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009 鉱石反応を追って


 アリスが伝えた方向にゆっくりとヴィオラが動いていく。鉱石探査をせずにこの速度なんだから、かなりダメージを受けたみたいだ。ドミニクは時速20kmと言っていたが、どう控えめに見ても時速15kmに達していない。


「かなりやられたみたいね」

「動けるだけましさ。問題はヴィオラの進む先に戦機があるかどうかということだな」


 アレクがグラスの酒を美味そうに飲みながらサンドラと話をしている。俺のグラスにも注いでくれたけど、ウイスキーみたいだから半分以下で遠慮しといた。

 それにしても、走行装置の振動でグラスの波紋が収まらない。これではあまり遠くまで行けそうもないな。場合によっては断念するということにもなりそうだ。


 翌日、サンドイッチにコーヒーという簡単な食事を済ませて、アリスと一緒に閃デミトリア鉱石の反応を追う。

 一晩で150km程北西に移動したようだが、鉱石反応は昨日と同じで微々たるものだ。

 扇状にアリスを左右に30km程動かしながら、鉱石の方向を捉えつつ海賊の監視を行う。ヴィオラからの距離は30kmほどだ。他の鉱石反応もあるようだが無視しすることにした。既にバージは鉱石で山積みだ。


『ヴィオラから、【状況を知らせ】とのことです』

「【変化なし、海賊もいない】と伝えてくれ」

『了解しました。通信終了。再び指示が来ました。【先行して確認せよ。1600時に調査を終えて帰還せよ】とのことです』


 あまり無理が出来ないんだろう。日暮前に帰還することになりそうだな。

 となれば……。


「アリス、閃デミトリア鉱石の反応を調べながらどれぐらいの速度が出せる?」

『反応は僅かですが、時速120km程なら問題ありません』

「なら、真直ぐに追って行こう!」

『了解!』


 ジョイスティックを前に倒すと同時に速度が上がっていく。

 地面すれすれを滑空するからかなりの土ぼこりが後方に上がっている。こんな状況なら、他の騎士団や海賊に発見されないとも限らない。

 アリスのレーダーを使って周囲の状況を見られるように仮想スクリーンを展開したが、周囲50km程の範囲には何もいないようだ。

 しばらくは、周囲を監視しながら進むことにしよう。


 12時を過ぎたところでアリスから降りて昼食を取る。ビスケットにコーヒーは味気ないけれど、食後の一服が何より楽しみではある。


「まだ反応に変化はないのかな?」

『変わらずですね。でも途切れることなく反応は続いています』


 さて、残された時間は3時間ほどだ。さらに200kmは進めるだろう。

 焚き火を足で散らすと、アリスに乗り込んだ。


 だいぶ日が傾いてきている。もうすぐ1600時だから、帰還することになる。残念だが新たな戦機はお預けみたいだな。


「アリス……」

『閃デミトリア反応増大! 指数的に上がってます。……超レズナン合金反応確認!』


 アリスに帰還指示を出そうとした時だ、立て続けにアリスからの報告が入ってきた。アリスが左右に蛇行しながら速度を落として地下の金属反応を詳細に確認し始める。


『ユーレカ!』

 アリスの大きな声がコクピットに響く。見つけたってことだな。

「至急、ヴィオラに報告してくれ。隠匿チャンネルを使って符丁を使うんだ」

『了解です。赤-3号で送ります』

 すでにヴィオラの符丁を全て理解してるんだろうけど、赤-3と言うのはどんな内容なんだろうな?

『ヴィオラから通信。『応戦せよ。急行する』以上です』

「どういう意味?」

『現状地点を確保。必要であれば応戦を許可する。ヴィオラは巡航速度で向かうということになりますが……』

 

 破損したヴィオラの出せる巡航速度が問題だな。本来なら時速35km程らしいのだが……。


『時速20kmというところでしょうね。現在340km程距離があります。会合は明日になりますよ』


 となると、明日の9時頃ってことになりそうだ。遅くとも昼前ということになる。

 戦機の埋もれているその真上にアリスを座らせて、ひと眠りすることにした。

 何かあればアリスが起こしてくれると言っていたから、寝ていても問題ないらしい。

 緊張の連続だったから直ぐに眠りに落ちる。


 目が覚めたのは、すっかり日が上がってからだ。時計は8時を過ぎている。

 アリスから降りると、残り少なくなった水筒の水を使ってコーヒーを沸かして一服を楽しむ。まだ携帯食料が残っているかと思っていたら、昨日食べたのが最後だったらしい。


『ヴィオラから通信【現在地を知らせ】以上です』

「座標と、40mmライフルで曳光弾を上げられるか?」


 アリスが独りでに動くのをコーヒーを飲みながら見守る。自律電脳はここまでできるんだ。

 上空に向かって曳光弾が白い煙を伸ばして上がっていく。


『ヴィオラが曳光弾を確認したようです。真直ぐこちらに向かってきますが、戦機が先行しています。戦機との会合時間は20分後になります』

 かなり近くまで来てるようだ。


 アリスのコクピットに収まったところで動体探知レーダーで周辺を確認すると、4つの光点がこちらに近づいてくるのが分かる。たぶんアレク達だな。その後ろにいるのがヴィオラなんだろう。


