たとえ話に窮しても
こんばんは。
また最近、ペースが抑えられずに暴走モード。
さてはて読んでいただいている方がいるのかもわからないまま、とりあえず続ける!
反応ないとゴーストハウスです。反応とか意見の見方もいまだにちょっとわからないけれど。
たまに発見すると、励みになるのでよろしくお願いします。今評価2ですね、とかはわかります。
※
サナレスは食えない。
だからきっと真実の幾らかをはぐらかされることを知っていたけれど、リンフィーナの前で彼は観念したように両手を上に上げて見せるポーズをした。
とりあえず取り付く島もないという状態は脱したらしい。
「それで、何を知りたいの?」
全部答えるよと笑う姿は、見た感じの誠実さにおいて完璧だ。けれどこういう神妙な顔をする時ほど、サナレスはチェスでも打つように慎重にこちらの出方を伺っている。
やっぱり食えない人なのだ。
確信する。
「兄様の自分に対する気持ちを疑ったことなんてない。たとえそれが恋愛とかじゃなくても、兄様は味方だってことを疑ったことなんてない。でも私、一つだけ兄様に不満を言いたい! 兄様は秘密が多い!」
食えない人を相手にする時、どうすればいいのかなんてわからない。だから真っ向から言いたいことを口にした。
サナレスは片眉を寄せ、駄々をこね始めた子供を見る眼差しでこちらを見てきた。
「たとえば?」
「ーー魚が嫌いなことをずっと言わなかった!」
いきなり具体的なことを聞かれ言葉につまり、思わず最初に思いついたことを口にしてしまった。
するとサナレスは、ぷっと吹き出した。
「それはさ、幼いお前が私の影響で同じように魚嫌いにならないよう配慮したからなんだけれど。幼子は親を見て育つから、よくない教育だろ? 育て親が好き嫌いしている姿を見せるなんて。だからお前の前では美味しそうに魚を食べた」
それがいけなかった?
サナレスは苦笑しながら、自分を相手している。
話の方向が最初から核心とズレてしまったが、リンフィーナもムキになる。
「よくない。だってずっと、物心つくまで知らなかった。兄様のこと。でもそれだけじゃない!」
「他には?」
冷静に質問され、回答しようとしているだけなのに、頬が紅潮した。
何だかずっとこの調子で負けている気がする。リンフィーナは気持ちを取り直すためにグッと拳を握った。
「女の人のことも全然言わない。母様、ーーセドリーズ様が兄様の婚儀について心配されていた時だって、兄様はずっと興味がないなんて言ってて……」
「そんなことか」
サナレスは少し眉を上げた。
「それについてはお前も知っていただろう? 一族の皇太子としては申し訳ないが、私にとっては婚儀を上げるってことは一族を背負わされるのと同義で、だから婚儀をあげて落ち着きたいなんて思ったことはない。ーーいや……、過去に迷ったことは一度あったかもしれないが、その程度だ。」
「その過去のことだって、全然話してくれなかった」
自分が聞きたいこととは、更にズレた方向で話が進んでいるのを自覚した。
けれどこっちも本心で知りたい内容で、どきどきしていた。
「過去のこと?」
「そう兄様が一緒になりたいと思った女の人のこと。兄様は彼女のために自由を手放した」
そういうとサナレスは少し首を捻って、「違うよ」と否定した。
「その逆で、彼女は私を自由にしようとしてくれていた。ーーでも私は、自由でいることと、好きな人を守って一緒にいることを天秤にかけ、迷っていた。全て遅かった。結局のところ私は、結論を出せないままラーディア一族に居続けただけだ。それは私の意志で、誰のせいでもない」
白衣を脱ぎ、いつものように入念に手指を消毒したサナレスは、別の場所に移動するよう自分を誘導した。
リトウが安全だと言っても、そのあたりの危機管理については神経質で、サナレスは地下に来た自分の行動については、よしと思っていないようだった。
使用人に暖かい飲み物を用意させる指示だけして、サナレスは人目につかない屋外に出た。一息ついたサナレスは、自分の寝巻き姿に羽織りものを羽織らせ、久方振りにこちらを見た。
「それでお前は何を知りたいの?」
「何を研究しているの?」
「病原菌について。人体を変貌させていくにはいくつかの要因があるけれど、その原因を環境要因かウイルスだと仮定して調べている」
「他にも色々研究しているでしょ?」
「あれは実験。最近地震が頻発しているから、いざという時のことも考え、船に変わる空の乗り物を開発している。海流が厳しくてなかなか船では向かえない大陸でも、空路で行けばいいんじゃないかと、思い至っただけだ」
自分の質問に全て簡潔に答えてくれる。
サナレスは清廉潔白で、何も隠してはいないと不信がる要素が見い出せなかった。
ーーけれど。
おかしいのだ。
サナレスは決定的に、自分の本質を見せてはくれない人。
知ればしるほど、どこまでいっても掴みどころのない空気のような存在だった。
問いかけに答えてもらうことを幾ら繰り返しても、拉致が開かない。
本当に払拭したいのは、不信感の方だった。
サナレスが何かを隠していて、居なくなってしまうかもしれないという不信感。
ーー不安をいつまで経っても拭い去れない。
「兄様、もういいよ。私の質問が追いつかない。でも私に故意に話していないことって、ある?」
「ーーいや」
答えてくれる言葉に束の間の沈黙があったことが全てだった。
故意に話していないことがあるということだ。
「私は……」
核心に迫ろうとした時、地面が一気に悲鳴を上げた。
地震。
かなり揺れが大きく、体を起こしてはいられないほどだった。
サナレスは咄嗟にリンフィーナをその腕に庇った。
ああ。
リンフィーナは落胆した。
これからだって言うのに。
ちゃんとずっと居なくならないと確約してもらう話は、これからだって言うのに!
悔しくて奥歯を噛み締める。
けれどリンフィーナはそのチャンスを手放す名残惜しさよりも、また地震への恐怖よりも、先にしなければならないことを自覚した。
屋内にあってリンフィーナは、動物の声を聞く。
「ーー話はまた後にする。サナレス、私は私の仕事をするね」
そういって自分は兄の腕をすり抜けた。
狩の時間だった。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




