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072 クリスのお姉さん


 皆の部屋のベッドサイズはダブルらしいが、俺の部屋は何故かキングサイズだ。

 目が覚めた時に隣にいたのはフレイヤだった。俺が半身を起こしたので目を覚ましたらしい。

 

 「おはよう」と声を掛け合って、着替えを行なう。

 フレイヤも下着を付けると直ぐに部屋を出て行った。俺の部屋にはドレッサーが無いからだろうな。

 

 ジャグジールームに出掛けて顔を洗うと、ソファーに座り込んでタバコに火を点ける。

 今日は皆がバラバラの行動になりそうだ。

 俺は、ドミニク達とクリスの姉に会わなければならない。

 

 奥の個室からドミニクとレイドラが起きてきた。タオルを持ってるところを見ると、軽く朝風呂を楽しむ気だな。

 

 とんとんっと扉が叩かれ、エミーとローザが現れる。

 2人ともキチンと身支度をしているな。一応、2人とも騎士の格好だ。2人ともマントを畳んで持っているが忘れてこないか心配だな。


 昨夜買いこんだ朝食用のパンをレンジで温めている。ローザのそんな姿を見て、微笑みながらエミーがコーヒーを作っていた。

 テーブルに全員が着いたところで、朝食が始まる。


「私は、母さんとソフィーを見てくるわ。事務所の様子も良く見ておくね」

「我は姉様と一緒に王宮じゃ。ムサシの騎士となったことは、一応報告しておいた方がよさそうじゃからのう」

「俺はドミニクとレイドラと一緒に、クリスの姉さんに会うことになってる。この造船所にもうすぐやってくる筈だ。そして後3日もすればガリナムもこの造船所で改修が始まる。その監督を頼んで、改修が終れば中継点に運んで貰おうと思ってる」


 ガリナムの乗員は30人が艦に残るらしい。慣れ親しんだ陸上艦は誰もが愛着を持つのだろう。

 コーヒーを優雅に飲み終えたエミーはローザと共に部屋を出て行く。

 残った俺達もコーヒーカップを片付けて部屋を後にした。


 隔壁を抜けて無人社が事務棟に着くと、フレイヤを残して俺達は事務棟に向かった。フレイヤはアテルダ商会にあるヴィオラ騎士団の事務所に向かう。


 カウンターのお姉さんに予約してある会議室を尋ねると、1人が案内してくれた。


「2人のお客様が先程見えられました。直ぐにお飲み物を準備します」

 そう言って、同じフロアの奥にある会議室に案内してくれた。

 とんとんっと扉を叩いて扉を開けると俺達を中に通して立ち去った。


 会議室と言うより応接室だな。

 小さなテーブルを挟んで2つのソファーがある。そのソファーに座っていた男女がクリスの姉夫婦のようだ。


 精悍なバルキリアと付き従う騎士って感じだ。

 クリスと同じ年齢に見えるが、バイオテクノロジーの発達した世界だから見掛けで年齢は判断出来ない。


「初めまして。ヴィオラ騎士団領のリオと言います。こちらは騎士団長のドミニク、そして副団長のレイドラです」

 手を伸ばすと、両者とも立ち上がると、婦人が俺の手を握った。

「初めまして。元王国軍、第3軍団で駆逐艦の指揮を執っていたメイデンです。こちらは夫で同じ艦の操船を行なっていたアルバですわ」


 2人に席に着くように手で示して、俺達もソファーに腰を下ろす。丁度、女の子がジュースを運んできてくれた。

 俺達の前にグラスが並んだところで、早速話を進めることにする。


「妹のクリスさんが使っていたガリナムを改装してガンシップにしようと思っています。出来れば、その船の指揮をお願いしたいのですが?」

 俺の言葉に微笑むと手元のグラスを取り上げ、ストローでジュースを一口飲んでいる。

「ガリナムを妹が売りに出すとは考えられませんが?」

「ヴィオラの指揮をお願いしたところです。……現在、ヴィオラ騎士団はガリナム騎士団、ベラドンナ騎士団と同盟関係にあります。あることがきっかけで、国王より公爵の位と領土、それにフラグシップも合わせて俺達の物になりました。これが、当初のラウンドクルーザー3隻です。クリスさんにはガリナムからヴィオラに乗船して貰うと、ガリナムが浮いてしまうことになります」


 端末でラウンドクルーザー3隻の外形図を見せながら説明した。

 それを2人でおもしろそうに見ている。


「でも、それなら誰でも良いんでしょう? 外にも小型の船を動かせる者は沢山いるわ」

「ただ動かすだけなら苦労は無いでしょう。ですが、騎士団のガンシップとなれば度胸と決断力が必要です。少なくともクリスさん以上にね。……これを見てください」


 例の映像を見せた。

 2人が食入るようにその画像を見ている。

 俺はタバコを取り出すと、瞬きも忘れて見ている2人を見ながら火を点けた。


「あのニュース画像は一部だけだったのね。これが、騎士団の戦いなの!」

「3方向を囲まれて、後ろには嵐と言う状況でした。先頭がガリナムです」

「それは知ってるわ。それより、戦姫が3機の方に驚いてるの」

 

 そう言うと、バッグからタバコを取りだして火を点ける。

 そんな婦人を我関せずと言う感じで俺達を旦那が見ているぞ。


「1機はウエリントンの戦機ですよ。デイジー王女が操縦しています。残り2機は俺が操縦してました」

 一瞬、眉が上がった。

 俺達を笑顔で見ていたんだが、やはりフェイクだったようだな。


「ありえないわ。まさか、竜人族?」

「人間ですよ。まあ、あれが最初で最後にしたいですね。かなり疲れましたから」

 笑って誤魔化しておく。

 

