第一章 一杯目 コーヒーに牛乳をいれるのは酸味をおさえるため
「で?お嬢ちゃん。この街に何しにきたのさ??」
「よくきいてくれたわ変態。私はね、ある人を探しに来たの。」
「ほう。お嬢ちゃん。言ってなかったが、俺にはちゃんと名前があるんだ。」
「それでね、変態。私はどうしてもその人にお礼をしなくちゃならないのよ。」
「・・・お嬢ちゃん。なかなかヤベぇ奴だな。俺、仕事に戻っていい??」
「仕事??あなた、ニートじゃなかったの??」
「・・・・・」
取り出した手帳を見てミハルの目が輝いた.....。
「いいか?勝手なことすんなよ?」
「もちろん。邪魔なんてしないわ。一緒に捜査してあげるだけよ。」
-それを邪魔っていうんだよ-そう言おうとするのを、
「イサミさん!」
部下が彼を呼ぶ声が遮る。
「今度から自分の役職を自慢するのはやめよう・・・。」
そう呟きつつ捜査状況を確認。殺された男は商人。怨恨の可能性もあるが、店で斬られていたことから察するに、侵入してきた強盗と鉢合わせたのだろう。
「ここ。何かが置いてあったみたいね。ここだけ埃が積もってないわ。これしか盗まれてない様だし、よほど高価な品だったのかしら。」
うろつく一般ぴーぽー。
「お前は某小学生探偵か。ちょこまかすんな。」
「誰がコナン君よ。」
「名前を伏せろ。日曜日に怒られるだろ。」
帯刀しているとはいえ、ついてきたこいつを現場に入れたのは間違いだった、などと後悔していると、現場に男が一人、入ってきた。その、いまどき珍しい着物姿を見て、現場の最高責任者である追捕使イチロウ・イサミは苦虫を咀嚼した。
「すいません。事件現場を見せていただけますか。」
そう言った自分を顔パスで殺人現場に案内する警吏達に、この国の法の番人に対する一抹の不安を抱えつつ現場を物色する。木彫りの熊、金の竜、動物の剥製、水晶.....その中に、小さな不自然をいくつか見つける。
「現場荒らすなよ~?この素人さんめ。」
「お得意様にその態度はどうかと思いますよ。この税金泥棒が。」
「あれ、普通ルビってやわらかい言葉じゃないの?俺、表裏でディスられてるよね?というかそれ最早ルビでもなんでもないよね?」
「ソレより彼女。誰ですか??」
黒縁眼鏡ごしに、さきほどから現場をうろついている少女をみやる。
「ソレよりって...まぁいい。出勤途中に出会ったんだが、見学したいってきかなくてな....。」
危険が及ばないか心配なのだろう。この男こういう面ではきちんとしている。...普段はチャらいオッサンだが。
「そんなに心配なら、誰かに世話を頼めばいいじゃないですか。部下ならたくさんいるでしょうに。」
「.......そうか。そうだよな!!そうしてみるわ!!」
調査のために先ほど見つけた不自然をいくつか問おう...と思ったが、彼は件の少女となにか話しているようだったので、若い警吏に声をかけ、質問と調べごとをいくつか頼んだ。