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ねぼすけ娘の珍道中  作者: セルジュ
1/1

旅立ち

 「--あなたの夢は何ですか?--」

 「--あたしの夢?--」

 「--そうです、あなたが見てみたいと望んでいる夢は何ですか?--」

 「--あのね! あたしの夢はねーーーー」


「あたしだってね! 十六歳になったんだから!」

 そう言って実家を飛び出してどれくらいたつことか……

 あたしは今戦いの最中でそんなことを考えている所を見ると先は長くなさそうだ。

 ああ! だめ! 駄目よそんなこと考えてちゃあ!

 でないとなんのために実家を飛び出してきたのか分からなくなっちゃうじゃないの!

 そんなことを考えてるひまがあったら目の前の敵に集中しないと!

 などなどさっきから同じようなことを考えては自分を鼓舞してはいるんだけどね……

 状況はちっとも変ってはくれていない。

 ちなみに何と戦っているのかというと…………非常に弱いとされるコボルト、なんである。

 でもでもコボルトと言っても相手だってナイフを持ってるしこっちを倒す気満々だしって当たり前なんだけど、戦ってるんだから……

 と、とりあえずこちらもショートソードを振り回して一応応戦してはいるんだけどさっきからガキィンだのカキィンと剣を交えているだけで、一向に戦いに終わりが見えてこない。

 かれこれどれだけ同じことをしていることだろうか……がっくし。

 でも幸いなことに相手は一匹の上こちらと同様に疲れの色が見え始めている。これは持久戦に持ち込むよりどちらが先にあと一歩を踏み出すかどうかというところだろうか。

 ならばこっちが先手必勝! コボルトが一瞬足元をよろけさせたところを見逃さずあたしは何とか間合いを詰めてコボルトのナイフを持っているほうの腕に切りかかった!

 コボルトはこちらの突然の攻撃に面食らったのか切られた腕を抑えながらナイフをその場に取りこぼし、 「ギャインギャイン!」

 と叫びながらその場から逃げていってくれたのである。

 「だは~、やっと勝った~」

 あたしはその場にへたり込み持っていたショートソードを放り出した。

 はあはあと肩で息をしながら呼吸が整うのを待つ。

 それにしてもコボルトって犬の頭を持っているって聞いていたけど本物を見ると思っていたよりも気持ち悪かったなぁ。

 まあ見てて気持ちのいいモンスターなんていないと思うけど、ドラゴンなんて見た日にはあまりのすさまじさに見上げているうちにあっという間にやられてしまいそうだ。

 まあ、ドラゴンと会うなんてそれこそ夢のまた夢なんだろうけどさ。

 そんなことを考えていたらなんだか地響きがしてきたことに気付く。

 「え? 何々?」

 立ち上がってドドドドドドと地響きがしてくるほうを見ると、なんとさっきのコボルトが十匹に増えて戻ってきたのである!

 「ええええええ!? う、うそでしょ~!?」

 あたしは立ち上がるとすぐにダッシュで反対方向へ走り出す。

 一匹に苦労してたっていうのに十匹と戦うなんていくらなんでも無理がありすぎるよう!

 今までいた草原地帯から近くにあった森の中へと逃げ込む!

 でも相手は鼻が利く相手、いくらあたしが森の中に紛れようとしても真っすぐこちらに向かってくる!

 わーん! これじゃあ逃げ場がないじゃないのよう!

 息を乱しながら薄暗い森の中を走り続けるけど相手のほうが足も速い。もうすぐそばまでやってきてしまっているようだ。

 や~ん、このままじゃあ絶体絶命じゃないの!

 ふとあたしは周りに立ち並ぶ木を見てみる。

 結構太くて上りやすそうな木が生い茂っている。

 ええい! しょうがない! とりあえず木に登って籠城してみよう! ……それを籠城というかはともかくとして。

 あたしはこう見えて運動神経だけは人並よりちょっとばっかし上なのだ。

 細い幹を伝って割と大きめな木の一番高いところまで上り詰める。

 上り詰めたところで何かが肩のすぐそばをシュッと音を立てて飛んで行った。

 「え?」

 驚いて何かが通り過ぎた方向を見ると木の幹に深々と矢が刺さっていた。

 あたしは冷たいものが背中を流れていくのを感じた。

 ちょ、ちょっと弓矢まで使うなんてずるいよう~! 使えるのはナイフとか剣とかその辺じゃないの~!?

 あたしの思いもむなしく下の方から矢がひゅんひゅんと次々飛んでくる。

 こんなんじゃあ木の上で籠城するどころか格好の的じゃないのよさ!

 飛んできた矢の一本があたしの頬をかすめる。血がつーっと流れるのがわかる。

 だめだこりゃ、本当に籠城なんてしてる場合じゃないぞ。く! 仕方がない、こうなったら。

 ここは木が密集している森の中。木と木を伝って奴らの頭上を逃げるしかない! 矢で狙うといってもこれだけ枝やら葉っぱが生い茂っていてはそう簡単に矢を正確に打ち込むことはできないだろうしね!

