1話 そうだ、フォレスティアへ行こう
タイトルはまだ仮です。
申し訳ございません。
「伊織、お前はあの星に行くんだぞ」
そう言われ続けて、もう18年もたった。
俺は生まれた頃から特別体質と呼ばれるものを持っていた。
この体質の人は、地球以外に生物が存在する星「フォレスティア」に行くことができるのだ。
この体質は生まれつきだから、自分が望んでいたわけじゃない。
しかし、両親は俺にどうしてもフォレスティアに行って欲しいようだ。
まぁどうせ金目当てだろう。
俺が特別体質を持っているから、なぜか国から生活を保証されている。
ようするに、仕事をしなくても好きに生きていけるのだ。
そのせいで、俺の家族はろくでなしばかりになってしまった。
仕事もろくにせずパチンコやらゲームやらで遊び呆けて、、、。
おかげで俺はゲームをしてても怒られない。学校を休んでも怒られない。
そんな引きこもりになってしまった。
しかも、俺がフォレスティアに行ったら、国のために活躍したとか勝手に賞賛されて、たっぷりお金も貰えるようだ。
しかし、俺は両親のためにフォレスティアに行くんじゃない。
あくまでも自分が行きたいからだ。
だけど、フォレスティアに行った者は今まで3人だけ。
しかも誰も帰って来なかった。
そう思うと、少し不安にもなる。
(一生帰ってこないかもしれないというのに唯一の息子に平気で行かせようとする親もだいぶやばいよなあ)
そんなことを考えていたら、出発の時間になった。いよいよだ。
今日、18歳を迎えた瀬良伊織は宇宙船に乗り込んだ。
そして___
俺は今、たくさんの人から注目を浴びていた。
しかし、その人々の目は恐怖や軽蔑ばかりで、決して良いものではなかった。
そんな視線から逃れようと早歩きで人気のなさそうな所へ向かう。
それから、しばらく歩いていると武装した騎士のような人達に囲まれてしまった。これはただ事ではない。
「えぇ?なに?どうゆうこと?これ不法侵入で殺されちゃったりするの!?」
(たしか、前にこのフォレスティアに行ったっていう人も、帰ってこなかったって…。
それって殺されちゃったってことだったの!?)
そう考えていると、騎士の1人が何やら話し出していた。
しかし、こちらの言葉は俺にはわからない。
なんて言ってるんだ。
ふと疑問に思う。
地球ではなんとも思わなかったけど、こちらの世界のことなんて何もわからないし、言葉だって通じない。
こんなんで生きていけるのか、と。
「これ結構やばくね!?」
そう叫んだ時、騎士はこちらを睨みつけ、何か喋った。
顔からして「黙れ」だろうか。
これは呑気なことを言っている場合ではない。
逃げなきゃ。
そう結論を出した時、急に静かになったかと思えば、1人の足音がこちらに向かってきていることに気づいた。
それは女性だった。綺麗だ。
そういえば、騎士は顔が見れないからあまり気にしていなかったが、地球の人と顔は変わらないな。
そんなことを考えていると歩いてきた彼女は口を開くと、
「キミ。日本人ね?」
そうたしかに彼女は言った。
ちゃんと、日本語で。
そう言うと、次はよく知らない言葉で騎士と話し出した。
話が終わると、騎士達は去っていった。
しかし、女性は俺の顔を覗き込んでいる。
(ち、近い…!)
「あ、あの…」
おっと。そう言ってこの女性は離れていった。ちょっと残念だと思ったのは気のせいだということにしよう。
「よし、じゃあ着いてこい!」
唐突で何を言われたのか分からなかった。
しかし彼女は大きな胸をはって俺の手を握って歩きだした。
すると、なにかドクドクの音が聞こえてきた。
うるさい!なんの音だ?
