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005 大きなヤード


 ツナギの腰にガンベルトを巻く。ベルトに付けたポーチに、昔使ってた財布代わりの革の袋を入れておいた。

 こんなものか? クローゼットの鏡で髪を撫でつけると、アレクの言っていた展望室に向かうことにした。

 部屋を出ると扉が自動的に閉じる。扉に貼ってある金属プレートにD-402と大きく書かれているから迷うこともなさそうだ。

 だけど、左が203で、右が419だ。飛び番号にしてもひどすぎる気がするな。

 クローゼットに入っていた靴は、コンバットブーツのようだ。今まで履いていた安全靴と似ているけど遥かに軽い。

 床に吸い付く感じがするのは足音を消すためなのかもしれない。寝てる連中もいるだろうからね。

 

 ひたすら船首に向かって歩く。通路の長さは50m以上あるんじゃないか? かなりの長さだ。その突き当りは、2つの扉があり、左右には下に降りる階段があった。

 扉の1つは食堂でもう1つが展望室と扉のプレートに書かれている。

 展望室と書かれたプレートの扉を開けると広い部屋があった。前方には大きな窓が付けられているから外を眺めることができるのだろう。

 3つほどテーブルセットが置かれ、テーブルを囲むようにソファーが丸く作られていた。


「こっちだ!」

 前方の窓の傍から、アレクの声が聞こえ彼の手を振る姿が見える。

 急いで彼の元に向かうと、テーブル越しの席を勧めてくれた。とりあえず席に座ると、彼の周りに目が行く。


「新しいヴィオラ騎士団の騎士だ。名前は……」

「リオ・シュレーディンです。荒野で途方に暮れてるところを拾って頂きました」

「俺の隣がサンドラ、その隣がシレインだ。少し離れたムッツリがカリオンになる」

 軽くウインクしたり、小さく手を上げたりして挨拶してくれるから、俺も頭を下げておく。挨拶は大切だろうし、俺は新参者だからね。


「それにしても他の騎士団が聞いたら呆れる話よね。鉱石ではなくて戦機と騎士を拾ったんだから」

「荒野にはいろいろとあるってことだな。とりあえずよろしく頼む。俺が筆頭になるから、指示には従ってくれよ」

「それにしても変わった戦機ね。女性型なんて初めて見たわ」

「それに付いて、ドミニクから注意があったぞ。あの戦機については他言無用とのことだ。ヴィオラ艦内では構わんが、ヤードや王都では気を付けてくれよ」


 アリスが戦姫は数が少ないと言っていたな。いろいろと問題もあるんだろう。ここは向こうに任せておくに限りそうだ。


「でも少し小さいわよね。獣機よりは大きいけど、50mm砲は使えるのかしら?」

「出発前に試してみるそうだ。近くに盗賊団の戦車の残骸がある。あれで良いだろう」


 翌日バギーが陸上艦から下ろされ、アレクの搭乗した戦機を護衛にアリスの武装の確認に出ることになった。

 3km先の破損した戦車に初弾が命中することにも驚いたようだが、その命中痕を見てさらに驚いているようだ。

 直ぐに陸上艦に帰還すると、最初の部屋に来るように言われてしまった。


 俺とアレクで部屋に待機していると直ぐに2人が入って来た。レイドラがトレイにコーヒーを乗せているから、今日はある意味秘密の位置合わせということになるんだろう。

 俺達にコーヒーを配ったところでレイドラがドミニクの隣に腰を下ろすと、2人とも俺を見てため息を吐いている。


「正直、驚いたわ。戦姫が武器を内蔵しているとは聞いたことがあるけど、あの大型ライフルは空間から取り出したわね。そんな戦姫は聞いたこともないわ」

「その上、あれはレールガンですね。衝撃波と着弾痕から撃ちだす速度は戦艦のレールガンの弾速を越えています」


「だが、俺達には都合が良いんじゃないか? あれならチラノの頭骸骨でも貫通するだろう。75mm艦砲がオモチャに見えるが、俺達の仕事に役立つことは確かだな」

「そうねぇ……。だけど、戦機に思わせる必要もありそうだわ。ベルッドに先ほど撮影した画像を送っておいたから、ダミーのライフルを作ることにしてあるの。それが完成するまでは、出撃を見合わせるわ」


 ドミニクの言葉に、アレクが頷いている。しばらくは無いものとして扱えってことなんだろう。

 

