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キッズルームメモリー  作者: 千桑千牧
アサリ視点
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マジックミラールーム:アサリ視点


「ねえ、皆は何してる人なの?」


 自分でも唐突だとは思うが、三人に探りを入れるようにそう尋ねた。


「なにって……職業的なこと?アタシはどっかの社員だった気がするわ」

「気がするって、曖昧ね」

「……記憶が曖昧なのよ。勤め先で何してたかはハッキリと思い出せないの」

「まあ、そうね……GMも記憶を消してるとか言ってたもの。私も自分の事思い出せないし」

「じ、自分も……どこかに勤めていたみたいですけど……何をしてたか思い出せないっす……」


 私は探偵である事を誤魔化すために嘘をついた。警察ほどの権力はないにしろ、人の情報に探りを入れるような生業の人間だと警戒されたくはないからだ。それに、今答えた他の二人だって、もしかすると既に嘘をついている可能性がある。


「イチジクは?」

「ハッカーやってた」

「ハッカー……なんて現実にいるんすね……」

「え〜?すごいかっこいい憧れるって〜?それほどでも〜」

「そこまでは言ってないっす……」


 呆れるハジメに対して、イチジクは無邪気かつ自慢げだった。私は探偵、イチジクはハッカー。それだけが今判明した素性だが、そこに繋がりは見いだせない。


 それから少しの間、壁伝いに歩きながらこの部屋を見ていると、自分の中の記憶を揺さぶられているような感覚がする。私は、この部屋を知っている――。確信はないが、GMが弄ったという記憶の中に答えがあるのかもしれない。少し頭痛がして、足元がふらつく。それを誤魔化すように、壁側に手をつくが、それは壁ではなく鏡だった。鏡は壁に直接埋め込まれているようで、2メートル弱程の幅と、床から天井までの高さがある大きなもの。


 鏡に触れた指先を眺めていると、違和感に気づいた。それを報告するため、「みんな」と三人に呼びかける。


「ねえこれ。マジックミラーよ。ほら。指を合わせた時にピッタリくっつくの。これは鏡じゃなくてマジックミラーだって証拠」

「って事は」

「向こう側にも部屋があるのよ。GMも言ってたでしょ。隣の部屋で記憶が見れるとか何とか」

「そういえばそうね……行ってみましょう」


 私の提案に、コトブキがすんなりと同意してくれた。どうせ動くなら全員で移動した方が良いだろうと、ぼんやりとしているハジメとイチジクにも声をかける。


「ハジメ、イチジク。貴方達はどうする?」

「僕も行くよぉ」

「あ、ええ。自分も……」


 部屋の外の通路は、飾り気もない薄暗いものだった。通路の片側は行き止まり、もう片方は重々しいシャッターで塞がっている。


「まあ、そうだとは思ってたけど……脱出は出来そうもないわね」


 そう呟きながらキッズルームの隣の扉を開ける。その先にはまた扉があり、一畳ほどの狭い空間が青白い照明で照らされていた。


「何もないじゃん」


 私の後ろから中を覗き込むイチジクが残念そうにぼやく。


「これブラックライトね。部屋に入る前の殺菌の為なんじゃない?この先の部屋を利用してた人間が潔癖症なのかも」


 なんて私は適当な憶測を述べつつ、奥の扉にも手をかけた。一人づつしか通れない幅だったので、私、イチジク、ハジメ、コトブキの順で入室していった。




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