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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
19/84

才がないなら

こんばんは。

今日は仕事がきっかけで、古い知人と会うことになった。


多くの時間が経っていても、

立場が違っていても、古い友人と話すと不思議と「地」が出てしまう。

そんな体験をした1日でありました。


      ※


『手を貸してやろうか?』

 自分の中の別人格、魔女ソフィアが必死になって手に汗握る自分を揶揄ってくる。

 要らないわよ……。


 地道士である自分の力なんてさしたるものではないことはわかっていて、それでもただ目の前の火事を消したいと思い、ダイナグラムに敷かれた水路から水を撒いていた。


「あのさ……、その水量しょんべん引っ掛ける方がマシーーいや、すまん……。その柄杓で救った方が早いくらいの水量、もうちょっと水圧上げれないの?」

 呆れ返るギロダイは自分の呪力を見て、痛烈な言葉を言ってきた。

 それは率直な彼の感想だ。


 これでも最大出力だってば!!

 ちょろちょろちょろ〜。

 

 ぶっ笑。

 ギロダイが悪気なく噴き出してしまう。


 だから最大なんだってば!!

 必死になればなるほど、噴水の水ほどの水圧もない水を出す。水の糸の本数が増えたとしても、水力が上がることはない。


「なんの曲芸なんだよ」

 首を傾げて笑いを噛み殺しているギロダイをひどいと責めながらも、心底申し訳なくなった。


 自分には力がない。

 リンフィーナは項垂れる。


 ラーディア一族の皇女としての能力を期待されていたことだろうと想像すると肩身が狭い。


 人間らしく無茶をしろと言われ、自分が今持てる力の最大限で、起こった火の粉を消そうと呪術を振るうが、そうだ。ーー自分はすっかり忘れていた。

 自分はわりと出来損ないだ。兄とは違う。


 リンフィーナが持っている属性は風。呪術において属性がそれであっても、最大風力で微風ぐらいしか起こせたことがないという落ちこぼれだった。呪術行使において、決して器用とは言えず、ほとんど初心者並だったのだ。

 正直水を持ち上げて、ちょろちょろと火にくべるのがやっとで、燃え広がる炎を消すことなんてできない。


「はぁぁ……」

 あからさまにため息をついて頭を抱えたギロダイは少し黙って、いきなり自分を彼の肩に担ぎ上げた。


「もうちょっと待ってってば! 今やってるんだから!」

 土下座したい気持ちで努力のみを口にして暴れると、ギロダイは「姫様の無茶ってのは、ちょっと違うんだな」と納得したように走り出す。


「……すまんかったよ、人を頼りにするなとか言って。そりゃ、姫様だもんな」

 病み上がりのはずのギロダイは少し吐く息を苦しそうにしながら、それでも軽々と自分を彼の肩に担ぎ上げて、神殿に向かって走り出す。

「あんたの言う通り、ジウスに頼めば一発だ」


 さっき、人を頼ることしかできないのかと言っていたのに。

 自分の能力を知って、悔しいけれどギロダイは冷静な判断をして、自分を姫君と呼称した。それは戦力外だと通告されたのに等しい。


「ねぇ、歩けるし。まだ傷痛むでしょう?」

「羽みたいに軽い姫君1人、どうってことはない」


 怪我人に担がれて運ばれながら、リンフィーナはどうしようもなく落ち込んでしまった。

 サナレス兄様の妹だから、ギロダイは少しだけ自分に期待した。単なる姫君ではないはずだと、ーー何かできるのではないかと彼なりに期待して、自分の行動を見守っていた。

 けれどギロダイは、諦めたのだ。


『だ〜か〜らぁ、力を貸してやろうかと言っているのに』

 自分の中の魔女は自分の悲しむ感情に同情して、くすと笑う。


 海の水を真っ二つに割るような魔女の力を使えば、こんな火事は一瞬で消し止められるだろうと思ったけれど、意地を張って手を貸してとは言えない自分がいる。


 情けない。

 本当に非力で、自分のことが恨めしかった。


 兄サナレスだって呪術の才に恵まれず、それでもサナレスはラーディア一族の次期後継者として認められた。その才覚は天賦のもので、自分などその欠片すら受け継いでいない。

 それが悔しかった。


 こんな燃え盛る炎に包まれたダイナグラムを、風の地道士である自分がどうこうできるわけがない。知恵を使えと言われても、必要なのは大量の水なのだ。


(ここを使うんだよ)

 そう言われて、おでこをつつかれた記憶と共に、サナレスが教えてくれたことを思い出した。


(呪術という能力がないなら、ここを使うんだよ)

 そう言ったサナレスは、リンフィーナの頭を彼の人差し指でとんとんと弾いて、諭すように微笑んでいた。


 そもそも、火ってどうして燃えるんだったかしら……?


 一つの可能性が、兄に指先で弾かれたあたりに閃いて、リンフィーナはギロだいの頭の毛を引っ張った。

「止めて! できるかもしれないから、ちょっと止めて!!!」

「こら、暴れるなって……」

 勢い余って彼の肩からずり落ちそうになる自分を守って、ギロダイは足を止める。


「私なりの無茶、できるかもしれないのよ!」

 ギロダイの上で手足をバタバタさせながら主張する。


 そうだよね、兄様。

 能力がないなら、知力を使えってそういうことだよね。ギロダイの肩から下ろされたリンフィーナは、胸の前に真っ直ぐに手を突き出し、腕を伸ばした。



偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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