 あたしはお猿さんよろしく木と木を伝って逃げ始めたのである。

 さてさてどこまで逃げられるもんか。このまま体力が尽きてしまえばこちらの負けになってしまう。

 ザザッザザッと音を立てながら木と木を伝って逃げていると下の気配がやはりこちらを追いかけているのが分かる。

 それに矢も撃ってきてるんだろう、シュッとかビュッとか小さいけれど鋭い音が背中から聞こえてくる。

 うう~このまま何とかまくことはできないものだろか。

 そんなことを考えながら木の間をすり抜けていくと突然視界が開けた。

 見ると結構大きめな崖が広がっていた。

 え、うそ、もう森が終わるの!? そ、そんなぁ、これじゃあコボルトたちにつかまっちゃうじゃないの!

 後ろからガサガサと音を立ててコボルトはすぐそこまでやってきているようだ。

 あああああ! どうしようどうしよう!

 頭を振りながら慌てていると向こうの崖にも結構高い木がそびえていることに気が付いた。

 そうだ! ロープを向こうまで飛ばして向こう側の木に括り付けることができれば谷を飛び越えることができるんじゃない!?

 迷ってる暇はない! コボルトたちに完全に追いつかれる前にやらないと!

 あたしは背中に背負っているリュックサックに括り付けてあったロープを取り出すと、地面に降り立ち大きめの石を見つける。

 ロープの先端に石を縛り付けて崖沿いギリギリのところまで出るとあたしは渾身の力を込めて石を縛り付けたロープを振り回し、気合もろとも隣の崖の木めがけてロープを放った。

 するとロープはなんとかうまく向こう側の木に巻き付いてくれた。

 やった! 人間やればできるもんなのね!

 と、そんなことを思っている暇はない! これで向こう側に飛び移れるようになったんだから早くしないと!

 こちらの準備が整ったちょうどその時コボルトたちが到着したのである。

 またまたこちらに向かって攻撃しようとしてきたけどあたしはロープを握ると思い切って隣の崖に向かってジャンプをした!

 なるべく下は見ないようにしながら振り子の原理を信じて飛んでいると、うまく狙いどうりに隣の崖に飛び移ることができたのだ!

 「やった! うまくいったー!!」

あたしはその場でぴょんぴょん飛びながら喜ぶ。

 さっきまでいた崖の方を見ると、コボルトたちが悔しそうに地団駄を踏んだり剣をやたらめったらに振り回していたりしていた。

 うわ~本当に十匹もいたのね。危ないところだったわ。

 あんなのにつかまってムッシャムッシャと食べられたりしたら本当にシャレにならないところだったよ。

 実家を飛び出してすぐにジ・エンドだなんてあまりにも情けなさすぎるしさ~。

 ああ、でもまた経験値が入らなかったなぁ。

 モンスターと対峙してはほとんど逃げてばっかりでまともに戦ったことってないに等しいのよね。

 トホホ……

 まあ落ち込んでばかりもいられないのでとりあえず先に進もうとして固まる。

 ここってどこだろう……

 えええええ! そんなぁ! モンスターから華麗に逃げおおせたと思ったら今度は迷子ですかー!?

 ちょっとちょっとシャレになってませんよ旦那ぁ。って誰が旦那なんだか……

 あああバカなこと言って現実逃避してる場合でもないのに何やってんだかあたしは。

 そ、そうだ! とにかく高いところに登ってみよう! もしかしたら結構近くに街道が見えるかもしれないしね! うん、そうしてみよう!

 あたしは何とか冷静さを取り戻そうととりあえず近くにあった大きな木の上にするすると登ってみた。

 太い太い幹の上に登ると結構見晴らしがよかった。

 えーっと街道街道はっと。

 森が広がっているけれどどこまでも続く大きな森ではないようで、街道はここから北に向かえばすぐのところにあるようだった。

 とりあえずほーっとため息をつく。

 こんなんでどこまで行っても森森では森の中で野宿をしちゃうところだったよ。

 とりあえず森から街道に出たら、今度は町か村を見つけないといけない。

 うーむ、日も昼を通り越して傾いてきちゃったよ。ここは早いとことりあえず森から出ないとね。

 森の中を歩いていたら今度はまた別のモンスターに発見されかねない。仕方ない、木の上を移動するしかないかなぁ。そうすれば敵の頭上を走ることになるし不意打ちを受ける確率もだいぶ減ってくれるだろうしね。

 そうと決まれば実行あるのみ!

 あたしはそのまま次の木へと飛び移っていく。

 次々と木を飛び移っていくと下の方から「ギャギャギャ!」という声が聞こえてくる。

 飛び移りながら見てみるとそれはゴブリンのようだった。体が緑色をしていたしひしゃげた顔をしていたからたぶん間違いないだろう。

 でも今はあいにく相手をしている暇はない。一刻も早く森からでなければならないからだ。

 まあ、それもあるけど今のあたしじゃあゴブリンと戦うなんてことすら無理なんだけどね。だからサッサとおさらばしなくちゃいけないのだ。

 うわー本当に情けないわ……ゴブリンと言ったら冒険者の中ではかなりの下っ端なモンスターなのにさ……

 ちょっと落ち込みながらそれでも木から木へと飛び移っていく。

 どれだけそうしていただろう。途中休憩も入れたりしたからたぶん一時間は過ぎたんじゃないだろうか。

 薄暗い森の中の先にひときわ明るくなってきたのが見て取れた。

 やった! 森の終わりだ!

 まあきちんと言えば森の中の街道に出るんだっということなんだけどね。

 途中でゴブリンと遭遇したけど木の上を移動していたおかげで何とか戦わずに済んだしこうして街道に無事たどり着いたし、とりあえず結果オーライかな。

 



 


頑張って書いていこうと思いますがかなり不定期になると思います。


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