 その日の昼過ぎに、ヴィオラ騎士団の陸上艦が動き出した。アレクの話では、騎士団と取引のある商会が経営するヤードに向けて進んでいるのだそうだ。

 俺のいた小さなヤードということは無いだろう。陸上艦の整備を行い、バージに積んだ鉱石の引き渡しも行うことになるのだ。


 300tバージに積載した鉱石の団塊は、この惑星の過去の海水中で何万年もの年月が費やされて出来た物らしい。

 マンガン団塊ともいわれているが、かなりの量のレアアースが含まれているようだ。

 その価格は鉱石塊1tで銀貨30枚前後で取引される。果たして安いのか高いのかは微妙だけど、騎士団の維持管理にもかなりの額の金額が必要なんだろう。

 いつもたくさん採掘できるとも限らないし、経営は厳しいのかもしれないな。


『上手く騎士団に入れましたね。電脳の記憶槽を見ましたが、かなり団員の福祉には力を入れているようです。退団した後も年金の形である程度の金額を送っているようです』

「まともな騎士団だったということなんだろうな。食事も結構美味いし、個室や衣類まで供与してくれるんだからありがたい話だ」


 貸与された携帯端末で騎士団の構成や、規則をいろいろと調べても問題となるような箇所は無い。

 騎士団はドミニクと副官のレイドラを頂点とする航法、機関、保全、火力、採掘それに生活の6つの部局で構成されている。

 航法部は陸上戦艦ヴィオラの運行全てを任されており、鉱石探査もこの部局が管轄している。

 機関部はドワーフ族の独断場だけど、同じドワーフ族の保全部とあまり仲が良く無いようだ。職場が艦の前後だから特に問題は無いのかな。

 機関部が陸上艦の核融合炉と流体直接発電機の管理を行っている。それ以外の全ての設備機器はベルッド爺さんをトップに据えた保全部の仕事だ。

 火力部は、陸上艦に設置された火砲を管轄する。ヴィオラには75mm長砲身単装砲塔がブリッジの前に2基背負い式に、後ろに1基が設けられている。ブリッジの左右には20mm連装機関砲が設けてあるが、これは近接防衛ということになるんだろうな。

 火力部のもう一つの仕事が周辺監視になる。このため部局はブリッジの最上階に設けられているようだ。

 艦砲の砲塔は、小型化と無人化を重視した設計だから、砲弾を俺のリボルバーのような弾倉にあらかじめ入れることで短時間に連射することができる。

 だけど全弾発射すると弾倉に改めて砲弾を詰めなければいけないようだし、狭い砲塔内での作業だからドワーフ族がどうにか行えるようだ。

 生活部はネコ族が独占している。食堂の運営から、俺達の給料計算までほとんど全てを担当する、保全部に次ぐ雑用担当部局にも思えるな。アレクの話だと、ヴィオラ騎士団のネコ族は全て親戚同士らしい。

 採掘部は団塊状の鉱石を採掘してバージに積むまでが仕事になる。獣機を用いての作業は人間族とトラ族が主になるようだ。


 それにしてもいろんな種族と部局があるな。

 とりあえずは、アレクの指示に従って行動していれば問題はないだろう。


 陸上艦は休むことなく南に向かって進む。

 仮想スクリーンに映し出された目的地はウエリントン王国の王都から北北西に数百kmほど離れた位置にあるヤードのようだ。周辺に村や町は無いから少しは武装しているのかもしれない。

 王国の軍隊は2つの艦隊を作って王国の北部を遊弋しているけど、荒野からたまにやってくる巨獣をすべて阻止できるわけではない。

 ある意味、騎士団の武装化には、少しでも巨獣の被害を減らそうという思惑もあるんじゃないかな。


 6日後に到着したヤードは、俺がいたヤードの3倍以上の規模がある。広さだけで3km四方はありそうだ。

 桟橋に陸上艦が横付けされ、桟橋からパイプのようなボーディング・ブリッジが伸びてくる。船首の展望室の仮想スクリーンでそんな光景を見ていると、アレクが声を掛けてくれた。


「降りてみないか? そこそこ美味い店があるぞ」

「ありがとうございます」


 誘ってくれたのはありがたい。何もすることがないからね。

 アレクが両隣にサンドラ達の腕を絡ませて歩いていく後ろを一人付いていく。懐は温かいから、支払いはだいじょうぶだろう。


 展望室からブリッジのあるコア部分に歩いていくと、エレベーターで1階降りて、下層の居住区に出る。船首に延びる通路の両側は4人部屋が並んでいるらしい。

 俺達は左右に延びる通路を左側に進むと、直ぐに通路が人であふれていた。

 

「混んでるな。この先に、ボーディング・ブリッジが接続されてるんだ」

「ネコ族の人達ばかりに見えますけど?」

「生活部だからねぇ。いろいろと不足してたんだと思うわ」


 早い話が買い出しらしい。生活部と言っても、洗濯、掃除、食堂等いろいろだ。長い鉱石採掘の航海で足りなくなるものもあるんだろう。


 ネコ族のお姉さん達がパタパタとローディング・ブリッジを走っていくと、途端に辺りが静かになった。

 ようやく俺達が渡れることになるのかな? 

 桟橋も横幅は100mほど、長さは500m近くありそうだ。陸上艦2隻が十分横付けできる。


「あれを見ろ。俺達の曳いてきたバージを鉱石集積場に運ぶタグボートだ。自重が500tほどあるんだぞ」


 アレクの指さす先に鉱石の品質検査を行うために分離したバージを曳く大型のタグボートが見える。車輪ではなくキャタピラを使っているようだ。


「あの門型に見えるのが鉱石の分析装置だ。バージごとに検査できるから昔と比べて楽になったものさ」


 通過させるだけで良いようだな。俺のいたヤードでは、バージからベルトコンベアで移動させて検査していた。


「こっちだ。この建物になる」

 桟橋の一角に作られた建物はどう見ても平屋にしか見えない。

 桟橋の大きさは陸上艦の胴体と同じぐらいの高さを持ってるから、案外桟橋の中にいろんな施設を持っているのかもしれない。

 とりあえず、アレクの後に付いて建物の中に入って行った。


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