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048 戦姫が3機?

 

 試合の場は砂浜に作られていた。

 ターフがいくつか張られ、その中にテーブルと椅子が置かれている。皆はその椅子に座ってジュースや氷を浮かべた酒を飲みながらの観戦だ。


 俺は上半身裸のトリスタンさんを前に立っていた。サーフパンツだけで足は裸足だ。手には2m程の棒を持っている。

 対するトリスタンさんは両手に1本ずつの木剣を掴んでいた。

 棒術は見よう見まねだけど、イメージした通りに体が動くんだよな。

 試しに数回棒を回しながら具合を見る。

 俺の動きを見て、トリスタンさんが頷いてるし、国王はグラスを掲げている。

 

 試合開始の3分前になると、ターフに入りきれないほどの人が集まっている。どうやら噂を聞きつけてやってきたのかも知れないけど、皆、暇なんだろうか?


「武器を手放した方が負けとする。命を賭けるまでも無い試合だが、万が一の場合はカテリナ博士がいる。安心して試合をするように。……それでは、初め!」


 国王の合図で、砂を蹴って一気に宙に舞う。上空で軽く体を捻り棒の真中を掴んで回転させ、思い切りトリスタンさんの頭に打ち付けた。

 トリスタンさんは素早く2歩前に踏み出して俺の落下点目掛けて剣を横に振るってきた。

 棒の反対側を素早く回して木剣を跳ね上げると、素早く距離を取る。


「中々だな。そこまで動けるとは思わなかった」

「最初の一撃で終ってくれると思ってたんですが」


 そんな俺の言葉にニヤリと笑って答えてくる。

 かなりの腕だ。

 

 スイッとトリスタンさんが視界から消える。棒を斜めに上げて1歩退くと棒に強い衝撃が伝わるその反動を使って棒を回転させると、視界の外れに浮かぶ影を狙って打ち付けた。

 ガン! 棒が跳ね上げられる。すかさず駆け寄って袈裟懸けの一撃を放つが、やはり木剣で跳ね上げられた。

 さらに、棒をその場で伸ばして腹に放った突きは、後ろに飛び去って防がれた。


「連続の攻撃をその棒で放つか! あの戦機の動きそのままだな」

「それを防がれては、何も言えません。ですが、負けるわけには行きませんので」


 攻撃を止めれば反撃される。その上、俺の攻撃は見切られているようだ。


「アリス、何とかならないか?」

『では、ムサシを使って神速の攻撃を始めます。相手を負かした時点で復帰させますから心配はいりません』


 次の瞬間、俺の視野が切り替わった。相手の動きが嫌にスローに見えてきた……。

 トリスタンさんが俺に向かった数歩足を運ぶ姿がはっきりと目視出来るし、飛び散った砂がゆっくりと落ちている。


 右手の剣が俺を横薙ぎにする。それを避ける俺に向かって、左手の剣が振り下ろされるのを、回し蹴りで剣の横を蹴飛ばして防ぐ。

 クルリと木剣がトリスタンさんの手を離れた。


 その勢いを使って、体を回しながら回転させた棒を、トリスタンさんの脇腹に打ち付けた。

 素早くもう1本の木剣でそれを跳ね除けようと体を半回転させたところに、体を捻って相手の背中を捉えてもう1撃を放つ。


 ドン! と鈍く筋肉を叩く棒の音がする。

 トリスタンさんの右手に持った木剣が砂に落ちた。


「それまで!」


 国王が立ち上がって勝敗が付いた事を宣言した。

 素早く、トリスタンさんに駆け寄る。


「大丈夫ですか?」

「何の、これしき……。とはいえ動けぬ。肩を貸してくれ」


 左側からトリスタンさんを抱えるようにして、ターフ中で俺達の勝負を見ていた国王のところに歩いて行った。


「まあ、その席に座れ。誰ぞ、カテリナ博士を呼んで来い。かなりの痛手には違いない」

「骨には達していません。微妙に筋肉を叩かれました。湿布で十分でしょう。それにしても……。参りました」


 そんな2人の傍にある席に俺も国王の指示で座ると、ネコ族のお姉さんが俺達に飲み物を持ってきてくれた。

 それを飲んでいると、カテリナさんがやって来た。

 

