2話 レベルアップしました
フォレスティアに来て3日がたった。
このギルドの仕事は、掃除、洗濯、料理…って、これただのアリサの召使いですやん。
アリサの家はギルドの上にあり、物凄い広くて立派なお屋敷だ。
これでも充分凄いのに、実はこれは仮の家で、本当の家は何倍も広いらしい。
ギルドの管理をするには移動が面倒なため、ここで暮らしているという。
ちなみに俺もここに住み込みで働かせてもらっているのだ。
そういえば、言葉は通じてるのかって?
それは、アリサの魔法かなんかで言葉が通じるようにしてもらったのだ。
アリサさんマジパネェ。
この三日間で、アリサの凄さを実感した。
騎士(国家騎士らしい)に囲まれた時にも感じたか、色々な人に慕われていて、少し街を歩くだけで沢山の人に話しかけられているのを見た。
それに、何やら国を救った伝説と噂もされていた。
しかし俺はただのLv1。こんなでっかいお屋敷を掃除するのは疲れるし、階段で転けて死にかけたりもする。
だから毎日ヘトヘトになってよく食べ、よく眠れるのだ。
この前までの引きこもり生活が嘘のようだ。
そんなことを考えながら自分に与えられた部屋に入り乱暴にベッドへ飛び込んだ。
そのまま寝ようとしてる時、
プーン___
プ〜ン______
プーン プーン______
あぁもううるせぇ!
どうやら俺の部屋にハエが迷い込んだようだ。
「まさかこの星でもお前に出会えるなんてな」
そんな戯言を独りぬかして、壁に止まったハエにゆっくり近づいて、
プチ。
『セラ・イオリはLv2になった。』
その瞬間、そんな声が聞こえた。
誰の声だ、と周りを見渡すが、もちろんそんな人はいない。
ふと気づく。あの声は耳で聞きとったものではなく、確かに頭の中に直接響いた声だと。
俺は急いで部屋を飛びたし、階段を駆け下りた。
そして勢いよく応接室の扉を開ける。
「どうしたんだい?そんな慌てて」
そこにはギルドマスターのアリサがいた。
「聞いてくれ。俺の頭に直接声が響いて、そんでレベルが2になったとかなんとか…。とにかくあれはなんなんだ!」
「落ち着いて、ね?その声が何とかってのは多分『天の囁き』って呼ばれてるやつだと思うわ。えっと、レベルが上がったって?そんなはずはないわ。だってレベルは生まれつきのもので冒険者や騎士なんかじゃないと滅多に上がったりしないもの!!!そうよ!!そんなはずないわぁ!!」
落ち着いてないのはアリサのほうじゃないか。そんなツッコミを頭の中でしてすぐに消した。
アリサはとても早口になって落ち着いているとは言えないな。
とりあえず確かめるために再びあの井戸の元へと向かった。
今回は2度目なのでこの前のカードを先に入れ、それから初めての時みたいに水に触れた。
すると、更新された俺のカードがでてきた。
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名前:セラ・イオリ
性別:♂
種族:ヒューマン
Lv:2
HP(体力) 20
STR(攻撃) 30
INT(魔攻) 1
DEF(防御) 1
AGI(素早さ) 10
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多少強さにバラつきがあるが、確かにレベルが上がっていた。
アリサ曰くレベルは簡単には上がらないからハエを殺しただけでレベルがあがるなんて前代未聞らしい。
とりあえず今日はもう疲れたから考えるのは明日にして寝よう。
そうして、アリサと別れ、再びベッドへ潜り込んだのだった。
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朝目が覚めると、窓から日光が差し込んできてとても気持ちよさそうだった。
窓を開けると、暖かい風が吹き寄せてきて清々しい朝だった。
こんなふうに感じたのはいつぶりだろう。
もしかしたら初めてだったかもしれない。
引きこもって日光を浴びずに過ごしていた腕は、白くて細く、いかにも不健康そうだった。
だから今日は、少し外に散歩に出ようと考えた。
「よし」
とよくわからない気合をいれて階段を駆け下りていく。
そしてギルドに来てる冒険者らや、ギルド職員に挨拶をしてそのまま応接室へと向かう。
やっぱり。アリサは俺より先にここに来て、朝から仕事をしていたようだった。
えらい真面目さんだこと。
「あぁ、おはようイオリくん!今日もげんきー?それともべんぴー?」
「おはよう。なんの冗談ですか、それ」
そんな会話を交わし、近くの椅子に腰掛ける。
「そうそうイオリくん!アタシね、色々考えてたわけよ。推測なんだけど、イオリくんは何かしらのスキルのおかげで経験値をたくさんもらえる。それでね、上がった能力とあまり上がらなかったのがあったでしょ?」
あぁ。確かにそうだった。
攻撃は凄い上がり、体力と素早さも少し上がってたかな。
「攻撃が上がったのはハエを潰したから。体力と素早さは仕事をしてるうちに身につけたって考えられるわね」
あくまでも推測だけど、と言ったアリサは苦笑していたが、少し悔しそうにもしていた。
「あ、そうだアリサ。今日は天気もいいから何処か出掛けに行こうと思ってるんだ。いい場所知らないか?」
アリサはこの王都のギルドマスターだ。
だからきっと街のことをよく知っているだろう。
「そうねぇ。んーじゃ〜あ、コヨルの森なんてどうかしらー?」
「______」
______え?