが……」

 今にも噛みつきそうな蛇のような言い回しで、ヨースケは持って回った言い方をしてきた。


「助言申し上げましたよね? 私はあなたにこの国を変えなければならないと。姫のために貴方も力を得たいと同意された。ーーけれど貴方はサナレス殿下より、いつも一歩出遅れる」

「それはどういう……!?」

 国民の前に立って平静を装ってはいたが、彼に詰め寄って問い正したい衝動に突き動かされそうになる。さらに手のひらをぐっと握って、アセスは後ろを振り向かなかった。


「出遅れる貴方に国を任された間に、私は貴方に代わってラーディオヌ一族の国民の不満を、突然侵略してきたラーディア一族への不満へとすり替えて差し上げたのですよ」

 元々アルス大陸でアルス家の正当な血筋を追われたラーディオヌ一族の民にとって、ラーディア一族を敵視させることは造作もない事だったと、ヨースケはアルカリックに笑った。


「ーーそんなことを、私は望んでいない」

 荒ぶる感情を表面には一切見せずにヨースケを批判すると、「いえ」と彼は言った。

「貴方はサナレス殿下と勝負している。それはつまりそういうことなんだと、俺は思うから」

 ヨースケは軽く笑った。


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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