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071 プラネタリウムが付いている


 騎士団と良心的な海賊との調停が上手く行ったからローザは上機嫌だ。

 ヴィオラに戻ったところでエリー達に顛末を伝えてるけど、話を聞いてリンダの顔がだんだんと白くなっていく。

 終わったことだから問題はなさそうだが、次には絶対円盤機で同行するんじゃないかな。


「そうか。まぁ、何事も無くて良かったと思うべきだな。KA198のコードは聞いたことがある。かなりの悪党らしいぞ」

「いつもの事ですが、母艦は破壊できませんでした。いずれ復活ということなんでしょうね」


 俺の言葉に、グラスを持ったアレクが頷く。海賊達の資金源が続く限り新たな円盤機や戦車を購入するんだろう。今回失った海賊達の代りはいくらでも出てくるんだろうな。


 ヴィオラの積み荷は300tバージを3台だが積み荷はいつもの7割程度らしい。巡航速度をやや上回った速度で荒野を進んでいる。

 最短では7日の日数だったが、この分では8日は掛かるんじゃないか?

 周囲の偵察は円盤機が行っているから、今のところは俺とアリスの出番がない。これも休暇の内と休憩所でのんびりと過ごす。


 そんな俺のところにフレイヤ達がやってきて、王都での行動を色々と考えてはくれてるんだけど、のんびりと過そうという気はないんだろうか?

 とはいえ、気になることもある。

 

「クリスのお姉さんにあって頂戴。ガリナムの改装とその後の運用を見てもらうつもりだから」

「でも、上官を殴って退役した女傑なんだろう。どんな注文を付けてくるかが問題なんだよな」

「あの映像を見せればOKだって言ってたわ」


 意外と交渉に使えるんだな。それなら、もっとかっこよく巨獣を倒すんだった。

 ドミニクのダメ押しともいえる指示だから、エリーを誘って出かけてみるか。

                 ・

                 ・

                 ・

 王都の第二陸港の桟橋にヴィオラが停泊したのは中継点を出発して8日目の事だった。

 すでに昼を過ぎているが、俺達は造船場に向かうことにした。

 ドミニクの話では陸港の隣らしいが、陸港自体が広大な施設だからな。どれが造船場だかまったくわからない。

 カテリナさんの先導で、無人車2台に乗り込むと造船場の管理棟に向かう。

 受付でカテリナさんが用向きを話すと、直ぐに責任者が俺達を案内してくれた。

 

 工場が大きいのでバスでの移動だ。

 いろんなラウンドシップやバージを見ながら、10分ほど走ると壁のような区画が俺達の行く手を遮っている。

 その区画壁の一角で警護をしている者達に責任者がバスを降りて説明をすると、バスが潜れるだけのシャッターが開いた。


「「「ほぉ~!!」」」

 その大きさに思わず感嘆の声を発した。

 でかい。大きいなんて物じゃないぞ。これが時速500kmで飛ぶとは到底信じられない。

 

「これがキーになります。そして、先程の出入り口は厳重に警戒をしておりますから、出掛ける時にはこのカードをお見せ下さい。

 此処に無人車を4台置いてあります。他の場所に移動なさるときにお使い下さい。それでは、これで……」

 無人車のキーをカテリナさんに渡したところで、責任者はバスで帰っていく。責任者と言えども、中を自由に見る事が出来なかったのかな?


「さて、乗船しましょう。不足があれば、ちゃんとメモしておくのよ。それも含めて完成なんだから」


 慢心の笑顔でカテリナさんが桟橋から伸びる可動橋を歩いて行く。

 俺達も急いで後を追い掛けた。


「先ずは公爵の私室に行くわ。エレベーターで4階に上がるわよ」

 

 10人程が乗れそうなエレベーターが3基あるエントランスに入ると、近くのエレベーターに乗り込んだ。此処は2階に相当するらしい。

 2フロアを上がって降りた小さなホールから奥に向かって赤い絨毯が敷いてある。

 

「向かって左が艦首で右が艦尾になるわ。左の全てが公爵の私室よ。右はゲストルームが3つに会議室が2つあるわ」

 

 最初にゲストルームの扉を開ける。

 中はちょっとしたスイートルームだな。リビングに寝室とシャワー室で構成されている。


「王家の人が来ても此処で対応できるわ。そしてこっちが私室よ」


 私室の大きな扉を開けると、教室の2倍ほどもあるリビングだ。天井にはシャンデリア、右側にはミニバーまで付いてるぞ。

 湾曲した窓は5m程の天井に向かって傾斜が付いている。

 その窓際にソファーセットが置かれ、部屋の中央には10人程が会食出来るようなテーブルがあった。

 

「右側に5つ個室があるわ。左側はリオ君の執務室でその奥に寝室があるわ。そして一番奥はジャグジールームよ」

 

 フレイヤ達が早速探検に出掛けた。

 俺はソファーに座って、タバコに火を点けると、レイドラがミニバーからコーヒーを運んできてくれた。

 

 半円状に配置されたソファーに座ると、レイドラもコーヒーを飲み始めた。カテリナさんもタバコに火を点ける。


「これだけあれば十分でしょう。さすがに今以上には増えないでしょうし……」

 

 俺に微笑みながら、小さなタブレットを渡してくれた。レイドラにも渡している。


「この船の説明書よ。いつも手元に置いておけば暇な時に読めるでしょう」

 早速、レイドラがタブレットを操作して画面を眺めだした。俺は後でも良いや。

 

「これは大きすぎませんか? 掃除も大変ですよ」

「自動化してあるから問題なし。それに公爵の屋敷を考えると狭い位よ。ミニバーの後ろにメイドルームがあるから、2人を生活部長から出して貰いなさい」

 

 探検に行った連中が集まってきた。

 フレイヤがコーヒーを運んで、とりあえず皆でソファーに座る。


「部屋は気に入ったわ。ドレッサーが個室ごとにあるのも良い感じね。」

「最後にあったジャグジーはおもしろいのじゃ、我も入りたいぞ」

 また問題が出て来たぞ。教育上極めて不味くないか?

