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それは突然のことだった。


私、猫谷儚日(ねこたにはなび)はそれまでずっとサラリーマンの父とキャリアウーマンの母から生まれた普通の女の子として生きてきていた。中学時代の友達のおかげで少女漫画から順調にオタクへの道を歩み続けた結果、おすすめされた一つのゲーム。〝純情乙女チック恋王国(ラブキングダム)〟という幼馴染からもらった有名乙ゲー。何気なくいつも通りに全員クリアするはずだった、が。そこで私は思い出したのだ。


このゲームの内容、知っている...!!


攻略キャラの男たち全て、ましてやその国や関わらないサブキャラに至るまで私はそのゲーム内容を熟知していた。そしてその瞬間に自分がかつてヒロインのライバル、悪役令嬢フローレンス・ラグドールだったこと、かつてヒロインと初恋の相手だった王子に裏切られ、城ごと燃やされて殺されたこと、未練タラタラ怨念を抱いて死んでいったこと、そして死に際に誰かに


『俺は...は生まれ変わっても、貴女を傍でお守りいたします。』


と言われたことを思い出した。


いやいや、よくある小説とかだと普通は逆なはずじゃない。それでゲーム内容知ってるからその前に攻略キャラを懐柔していく、みたいなことできるのになぁ。今更私がフローレンスだったことを思い出しても、もう既に殺されてしまっているし…。そもそも攻略キャラと出くわすこともないしな。


と、思っていた矢先マンションの隣部屋に夕島輝也(ゆうじまてるや)という大学生が引っ越してきた。そしてなんて偶然か。その男子(・・)大学生は前世での自分の護衛騎士ラフテル・トワイライトだったのだ。そしてなぜか、


「いやぁ、ありがとうございます。俺結構地元が遠いんで、儚日ちゃんがいてくれてよかったあ。」


私は今彼の部屋にいる。

はあ、どうしたものだろうか。私が殺されたルートは恋王国(ラブキングダム)のド定番キャラな王子のユーリ・キャルメルドエンドだったが、彼のエンドは(いや、自分が殺されたと言ってもオタクとして全エンド攻略したわよ)ヒロインと結ばれるために結局私が捨てられるものだった。


「輝也さんも一人暮らしなのに唐突の高熱だなんて災難ですね。」


別に彼や他キャラも転生していたとしても、今を生きる私にはほとんど関係ないもんな。


「ほんとそうなんだよね。でも儚日ちゃんのお粥のおかげですぐ元気になれそうだよ。」


前世でもこの甘いマスクで天然タラシな為、屋敷でもとても人気があった。しかし一度落ちてない私が落ちるわけがない。


「今週は両親が出張中なので余り物で作ったので、なんかすいません。ってか彼女とかに作ってもらえばいいじゃないですか。その方が一人暮らし満喫してる感ないですか?」


一日寝ていたとは思えないふんわりとした亜麻色の髪ににっこり笑顔。転生後も変わりなくおモテになるのだろう。


「えー、儚日ちゃんは俺に彼女いると思うの?」


「いないんですか?」


何やら不満そうだ。唇を尖らせて歳不相応に布団から足をバタバタさせている。


「もーう、ご想像にお任せしますぅ。」


「まあどっちにしろ私は退散しますよ。学校の課題あるし、これ以上ここにいたら風邪がうつっちゃいそうですしね。食べ終わったら置いといてください。九時くらいに取りに来るんで。」


出会ってまだ半年くらいだが、彼と両親はとても仲が良く私はなぜか彼の部屋の合鍵を持っている。


「えー、行かないでよ儚日ちゃん。俺が課題教えてあげよう。」


「結構です。寝ててください。まじで定期テスト前なんでうつしたらシメますよ?」


痺れを切らした私は立ち上がった。すると私のスカートをちょんっと引っ張り、彼は呟いた。


「じゃあ、儚日ちゃんが来た時寝てたら絶対起こしてね。」


確かに可愛いかもしれない、モテるかもしれない、でも...でも、


「スカート触るな!へんったい!」


その日その時間、マンション一体に頬を張る音と「ぴえーっ」という男子大学生の声が響いたとか響いてないとか。


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