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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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兄がいなくても

こんばんは。

いつも楽しく書いています。シリーズ長編です。


お付き合いいただいている方、誠にありがとうございます。

反応くれると励みになりますので、何卒よろしくお願いします。

        ※


 だって自分は食料調達班だから。

 サナレス兄様に気持ちを確かめるより、今しなければならないことがある。


 優先順位をあの時自分は間違えてしまったのか?

 サナレスは忽然と姿を消してしまった。


 でも今行動しなければ民は飢えると、数日前の自分を後悔していはいけないから、リンフィーナは必死で前を向いていた。


 このところ地震は頻発していた。

 今日は、どのくらいの時間で揺れが止んだのか?


 とても長い間揺れていたような気がするけれど、実際の時間にしたら数秒だったのかもしれない。

 縦に揺れ、自分達の体は一瞬中に浮いて、その後地面に戻された。


 耐震構造に作られたという水月の宮ですら、天井のいくらかが崩壊し、石造りのそれが崩れることによって埃が立ち、目の前が曇っている。

 どこかで配線が切れたのか電気の供給が途絶え、チカチカと点いたり消えたりする薄暗闇に、砂塵が見えるほどの有様だ。


「姫様、大丈夫ですか!?」

「うん……。タキも大丈夫?」

 2人してすっかり腰を抜かし、自分とタキは手を伸ばしながら擦り寄って、互いの無事を確かめた。


「今の揺れ、ここ最近の揺れの中で一番大きかったですよね?」

「ですよね!?」

 興奮して早口になるタキと抱き合いながら、リンフィーナは目を擦った。

「うん。でも多分この館は大丈夫。蓄電しているから、もう時期停電はおさまるよ。そうなったら状況確認しに見て回ろう。それとーー」


 館の方は大丈夫だと判じていた。

 けれど心配なのは、ラーディアの近衛兵を住まわすために建てた仮説の住まいだ。兄はこんなことがあってはならないと2階建てを推奨し、仮設の住まいを建築したが、それでもどんな様子なのか確認できない。


「以前よりこの地震という現象に慣れていたはずなのに、外から悲鳴が聞こえた。それに今も騒がしい。私が外を確認するから、タキお前に館内の被害を確認してもらっていい?」

「かしこまりました。でも1人で外に行かれては危ないのでは?」

「ううん。兄様が言ってた、これだけ大きな地震があればその後余震ってのが続くらしいから、お前は館の外に従業員達を避難させてほしいの。私は外を確認して、野営の準備をする」


 タキに悟られない程度に、胸の鼓動が高鳴っていた。

 多分、外の状態はここよりもかなりひどい。そして予測していた自分達より、鎖国したラーディア一族のジウス様、そして母であるセドリーズ様、神殿は無事なのかと眉根を寄せる。


 またアセスーー。

 震源地がどこかわからないけれど、ラーディオヌ一族に戻ったアセスは無事なのだろうか?


 アセスは兄サナレスからアルス大陸、いやこの世界に起こっている異変ーーつまり地像変動について聞いていて、予備知識を持っているはず。だからきっとアセスなら対処できているはずだと思ってはいても、自分だって今腰を抜かした。

 下手すれば崩れた天井の一部に、埋もれていたかもしれない。

 

 前の地震ですっかり割れてしまったガラス窓から、外で被害に遭った人たちのうめき声が聞こえていた。


 チカ、チカチカ。

 予備の蓄電池が作動して、館の中の電気が復興する。


「行ってくる。タキ、館の中のことをお願い」

 リンフィーナはひらりと二階の窓から木を伝って外に出た。

「姫様、裸足!」

「大丈夫」

 

 地面に、前回のようにガラスの破片は散らばっていない。

 だから足を怪我することはないので心配はない。

 そんなことを冷静に考え、ずいぶんサナレスの影響を受けているなぁと思いながら、リンフィーナは水月の宮を出た。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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