02
心は、多様な材質でできている。
ある人は硝子で、ある人は鋼。ある人は氷で、ある人は炎。またある人は、安物のプラスチックというように。
私は硬質な、磨き抜かれたダイヤモンドのような心を持ちたいと願っていた。
輝きたかったからではない、美しくありたかったからでもない。
ダイヤを傷つけることができるのは、ダイヤだけだったから。
「なんやお前、一人で掃除してるんか?」
屈託のない声と共に足元に影が差し、私はのろのろと顔を上げた。
噛みしめすぎて感覚の消えた唇からは血が滲んでいた。
中学二年の晩秋だったと思う。
倉庫や駐車場のある中庭の広大なスペースを、私は黙々と箒で掃いていた。
山に囲まれた敷地にある校舎は、この季節になると色とりどりの落ち葉で埋まった。
もちろん掃除当番は、私だけではなかった。
しかし、私はそこに独りきりだった。
夕暮れが迫り、すべては薄紅の残光に染まっていた。
返事をしたらおかしな声になりそうで、黙って私は頷いた。
「ふうん」
と言い、彼は背を向けて立ち去ったので、取り残された私は安堵と落胆を半々に覚えた。
しかし間もなく彼はなぜか戻ってきた。箒とちりとりを手にして。
「どうしたの?」
「どうしたのとちゃうやろ」
素っ気なく言うと、彼はてきぱきとアスファルトの地面に溜まった埃や砂を掃きだした。
それを見てようやく、手伝いを申し出てくれていることに気づいた。
ありがとう、とも、ごめんなさい、とも言えなかった。
言葉にすれば、今度こそ本当に涙が溢れてしまいそうだった。