 全周スクリーンでアレク達の戦機が見えたところで、40mmライフル砲を図上高く上げて再度曳光弾を発射する。

 先頭の戦機が50mmライフル砲を掲げたから俺達の位置が分かったということだろうな。


「リオ、無事なんだな!」

「どうにかです。後は引き継げますか?」

「ヴィオラが来るまでは俺達が周辺を確保する。お前はその位置を確保してくれ」


 有望な金属鉱石があるとなれば、他の騎士団がやってくる可能性もあるのだろう。場合によっては海賊と遭遇することもあり得る。

 掘り出すまでは厳戒態勢を引くということになるんだろう。


 アレク達が俺を中心に四方に移動して周辺の監視を行っている。距離は1km程だから、何かあればすぐに他の戦機が集結して対処するということなんだろう。

 そんな俺のところにドミニクからの通信が入って来た。至近距離だから直接交信ができるようだ。


「そこなの!」

「ここです!」


 短いやり取りと同時にヴィオラの舷側にあるシューターが開き始める。カーゴでは獣機の連中が出番を待っているんだろう。

 アリスの立つ場所から300m程のところでヴィオラが動きを止めると同時に、シューターから次々と獣機が滑り降りてくる。

 舷側の採掘道具を素早く降ろしたり、組み立てたりしたところで機材を動かしてアリスの周囲を掘り始めた。


「ごくろうさま。戻っていいわよ。周辺の監視はアレク達に任せとけば良いわ」

「了解、戻ります!」

 俺の仕事はここまでってことだ。

 アリスをヴィオラのカーゴ区域に戻して、直ぐに食堂に向かう。そろそろ昼なんだけど、朝食も食べてなかったから腹が減ってしょうがない。


「昼食はラザニアにゃ。少し早いけど、直ぐに用意するにゃ!」

 食堂のカウンターでお姉さんに昼食を頼んだら、どうやら一律メニューらしい。食料倉庫にも被害があったようだからな。

 食べ物の恨みは忘れないぞ! と固く心に誓ったところでやって来たラザニアに舌鼓を打つ。


 食事が終わったところで展望室でのんびりとコーヒーを楽しむ。インスタントだけど味は良い。

 発掘はどうなったんだろうと、仮想スクリーンを開いて作業をのぞいてみると……。あの戦機、少し大きくないか? 作業している獣機の大きさと比較しても、アレク達の駆る戦機より一回り大きく感じる。


「戦機ではなく戦鬼と呼ばれる機体よ。騎士団の中で戦鬼を持つものは10本の指で数えられるわ」

「これで戦鬼を持つ9番目の騎士団になりました。問題はこのヴィオラですが……」

 いつの間にかドミニク達がやって来て、俺の座るソファーに腰を下ろした。

 レイドラが小さなグラスを3つ取り出すと、スキットルから酒を注ぐと、その1つを俺の前に置いた。

「乾杯しましょう。戦鬼の発見に!」

「「乾杯!」」

 一息に飲んだけど、かなりアルコール濃度の高いブランディーのようだ。喉が焼ける感じがするな。

「一つ確認したいんですが?」

「良いわよ」

 ドミニクは2杯目を飲みながら俺に目を向けた。 

「あの戦鬼ですけど、ヴィオラのカーゴには入らないんじゃないですか?」

「ぎりぎりで入るでしょうけど、今回はバージに乗せて曳いていくわ。ヴィオラも更新しないとダメみたいだから、その時に戦鬼の搭載方法を考えることになりそうね」


 修理出来ないぐらいのダメージを受けたということになるんだろうな。となると、しばらくは鉱石採掘が出来ないんじゃないか?

 せっかく仕事にありつけたと思ったんだけど、これからの生活が少し心配になって来た。


「王都の陸上港に入港したら長期休暇が始まるわ。給与の支払いもその場で行うけど、長い休暇になりそうだから、宿に困ればここを頼ると良いわ。タダで泊まれるわよ」

 ドミニクが取り出したのは小さなカードだった。その上に金貨が3枚乗せられる。 

「金貨はボーナスよ。まさか戦鬼とは思わなかった」

「長期休暇期間中の行動についてはヴィオラ騎士団は責任を負いません。ただし、他の騎士団の引き抜き交渉については、リオがヴィオラ騎士団である以上、単独での交渉は契約違反となります」


 要するに甘い言葉に乗せられんじゃないぞ、ということなんだろう。他に行くところも無いからホテルで過ごすことにするか。王都は一度行ってみたかったんだけど、かなりの金が掛かると爺さんが言ってたし、そんな暇も無かったから丁度良い。


 夜を徹して発掘が行われ、ヴィオラが南東方向に進みだしたのは翌日の昼近くになってからだった。

 動き出せば周辺の監視を行う必要もなくなったんだろう。アレク達は俺と一緒に展望室で酒を飲んでいる。

 ずっと4人で監視していたのかと思っていたんだが、深夜を過ぎたところで2機体制にしたようだ。


「それにしても戦鬼とは驚いたな。さぞかしドミニクが喜んでるだろう」

「そうなると、あの噂も当たってるのかしら? ヴィオラを更新するらしいけど……」

 アレクの呟きを聞いたサンドラが確認するようにアレクの顔を覗き込む。

「昨夜、ここに来たドミニクもそんなことを言ってました。長期休暇も話してましたよ」 

 俺の話を聞くと今度は全員が俺に顔を向けてきた。

「そういうことか……。ベレッド爺さんが少し前に話してくれたんだが、ヴィオラの後継艦の艤装が昨年から行われているらしい。少し大きくなるとの事だったが、案外先見の目があったのかも知れんな」

「戦鬼を搭載できるってこと?」

「たぶんな。戦鬼となれば一つのステータスに違いない。現状で搭載できなければ改造してでも搭載可能にするだろう。長期休暇というのも案外そこから来てるんじゃないか」


 どこの部署でも同じような話をしてるんだろうな。

 少なくとも、この速度で鉱石採掘を行うとなれば危険の度合いがかなり高まってしまう。巨獣の生息地域に向かうなど命がいくつあっても足りないんじゃないか。



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