兄がいなくても
こんばんは。
いつも楽しく書いています。シリーズ長編です。
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だって自分は食料調達班だから。
サナレス兄様に気持ちを確かめるより、今しなければならないことがある。
優先順位をあの時自分は間違えてしまったのか?
サナレスは忽然と姿を消してしまった。
でも今行動しなければ民は飢えると、数日前の自分を後悔していはいけないから、リンフィーナは必死で前を向いていた。
このところ地震は頻発していた。
今日は、どのくらいの時間で揺れが止んだのか?
とても長い間揺れていたような気がするけれど、実際の時間にしたら数秒だったのかもしれない。
縦に揺れ、自分達の体は一瞬中に浮いて、その後地面に戻された。
耐震構造に作られたという水月の宮ですら、天井のいくらかが崩壊し、石造りのそれが崩れることによって埃が立ち、目の前が曇っている。
どこかで配線が切れたのか電気の供給が途絶え、チカチカと点いたり消えたりする薄暗闇に、砂塵が見えるほどの有様だ。
「姫様、大丈夫ですか!?」
「うん……。タキも大丈夫?」
2人してすっかり腰を抜かし、自分とタキは手を伸ばしながら擦り寄って、互いの無事を確かめた。
「今の揺れ、ここ最近の揺れの中で一番大きかったですよね?」
「ですよね!?」
興奮して早口になるタキと抱き合いながら、リンフィーナは目を擦った。
「うん。でも多分この館は大丈夫。蓄電しているから、もう時期停電はおさまるよ。そうなったら状況確認しに見て回ろう。それとーー」
館の方は大丈夫だと判じていた。
けれど心配なのは、ラーディアの近衛兵を住まわすために建てた仮説の住まいだ。兄はこんなことがあってはならないと2階建てを推奨し、仮設の住まいを建築したが、それでもどんな様子なのか確認できない。
「以前よりこの地震という現象に慣れていたはずなのに、外から悲鳴が聞こえた。それに今も騒がしい。私が外を確認するから、タキお前に館内の被害を確認してもらっていい?」
「かしこまりました。でも1人で外に行かれては危ないのでは?」
「ううん。兄様が言ってた、これだけ大きな地震があればその後余震ってのが続くらしいから、お前は館の外に従業員達を避難させてほしいの。私は外を確認して、野営の準備をする」
タキに悟られない程度に、胸の鼓動が高鳴っていた。
多分、外の状態はここよりもかなりひどい。そして予測していた自分達より、鎖国したラーディア一族のジウス様、そして母であるセドリーズ様、神殿は無事なのかと眉根を寄せる。
またアセスーー。
震源地がどこかわからないけれど、ラーディオヌ一族に戻ったアセスは無事なのだろうか?
アセスは兄サナレスからアルス大陸、いやこの世界に起こっている異変ーーつまり地像変動について聞いていて、予備知識を持っているはず。だからきっとアセスなら対処できているはずだと思ってはいても、自分だって今腰を抜かした。
下手すれば崩れた天井の一部に、埋もれていたかもしれない。
前の地震ですっかり割れてしまったガラス窓から、外で被害に遭った人たちのうめき声が聞こえていた。
チカ、チカチカ。
予備の蓄電池が作動して、館の中の電気が復興する。
「行ってくる。タキ、館の中のことをお願い」
リンフィーナはひらりと二階の窓から木を伝って外に出た。
「姫様、裸足!」
「大丈夫」
地面に、前回のようにガラスの破片は散らばっていない。
だから足を怪我することはないので心配はない。
そんなことを冷静に考え、ずいぶんサナレスの影響を受けているなぁと思いながら、リンフィーナは水月の宮を出た。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