「先程、改修と言ったわね。ガリナムは11門の75mm砲を搭載しているわ。改修する必要は無いんじゃなくて?」

「搭乗員が不足してます。可能な限り自動化したいのと、砲を88mmに変更したいと考えています。俺達の領土は北緯50度を超えてますから、それなりの巨獣がいます」


「当然駆動系も更新するんでしょう。良いわ。私達が指揮を取りましょう。細かなところはクリスに聞く事で良いわね。でも、給与は駆逐艦の艦長と操舵士の2割増しでお願いしたいところね」

「給与は騎士団の副団長と同額。操舵士についても騎士団に準じることにします。ほぼ5割増しになると思います」

 ドミニクが即答する。

 

「私達も騎士団に迎えるという事かしら?」

「嫌でなければ、そう願いたい」

「良いわ。妹もいることだし。おもしろそうね」

 

 レイドラがバッグから契約書を取り出して、2人の前に置く。ちゃんとペンもバッグから取り出してるぞ。

 メイデンさん達は、その契約内容をじっくり読みながら、最後にサインをする。

 それを見て、ドミニクは2つのブレスレットを取り出す。

 ヴィオラ騎士団のエンブレムの入ったジゼル合金のブレスレットだ。

 

「これで、お2人は騎士団員です。最初の任務を受けて下さい。ガリナムの改修の監督と改修後のヴィオラ騎士団領への回航です」

「承りました。ところでガリナムの乗組員は?」


「後20日後にガリナムに乗船する予定です。乗船人員は30人。操船、火器、保守と機関員です」

「かなりの自動化を行なうようね」

「改修設計書はこの中に入っています。不足であればヴィオラのウエリントン事務所に申し出てください。何とかします」

 

 俺の言葉とともにレイドラがタブレットを差し出す。

 そして、カードを1枚。


「20万Lが入っています。来月からはこのカードに給与を振り込みます」

「ありがとう。今日から始めれば良いのね。任されたわ」

 アルバさんは寡黙だな。一言も話さなかったぞ。

 

「ところで、貴方達の船はまだ見せて貰ってないけど?」

「この造船場にあります。後3日で出航する予定ですが、こんな感じの船です」


 レイドラが端末を操作してスクリーンに3Dでフラグシップを表示した。

 2人が驚いてその画像を覗き込む。


「これは……、大きさだけなら戦艦クラスだわ」

「巡洋艦の船殻を2つ並べてブリッジで繋いでいます。探査時の巡航速度は時速30km。通常巡航は時速35kmまで出せます」


「それなら重巡を使ったほうが良かったでしょうに。巡航速度は45km出せるわよ」

「この大きさになってしまったのは、核融合炉を4基積んでいるからなんです。その電力で4つの大型反重力装置を駆動、水素ターボジェットにより地上200mを時速500kmで巡航出来ます」


 「緊急機動部隊として運用するって事! 中継点が北緯50度を超えているとなると、そんな対応も必要になるということね。そして、貴方達が消えた後の騎士団を守るには……、ガリナムを強化する理由はそこにあるわね」

 どうやら俺達の意図を正確に理解してくれたようだ。

 

「改修ならそれ程工期が掛かるとは思えないわ。前の駆逐艦より武装は強力そうだし、おもしろい船に仕上がりそうね。後は任せて頂戴」

 俺達は再度握手を交わすと、応接室を後にした。

 ちょっと心配したけど、上手くやっていけそうな気がするな。


 無人車で王都のレストランで昼食を済ませると、フラグシップに戻りソファーに腰を下ろす。

 フレイヤはたぶんのんびりと親子で買い物でもしてくるのだろう。

 エミー達も親子で楽しんでいるに違いない。


 俺達もジャグジーに入って楽しむことにしよう。

 夕食の時間までは数時間もある。

 3人で楽しむには十分な時間だ。


「そういえば、カテリナ博士が見えないわね」

「たぶん学府に行ったんじゃないかな。前に俺達の領土で水を手に入れる方法を考えてくれるように頼んでいたんだ」


「水は必要です。ですが、あの地には川も水脈もありませんよ」

「そんな場所で水を手に入れる方法があれば、あの地で農業が出来る。新鮮な野菜や果物は是非とも欲しいからね」


 ジャグジーのお湯を抜いて俺達3人は裸で寝転んでいる。

 あまりお湯の中に長くいると体がふやけてしまうからね。それでも室温が高いから体が冷える事はない。

               ・

               ・

               ・

 衣服を整え、ソファーでビールを飲んでいると、フレイヤが大きな荷物を抱えて入ってきた。


「お帰り。どうだった?」

「ちゃんと皆仕事をしていたわ。これは、皆にね」


 そう言って渡してくれたのはバスローブだ。1人2着買い込んできたみたいだな。

 これなら、部屋をうろついてもあまり問題が無さそうに思える。下着で歩き回られるより遥かにマシに思えるぞ。

 

「中継点のラズリーとは上手くやってるみたい。西の桟橋の空きの状況から、入港予約を捌いていたわ」

「やはり、入港希望は多いの?」

「一月後まで埋まってるらしいわ。外のバージターミナルも似たようなものよ。王都まで運ぶより、遥かに近場で取引が出来るんだもの」

 

 やはり、中央桟橋はラウンドクルーザー用にしなければならないようだな。そうすれば後、3隻は入港が出来るだろう。

 バージ用ターミナルも大きくしなければなるまい。それは、商会の連中に頼んでみよう。

 

 つぎに帰ってきたのは、エミー達だった。

 全員が揃ったところで、陸港に出掛けて夕食を取ることにした。


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