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第一章 プロローグ
二つの音。一つは繊細で上品な。もう一つは粗雑で下品なそれらは、ひとつのテーブルから交互に奏でられる。
「もう少し行儀よく食べれないのか?僕の品まで下がる。」
一方が問う。
「ええじゃろうが。おみゃあの品なんて誰も気にせんけぇ大丈夫よ。」
答えながら他方が皿の塔を築く。
「依頼人に悪い印象を与えたらどうするつもりだ。依頼人がいなければ代金が払えないんだぞ?」
「それは困る。無一文じゃし。」
「誰のせいだt」
「そういえば、そろそろその依頼人が来る時間じゃろぅ。わしがおるとややこしくなるけぇ、席外すぞ。」
小言を遮られた彼は呆れた様子でテーブルを大掃除する店員にコーヒーを頼み、席に着く。
「・・・・・ふう。」
少しして、彼の前に一人の老父が座った。店員に勘定を払う老父に向かって、彼が尋ねる。
「さて、ご老人。いや、お客様。今回のご依頼は?お代は我々の調査中の食費、それのみです。探し物、探し人、浮気調査に冤罪立証まで。なんでも引き受けましょう。」
ここは、『ストマック』。ある街の端にある。ボロ酒場である。