 彼女の微笑を見た途端、俺の視界が暗転する……。

               ・

               ・

               ・

「ありがとう。ちゃんと約束を守って貰えたわ」

 俺が目を開けた時、俺を見守っていたのはカテリナさんだった。

 

「突然、目の前が真っ暗になりまして……」

「理由は聞かないでおくわ。でも、これで私達の計画に問題が無くなったわ。良く聞いて、国王は褒美と言ったわ。この種の褒美は娘の1人を降嫁させるものと思って良いわ。現在王国の未婚の王女は6人。リオ君が誰を選んでも問題は無いのだけれど……」


「それって、辞退出来ないんですか?」

「無理ね。名誉なことだもの。そんな事をしたらヴィオラ騎士団の為にもならないわ」

 となると、誰を選ぶかになるな。さすがにローザ様はちょっとね。


「ドミニクやヒルデ達とも相談してみたの。私達の関係をこのまま続けるのに最適な王女様は誰かって」

「もし、誰でも良いなら、ローザ様のお姉さんが良いですね。それなら姉妹仲良く中継点で暮らせます。それに、普通の女の子って感じですよ」


 俺の言葉に笑顔を見せる。何か訳でもあるのだろうか?

 

「あの子の目の治療は一度やった事があるの。でも、今の科学では視力を得る事は出来なかったわ。大脳視覚野への視神経が無いのよ。微細電極を埋め込んで視覚野を刺激する擬似視覚を試験的にやってみたけど上手く行かなかったわ。ナノマシンの限界ね」

「デイジーを動かす、あの微細な針の電極を考えてるんですか?」

 俺の言葉にカテリナさんは首を振った。


「視神経の情報伝達量は、あれの何十倍も多いのよ。とても不可能だわ。日常生活に不自由しないように親指程の電脳を埋め込んでいるわ。小さなティアラから超音波を出して、受信した音波をその電脳で耳に送っているの」

 

 蝙蝠みたいな感じなのかな。音で世界を見てるのか……。待てよ、音が見えるなら何か方法があるかもしれないな。

 

「そうそう、夕食時には大勢集まるみたい。他の島からも国王が人を呼んでいたわ」

「この島で楽しむ人数は30人を超えないと聞きましたけど?」


 「呼んだだけよ。滞在はしないわ。とりあえず、水着と言う訳には行かないでしょうね。この島に来た時の服装に着替えなさい」

 

 少し改まった席になるのかな?

 言われたとおりに着替えを済ませると、リビングに歩いて行くと、そこにある大きなテーブルに皆が揃っていた。


「心配したわよ」

「大丈夫なの?」

「ああ、問題ないよ。やはり相手が強かったってことだろうな」

 とりあえず、皆を安心させる。


 夕食はあのホールから電話で知らせてくるそうだ。

 皆も俺とお揃いの黒いTシャツだな。短パンまで黒だけど、4人が揃うとおかしくは感じない。胸のマークも中々だ。


 レイドラが淹れてくれたコーヒーを飲みながらタバコを味わう。

 俺にとって至福の時だ。


「でも、これで5人目になるのよね。あの部屋だと小さいわ」

「大丈夫。帰った時には、ちゃんと3部屋続きになってるわ。それなりに作らないとね。ちょっとした会議も出来るようにしてあるはずよ」

 

 何処の話だ?

 まさか、ヴィオラを改造してるんじゃ無いだろうな?

 レトロな電話が鳴ると、ドミニクが受話器を取って相手と話を始めた。

 

「夕食が出来たそうよ。案内人を寄越すからその指示に従って欲しいと言ってたわ」

 席順が問題になるような夕食なのか?

 そこに、俺達と同じような服装をしたカテリナさんが現れた。

 

「そろそろみたいね。マナーはそれなりにあるけど気にしないでいいわ。そして、リオ君。……堂々としていなさい。騎士は貴族と同格。ましてや貴方は戦姫を操れる騎士なのよ」

「了解です」

 短い俺の言葉にカテリナさんが微笑みながら頷いている。

 

 トントンっと扉が叩かれ、ネコ族のお姉さんが入ってきた。

 俺には、皆同じ顔に見えるんだけど、同一人物なのか……。それとも、5つ子なのか?