 

「私と一緒に入りましょうね」

 エミーの言葉に、にっこりと微笑んでいる。いったいどんなジャグジーなんだ?

「直径4mのジャグジーなんだけど、天井にプラネタリウムがあるのよ」


 完全に遊んでるな。

 ちょっと、一休みしたところで、各自がバラバラに艦内を見て回ることになった。

 カテリナさんから受取ったタブレットには自分の居場所が分るように表示されているし、他の者達もイニシャルで居場所が表示されてる。

 これで迷子になったら笑いものだぞ。

 

「そうそう。リオ君、例のプログラムは出来た?」

「これですね。その日の内に、『完了です』って渡されましたよ」

 俺の言葉に喜びながらクリスタルを受取っている。

「これが、最後に必要だったの。さあ、行きましょう!」

 

 俺に手を振って皆が出て行った。

 その内、嫌というほどこの艦で暮らすんだから、慌てる事も無いと思うんだけどね。

 操船の方法さえキチンとマスターすれば何とかなりそうな気がするぞ。


 どうやら1フロア上にある操船区画に行ったらしい。

 そこは、操船を行なうブリッジと航行図を投影する大型スクリーンのある指揮所、それに、この艦の全体を制御する電脳のある中央電脳室がある。

 最初に向かったのは中央電脳室だ。あのプログラムをダウンロードするんだろうか?


 次に向かったのは操船ブリッジだ。端末を立ち上げてその様子を見る事が出来る。

 艦内の監視はこれで行なうみたいだな。


 操船は大きな操舵輪が真中に付いている。

 かなりレトロな感じだな。マイクは伝声管を模擬してるぞ。

 前方の窓は床から4m程の高さまで続いているから、あの舵輪で艦を操るのはさぞかし気持ちが良いだろうな。

 その舵輪の左右にオペレーションデスクが付いている。たぶんそっちがメインなんだろうけど、どうしても中央の舵輪に目が行くな。

 

『マスター。中央電脳とコンタクト出来ました。妹のような存在ですから、名前を考えてください』

「そうだな。そうなるのか……。皆で考えるよ」


 そうなると、帰ってくるまでに考えねばならない。

 元々ネーミングセンスは無いからな。

 待てよ、このフラグシップも名前がいるぞ。

 ヴィオラは使ってるから、マークⅡと言うのもちょっと変だな。

 

 やがて、ぞろぞろと部屋に帰ってきた。

 ソファーに座り込んでいる。今度は、コーヒーカップを片付けて、紅茶を入れてくれるみたいだ。


「かなり変わってるけど、使い良さそうよ。でも、人を減らさないといけないわ」

「操船も同じです。当直は5人。しかも2人はダメコン対応に機関対応ですから実質は3人で運航することになります」


「アリスが上手く電脳間のリンクをしてくれたわ。私のラボの連中は投出しちゃったのよね」

「それなんですけど……。俺のところに名前が欲しいと」


「自意識を持つ電脳なのじゃな。さすがはカテリナ博士じゃ。それで、何と付けたのじゃ?」

「それを皆で考えようと思うの。ついでにこの艦にも付けたいしね。ヴィオラは1隻あるわけだし、何時までもフラグシップと呼ぶのも問題でしょう?」


「そうね。ここで決めれば、ブリッジの横に大きく書き込んで貰えるわ。これからレストランに向かうから、明日の朝にここで皆の案を披露しましょう」

 カテリナさんの提案に、俺達はフラグシップを出て隔壁の警備員にバスを呼んで貰った。


 カテリナさんの予約したレストランは小さなお店だったが、お任せで出てくる魚と肉の料理は凄く美味しい。

 ワインの赤と白を味わいながらのんびりと次に出てくる料理を楽しむ事も出来る。

 

「良いお店ですね」

「そうでしょう。学生時代に見つけたのよ。まだ味はそのままね」


 7人で14,000Lは少し高いような気もするけど、王都だからねぇ。気前よくカードで支払って、フラグシップに向かう。途中で朝食を買い込んでおけば明日の朝はフラグシップで取れるな。


 フラグシップに帰ると、早速球形のジャグジーを楽しみにローザとエミーが出掛けて行った。

 今夜はゲストルームに、姉妹で泊まると言っていたな。

 

 「おもしろかったのじゃ。またお邪魔する事もあるじゃろう!」

 「それでは、明日」

 

 ジャグジーから出て来た2人がそう言って部屋を出て行く。

 残った俺達は、扉が閉まるのを確認したところで、服を脱ぎ捨ててジャグジーに向かって行った。


 直径4mはやはり大きい。

「皆入ったわね。早速始めるわよ」

 カテリナさんが球体の円周の一部についているボタンを押した。

 気泡を含んだ循環水がジャグジーを撹拌すると、部屋の明かりが暗くなる。

 

「わぁ~、綺麗!」

 ゆっくりと星空が回転する。

 皆で星空を眺めながら、ゆっくりとジャグジーを堪能した。


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