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1話 竜が仲間になりました

 

 大きな獣の形をした影が深い森の中を木々の合間を縫って疾走している。

 獣の上にいるのは人間だろうか、絶叫が森の中に木霊する。


「やべええええっ! 急げ急げッ! 追い付かれるぞッ!」

「グルアアァアアッ!」


 僕は僕を乗せて走る熊型の魔獣“ツキノワ”に命令、いやお願いする。僕の願いを肯定するように咆哮する。その咆哮に呼応するようにツキノワと同等の体格を誇る狼型の魔獣“ウォーウルフ”が群れ約10体でツキノワに並走するように森の深部から走って出てきた。


「グルアアッ!」

「ウォンッ、ウォオオンッ!」

「「「ウォオオオオオンッ!」」」


 群れの長とツキノワが獣同士で会話をしている。話がまとまったのか、ウォーウルフ達は僕らから追っ手を引き裂くように立ち止まっていく。

 ツキノワも交戦の準備をすべく大きく鋭利な爪を地面に突き立て、盛大な音を立て、地面が掘り返されながらも疾走状態から停止に至った。


「グルアア?」

「はあ? 何言ってんのさ、僕も戦うよ。」


 どうする、と聞いているのか、僕は戦う意思をツキノワに伝える。


「グルアアァアアアアァッ!」


 すると、ツキノワは筋肉質で厚い毛皮に包まれている四肢でがっしりと地面を踏みしめている態勢を変え、後ろ足2本で器用に立ち、前足2本で威嚇するようなポーズを取り、迫る追っ手を牽制している。


 ドシン、ドシンと大地を踏みしめる音が周囲に響き渡る。周りに生える木を縦横無尽に倒していく。近づくにつれて巨大な姿が露わになっていく。

 隆起した筋肉に包まれた太い四肢、背には2対の劣化した翼が、赤い双眸は見失わないようにじっと僕らを見つめている。全長は10メートルとドラゴンにしては小さめだがこの森の大きさに合わせているのだろう。

 そう、この魔獣は森の守護者――地竜だった。


「地竜か……君の土地に勝手に入ったのは認める、だけど君に危害を加えようとしたわけじゃないんだッ!」

「…………ギャアアアッ! グアアァアアッ!」


「グルアアアァッ!」

「ウォオオンッ!」


 僕には敵対する意思はまずないと伝えるように大声で叫ぶ。それが敵対行為にとられてしまうかと思ったのだが、僕は叫ばずにはいられなかった。


 正直、地竜は怖いし、早く帰りたいし……


 そんな僕の思いとは別に魔獣同士の会話が展開されてるが僕は全然聞き取れないんだ。

 僕は一応【魔物使い】なのだけど、心から魔獣が信頼してくれないと魔獣の言葉は聞き取れないと言われている。一応と言うか、僕は“ツキノワ”を信頼しているのだけどまだ信頼まで漕ぎ着けていないらしい、もう1年以上一緒にいるというのに……。


 ギャアとかウォンとかグアアという声が急にピタッと止まった。ひゅうと風の吹く音しか聞こえない。誰も声を上げずにいる、この重圧が僕にはキツイ……。竜を間近にしている時点で僕の膝は笑っている。さっきツキノワに言った言葉は虚勢に過ぎなかった。


『ふむ、貴様は我と敵対する気は無いと?』

「……え?」


 どこから声が聞こえたんだ? だれ?

 どこからというより、脳に直接話しかけてくるような感じだった。声の主を探そうとキョロキョロ見回すが周囲に人影も気配もない。


『我だ、そこの者よ。地竜の我が貴様に話しかけている』

「……ま、マジですか?」

『何度も言わせるな、人間よ。そこのツキノワとウォーウルフに免じて時間を割いてやっているのだ』


 いちいち重圧の篭った言葉を直接脳に話しかけるので頭が痛い……気がする。ドンドン強くなっていくので慌てて僕は答える。


「は、はいっ! 僕は貴方と敵対するつもりはないです!」

『そうか、我の早とちりか……』

「い、いえっ!僕の方こそすいませんでした。」

『ん? ……貴様のジョブは【魔物使い】か……』

「そうですけど……それが何か?」


 早く話終わんないかなあっ! ねぇっ! 怖いんだよ?結構……


 僕の思いとは裏腹に久々に敵対せず、自分に話をしてくれる僕に興味を抱いたのか赤い双眸には警戒の色が解けている。


『よし、我も貴様についていくとしようっ。我ながら良い案ではないか』


 なんですと!?なんて言った今……ついて行く?……冗談を…………

 地竜はとんでもない事を言い出した。僕は嫌な汗をかき始める。嫌だって言ったら殺されちゃいそうだし。


「どど、どうやって街に入るつもりですか?その巨体だと入れないですし……」

『それは大丈夫だ』


 何がだよ……どこに大丈夫の要素あるんだよ…………

 僕は両手で頭を抱える、なんでこんな事になった。しかし急に僕を日の光から遮っていた影が小さくなり、僕は慌てて地竜を見上げる。すると10メートル近くあった巨体が縮まり宙に浮く小竜がいる。


「もしかして地竜ですか?」

『もしかしなくとも我だ。というか貴様についていくのだ、名を付けろ。』

「種族名じゃダメなんですか?」

『おい、まさか、知らないのか?』

「何がですか?」

『魔獣や獣にとって名づけが一番の信頼の証なんだぞ?』


 僕は地竜の言葉に頭に雷でも落ちたようなショックを隠し切れない表情をしている事だろう。

 ツキノワは僕の隣に寄り添うように体を丸める、不意に顔を上げると僕の頬を舐める。その行為に僕は救われたような気がした。


「取り敢えず、名前は家に帰ってから考えますね」

『うむ、それで構わん。と言う事は我も連れて行ってくれるのだな?』

「ええ、僕の間違えを正してくれましたし、ツキノワもウォーウルフも好意的ですし」


「グルアアァアア」

「ウォオオン」


 言葉は通じないけど、僕にはなんとなく分かる気がする。それに地竜に言われた通り名前を付けたいと思うし、僕は森の出口へ戻った。皆と一緒にね。



 僕の新しい仲間に地竜が加わった。




なんとなくパッと構想が浮かんだの文字にしてみました。

『異世界冒険の旅』の方もよろしくお願いします。

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