 

「案内しに来たにゃ。付いて来て欲しいにゃ!」

 くるりと背を向けると扉に向かって歩き出す。まあ、案内人に付いて行けば問題はあるまい。


 ぞろぞろと桟橋を渡って、中央の大きなバンガローにあるホールに向かう。

 明るく照らされたホールには数十名の男女が集まっている。

 王族と貴族って感じかな。あまり俺達の世界とは係わり合いがないと思うんだけどね。


「ヴィオラ騎士団のご一行様の到着にゃ!」

 お姉さんが高らかに声を張り上げると、別のネコ族のお姉さんが俺達を丸いテーブルの1つに案内してくれた。

 白いテーブルクロスの上には人数分の食器類が並んでいる。

 10人程のネコ族のお姉さんが忙しそうに各テーブルを回って、グラスにワインを満たしているようだ。

 やはり姉妹なのかな? 俺にはどのお姉さんも同じ顔に見えるんだよな。


「国王陛下並びに御后様方ご到着!」

 今度はネコ族の青年の声だ。


 ホールの全員が席を立って出迎える。

 その声と共に、ホールには10人程の男女が入って来た。

 これで、全てのようだな。ローザ様もちゃんと大人しく並んでいるぞ。


「諸君、座ってくれ。毎度の事だが、此処は王宮ではない。皆我の友人ではないか。そのような堅苦しい態度は我の好むものではない」

 国王が席に着いたのを見て、俺達も腰を下ろす。


「先ずは、ヴィオラ騎士団の精鋭騎士であるリオ殿に乾杯だ。理由は直ぐに分る。中には噂で聞いたりしたものも居ろうが、ここで我に届いた映像と今日我が見た映像を諸君に披露しよう。……稀代の騎士たるリオ殿に、乾杯!」


 俺達が唱和すると、皆が一息にワインを飲み干したところで、壁一面に巨大なスクリーンが現れる。

 そこに映し出されたのは、左右を巨獣に囲まれた状態で荒野を疾走するラウンドシップだ。

 あれはヴィオラから見たガリナムだな。

 盛んに左舷に砲撃を加えている。アレク達も艦砲に負けずに応戦しているようだ。


「あれは、戦鬼ではありませんか? 12騎士団でさえ持つ者は少数と聞きましたぞ」

「大人しく見ぬか。見せ場はこれからだ」

 

 メタボな男が席を立ってアレクの駆る戦鬼を指差して叫ぶのを、国王がたしなめている。

 画像が右に変わった途端に、デイジーがグランボードに乗って右の奥にいる巨獣にレールガンを連射して進んでいく。微妙にカーブしながら、船団から付かず離れずの位置で船団の左を守っている。


「あれはウエリントンの戦姫!」

「まだ驚くのは早いぞ!」

 

 下手から、真っ黒な戦機が滑走してきた。

 デイジーが撃ち洩らしたイグナッソスに近寄ると、プラズマソードを一旋する。

 空中高くイグナッソスの首が飛ぶのをスローモーションでも見るように映像が捉えている。

 そこに、アリスが滑走しながらレールガンを使って船団の後ろに迫る巨獣を倒す姿が映し出された。


「戦姫が3機……。冗談でしょう。まさか、そんな」

「この画像は、既に母国に送っております。エルトニア国王はヴィオラ騎士団領を承認すると言っております」

「我が国も同様。我が国の場合はもう少し、領地を増やしてやったらどうかと言っておりましたぞ」

 2人は、ウエリントン王国とは別の2つの王国の特使なんだろう。


「それも、少しは考えねばなるまい。では2カ国とも、リオを公爵として、領地を持たせることに依存はないという事で良いな」

 国王言葉に先程の2人が大きく頷いた。


「ウエリントンに置きたい気持ちは山々だが、他の王国を思えば、これが最善と考えた。3王国の了承が得られれば、万が一の国難にもヴィオラ騎士団を頼る事が出来よう」

「3機で戦機100機の働きが出来ましょう。この映像をもう少し早く見る事ができれば我が国もあのような被害を出さずに済んだものを……」


「スコーピオの襲来時には、間に合っていなかったようだ。あのビームサーベルの戦機を発掘して一月にも満たぬと聞いたぞ。さて、次ぎの映像を見ようではないか。これは皆も賭けをしていたはずだ。儲けた者はリオ殿に酒を注ぐ位は出来よう」


 そして、昼の試合がスクリーンに映し出された。

 皆が食入るようにその画像を見詰めている。一体誰が儲けたんだ?

 ちょっと気になる国王の言葉だったな。

 


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