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6話 魔獣に名を付けます

話の都合上、短くなってしまいました。

 ツキノワと地竜は新しいホームに入った後、僕が作った料理を食べ、満腹になったらしく、居間でぐうたらしている。

 僕も同じで、ツキノワが丸くなっている所に背を預けて、目を瞑っている。


「はぁ〜、疲れたぁぁ」


 今日だけで色々あったなぁ。

 他のの冒険者に会わないように朝一でギルドに向かって、掲示板でDランク程度の依頼を探していたら人の良さそうな作った笑みを浮かべる妙齢の受付嬢に「これなんかどうですか?」と言われたのが地竜の森の調査だった。

 ツキノワと森で新しく仲間になったウォーウルフ達と調査をして、深くまで入り込んだらそこは地竜の縄張り。

 逃げて、説得したらまさかの仲間になると言われた。それに兵長に捕まり、挙げ句の果てには伯母の屋敷に招待され、この家を貸してくれた。


 なんとも僕にはあり得ないような出来事だった。


 眠気が押し寄せてきた。ゆっくり風呂にでも入って寝ようと思った時、ツンツンと顔を突く感触が。


『おい、貴様。我やツキノワに名を付けるのを忘れているだろう』

「……あ」

『やはりな……というか貴様の名は何と言うのだ?』


 今頃ですか?と思うが僕は答える。

「ああ、僕はレイ、レイフォードって言うんだ」

『分かった。ではレイ、まずはツキノワに名を付けろ。ジョブによる詠唱は〝我に従う者よ我は命じる、名は〜〟だ』

「グルァ?」

「そんなのがあるのか、うん、分かった……」


 熊だから……ベアー?いやいや安直すぎる。ツキノワだからなぁ……うーん。


 考えること約10分。

「えっと〝我に従う者よ我は命じる、名はフォーノ〟」


 ツキノワに僕から魔力が供給されているのか、僕は脱力感を覚える。これは魔力を多量に消費した時に起こるものだ、それにツキノワ……いやフォーノの身体が淡く光っている。


『私はフォーノ、よろしくね。レイ』

「ああ、こちらこそよろしく」


 改めて僕の魔獣となったツキノワもといフォーノ。なんだか感慨深いものがある。フォーノは自分の顔を僕に擦り付けるように突き出してくるので、僕は優しく撫でてあげる。


『くすぐったいわ、レイ。』

「やっぱり……フォーノは女の子だったんだね」

『えぇ、レイは分かってたみたいね』

「そりゃ、伊達に長い付き合いじゃないだろ?」


 こういうやりとりが出来るなんて……ニヤニヤしてしまう。フォーノも僕に撫でられるのは嫌ではないらしく、僕に体を預けている。

 そんな和やかな気分に浸っている中、横やりを入れてくる。


『おい、我にも名を付けろ』

「……あ、そうだったね……えっと」


 再び考える事10分。ここまでくると自分のネーミングセンスのなさに泣けてくる。

「よし、〝我に従う者よ我は命じる、名はアーレイ〟」


 フォーノに名付けた時よりも多量の魔力が僕の体内から消費される。フォーノと同様に僕の魔力によって地竜もといアーレイの身体が淡い光に包まれている。


『我の名はアーレイか……うむ、気に入ったぞ、レイ』

「それは良かった、それにアーレイも女の子みたいだし」

『やはり気づいていたか?』

「それこそであった最初から分かっていたよ」


 何を今更と言わんばかりに僕は呆れたように首を振る。その動作を見たアーレイはむっと顔を顰める。


「あの時に慈悲を掛けるくらいだ、まず男ではないと思ったさ」

『……なるほどな、ではこの口調も止めよう』

「え? 止めるって?」

『口調の事よ、レイ。素の私はこんな口調なのよ?』


 威厳のあった口調から一変、女性らしい柔らかい物腰に。あまりの雰囲気の違いに僕は呆気にとられるが、フォーノと共にアーレイも僕の身体に額を押し付けてくる。僕はその衝撃で我に返り、2体の頭を撫でる。

 フォーノは柔らかい毛並みが、アーレイは艶っとした竜の鱗が僕の手に馴染む感覚に僕は高揚を隠し切れない。



 ひとしきり2体を撫でまわした僕は2体を寝室に連れていき、先に寝てもらう事にした。寝かせた僕は2階から下り、1階の風呂に向かう。この街には平民用の公衆浴場があるが、依頼が立て込んでいたのでもう何日も行っていない。


 1人には大き過ぎる湯船に僕は目を輝かせる。明日は3人で入ろうかな。


 身体や髪の汚れを綺麗に洗い流してから湯船に入る。

「やっばぁ、気持ちいいぃ……」

 肩まで湯に浸かる、ふう、と深い溜め息が漏れる。時間にして約20分。誰もいないので気を遣う事も無い、誰もいないから厄介がられる事も無い。僕は微動だにせずにずっと浸かっていた。


 湯船から出て体を拭き、着替えをすぐに羽織り眠気を押しとどめて僕も寝室へ向かう。2体が安らかな寝息を立てているのを聞いて、僕の眠気も最高潮になっている。

 僕は2体の寝相の間を縫って横になるとすぐに寝息を立てていた。こうして夜が更けていくのだった。


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