Ⅰ
また、、
つまらない「今日」が始まる。
私、椎葉ゆを。
39歳、独身、何もないごく普通の女子。
あー、また女子とか言うと
「もう、女子じゃねーだろ!」とか
聞こえて来そうだけど…
彼氏もいないし、
女子力下がりっぱなしだし、
ただの小さな会社の事務員だし、
毎日、職場と家を行ったり来たり、
私は、この先どうなるんだろ?なんて
毎日、思ったり…
「こんにちはー!」とイケてる声が響いた。
最近、会社に出入りしている銀行の人。
政木あきら、33歳。
背が高くて、まあまあイケメンかな?
まあ、私のタイプではないけど。
ってゆーか、40目前、平凡女子力低めの私が
言える立場ではないな。
とりあえず、お茶を出す。
「ありがとうございます。」と頭を下げ、いつもの席に座る。
なんか…
いい匂いがする。
甘いような、フワッとする心地いい匂い。
あー、これって恋に近い感じの心地良さ…
もう、何十年も前に感じたような懐かしい気持ち。
え!?
これって恋なの!?
えー!!
ないないないない!!
だって、6コも下だよ!?
相手にされないぢゃん!!
下手したら、セクハラで訴えられるレベルかも…
あー、ないない。
無駄なことは考えないで仕事しよ。
なんて事を考えているうちに、社長と話を済ませた
彼はサッサと帰って行った。
と、その席には見慣れない綺麗なハンカチ…
まさかの!?
これは、昭和のハンカチを落としましたよお嬢さん的な。
えー?!
話せるチャンスぢゃん!!
やったー!!!
って、
え?
私、彼と話したかったの?
彼が会社に出入りするようになって半年。
一度もまともに顔を見たことも会話をしたこともない、
特に興味もなかったあの彼と??
いやいや、ひとまず私の気持ちはさておき…
彼を追いかけないと!
もう、何年も眠っていた高鳴る気持ちで胸が痛んだ。