しかし音は鳴り止まない。
はっ。もしかして俺の心臓の音か?地球にいたころにはお母さん以外の手なんて繋いだことないもんなあ。
(あ、小学校低学年くらいまではあったかも)
まあ思春期真っ只中で綺麗な女性に手を繋がれたら誰だってこうなるだろう。
そんなことを考えているうちに女性の足が止まった。
それにつられて俺も止まる。
「ここだよー?」
そう言った女性の見つめる方向を見ると、そこには居酒屋のような、アンティークな感じの立派な建物があった。
女性につづいて中に入ると、そこにはたくさんの人がいた。
普通の人間もいれば亜人種もいた。
異世界では定番のドワーフ、エルフや獣耳まで。
歩いていた時は視線が痛くて見るのを避けていたが、こうして見渡してみると、本当に異世界に来てしまったようだった。
まるで、アニメやマンガの異世界物語は、この星の話だったとでもいうような…。
それから奥の部屋の、応接室のような所へ連れていかれた。
「自己紹介が遅くなってごめんね?アタシはアリサ・フロウライト。アリサでいいわよ?さっきも聞いたけどキミは日本人だよねー?アタシもなのー。そうそう、キミお家ないでしょ?だーかーら!今日からここで住むことになりましたー!」
んぇ?ニホンジン…日本人!?
だから言葉が分かるのか。いくらアニメの異世界に似てるとはいえ、言語理解みたいなスキルは持っていない。
それなのに、日本人に会えるなんて俺ひょっとして人生の運を使い果たしたか?
「ねーえ!混乱してるのはわかるけど自己紹介されたら自分も名乗るのは常識でしょー?日本人の礼儀!!」
やっべ。とりあえず言葉は通じるみたいだし名乗っとかなきゃな。
今はこの人以外に頼れる人がいないのだから。
「あ、あぁ。悪かった。俺はセラ・イオリ。御察しの通り日本人だ。えと、ここに住むっていうのは?」
「そのままよ!えっとね、ここはフロリア王国の王立ギルド。私はここのギルドマスターなのよ!」
ギルド。それはまた、異世界やゲームでよく聞くやつだ。てことは、
「モンスターとかって、出たりするのか…」
「そう!イオリくんだいせーかい!主にモンスター退治をやるのですよお?もちろん、イオリくんもね?」
「────」
「は?」
間抜けな声が出た。
だってそりゃそうだろ?いきなりモンスターと戦えなんて言われても無理だよ。
俺ただの人間なのに。
はっ、もしかして、地球から来た人はすっごいスキルとか持ってて強いウハウハな感じだったり?
「ちなみに能力は地球の時のままよ。つまり、イオリくんが想像してた魔法やスキルなんてないからね?」
ダメだった。
「だから!今から能力検査を行います。ごくごく稀に能力の高ーい個体が生まれたりするのよ。アタシのようにね」
少しうざったるかったが、もしかしたら俺にも可能性があるということだ。
そして俺は水の入った井戸のような物の前に立たされた。
「部屋の中に井戸ってどう言う状況だよ」
アリサによると、この井戸で自分のステータスが分かるというのだ。
そして言われた通りに井戸の水に触れると、虹色の光が溢れてきた。
眩しぃ…
光が収まり目を開けると、その水には1枚のカードが浮かんでいた。
どうやらこれに書かれているようだ。
「どれどれ…」
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名前:セラ・イオリ
性別:♂
種族:ヒューマン
Lv:1
HP(体力) 1
STR(攻撃) 1
INT(魔攻) 1
DEF(防御) 1
AGI(素早さ) 1
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「はああああああああああぁぁぁん!?!?」
「あららー、相当酷かったようね。」
流石にこれは無いだろう。HP 1って転んだら死ぬじゃん。
「転ばないようにね。もう一生座ってましょうね?こんなに弱い人なんて初めて見たわ」
「道理で歩くだけで疲れると思った」
俺は深いため息をついた。
こんなのでギルドに入って戦うなんて無理だ。
そう考えていると、アリサは少し考えてから言った。
「じゃあしょうがない。モンスター討伐はやめやめ!今日からギルドで雑用でもしてもらうよ?アタシもただで住ませるほど甘い人じゃないんだからね?」
「わ、わかりました…」
ええい!しょうがない!それなら強くなるしかないんだ。
地球にいたころに怠けすぎた罰だと思って働いてやろうじゃないか!
そう決意したのだった。