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047 裏技を使ってでも勝てと?


 リビングのソファーで寝ていたところをフレイヤに起こされた。

 カテリナさんを起こして、3人で朝風呂を楽しんでいたら、ドミニク達が乱入してきた。

 それでも、このジャグジーには余裕がある。

 朝食前に彼女達はメイクアップを始め、俺はバルコニーの椅子に座ってのんびりとタバコを楽しむ。

 

 潮風が心地よいな。

 試合は1200時と言ってたけど、午前中は皆で近所の珊瑚礁を廻ろうかな。

 朝食時にパンを貰ってくれば餌に群がる魚が楽しめそうだ。


「リオ、出掛けるよ!」

 フレイヤの元気な声に俺は腰を上げると、リビングに入っていった。


 昨日と違うビキニにTシャツだ。俺にもお揃いのTシャツを渡してくれたので、その場で着替えると、皆と一緒にコテージを後にする。

 

 朝食は大きなテーブルに個人ごとに用意されている。

 パンは焼き立てのようだ。そのパンに焼肉と野菜が挟んである。

 ジュースと南国特有のフルーツは食べ放題ってことでテーブルのカゴに山盛りになって切り分けられている。


「午前中は何をするのじゃ?」

「魚が沢山いるので、これでもっと集めようかと……」

 手に持ったパンを王女様に見せると、にこりとほほ笑んでくれた。

「餌で集めるのじゃな。我等も参加するぞ! 30分後にコテージを訪ねるのじゃ!」

 王女様はそう言って従兄弟達の中に入っていった。


 ワイワイやってるところを見ると、全員参加ってことだろうな。

 俺達の食事を眺めていたネコ族のお姉さんを手招きして呼び寄せる。


「何かにゃ?」

「皆の海中での写真を取りたいんだけど。それと、このパンを少し分けてくれないかな。魚を集めたいんだ」

「分ったにゃ。ちゃんと届けるにゃ。さっきの話では30分後にゃ。その前に持って行くにゃ」


 俺達の会話を聞いていたみたいだな。お姉さんはそう言い残して、ホールを出て行った。機材を探しに行ったのかな?


 朝食を終えると、コテージで準備を始める。

 マスクにシュノーケル、マリンシューズを履いてフィンは海に入る時で良いだろう。


 準備ができたところで、コーヒーを飲みながら待っていると、王女様が従兄弟達と現れた。

 セパレートだから大人しいな。うちの連中もこんな水着が良いと思うんだけどね。

 

「こっちの方が深そうじゃ。リオは泳げるのか?」

「2、3分は潜っていられますよ」

 そう答えると少年達を含め『ほう!』って感嘆の声を漏らす。

「お待たせにゃ!」


 聞き覚えのある声に後ろを振り返ると、フインをペタペタと鳴らしながらネコ族のお姉さんがやって来た。

 ビニル袋に入ったパンと本格的な水中カメラを持ってる。そして額のマスクとシュノーケル……、お姉さんが撮るつもりのようだ。


 の後ろからやって来たのは、御后様方だな。皆ビキニだが、そんなに過激ではない。カテリナさんもこれぐらいなら良いんだけどね。

 そんな中にあの娘さんが混じっていた。少し若者向けの水着だが、確か目が見えなかったんだよな。

 こんな綺麗な場所なのに、ちょっと可哀相に思えてきた。

 

 カテリナさんは御后様達とバルコニーのテーブルセットに座って話を始めたようだ。

 傘もあるから涼しげだな。


「さて、準備は出来たのじゃ。先に行っておるぞ!」

 そう言ったかと思ったら、王女様と従兄弟達が次々とバルコニーから海に飛び込んでいく。

 

「待ってにゃ!」

 ネコ族のお姉さんも飛び込んでいく。

 フレイヤ達もそれに続く。

 

 部屋に戻ってアームフロートを持ってくると、カテリナさん達の所に言った。

 娘さんの所に行くと、やはり話には参加出来ないから下を向いている。


「どうです、俺達と魚と遊びませんか?」

 俺の言葉に、娘さんは隣の御后様の方に顔を向ける。

 

「エメラルダ、昨夜貴方を助けてくれた殿方よ。ローザから聞いたでしょう。もう1人の戦姫を駆る騎士、リオ様だったわね」

 御后様はそう言って俺に微笑んだ。

 

「皆も海に入ったのね。リオ、頼めるかしら?」

「大丈夫です。アームフロートがあれば沈む事はありません」

「そうだったわね」

 そう言って、カテリナさんは御后様を見て頷いた。


「お願い出来るかしら? 確かに私達の話は退屈でしょうしね。エミー、妹のローザ達と楽しんできなさい」

「でも……」

「目が見えずとも、海は感じられます。体で感じる事も必要ですよ」

 御后様の言葉に娘さんが頷く。


「でも、私は……」

「これを、付けてください。首から上が海面に出ます。何かあれば直ぐに此処にお送りします」

 娘さんを立たせると腕にアームフロートを付ける。

 自分の足にフィンを付けてマスクを付けると、娘さんをお姫様抱っこで抱き上げた。

 「あぁ……」って言ってるけど気にしない。


「それじゃあ、お預かりします」

「気を付けてね」


 手を振るカテリナさん達に小さく頷くと、バルコニーの端まで歩いて行く。

 

「飛び降りるぞ!……ちょっと息を止めてください」

 下の海に向かって怒鳴ると、娘さんに優しく声を掛けると、そのまま海に飛び降りた。

 バシャン! 水音を立てて1mほど潜ったが、直ぐに海面に浮かび上がる。

 

「はい、もう息が出来ますよ」

 そっと抱いていた手を緩める。

 手を広げてこれ以上沈まない事を確認しているみたいだが、はあ、はあと荒い息をしてる。海に入ったのが初めてだからな。

 

「エミー姉様も来たのじゃな。皆で遊べるぞ。これを手に持つと魚がやって来るのじゃ!」


 どちらも王女様なんだよな。紛らわしいから名前で呼ぶか……。

 ローザ様が近寄って、姉さんにパンの切れ端を渡した。

 言われた通りに海中で、それをひらひらとやっている。たちまち、魚が群れで集まりだした。

 そんな魚達の感触が気持ちよいのか、顔がほころんできたぞ。


「きゃ!」

「あはは……。姉様、魚に齧られたのじゃ。我も最初は驚いたが、傷等付いておらぬ」

 そう言って、姉さんに抱きついている。

 仲の良い姉妹だったんだな。ずっと、中継点にいたから寂しかったに違いない。


「そうね。ローザの言うとおりね」

 今度は2人で餌付けを始めた。

「ここは我に任せて、潜ってきたらどうじゃ。水槽を逆に見ているようで面白いぞ」

「では、しばらくお願いします」


 2人に告げたところで、いきなりその場から潜っていく。

 水深は昨日より深く感じる。満潮時刻なのだろうか?


 そんな水底でフレイヤ達が何かを取ろうとしている。寄ってみると、大きな海老が岩の奥に隠れているのが見えた。

 海老だって、フレイヤ達に掴まったら夕食のおかずになるのが、彼女達の振り撒く殺気で分かるんだろうな。


 そこから離れると、泳ぎの出来るローザ様の従兄弟達が、大きな魚を遠巻きに取り囲んでいる。

 あれを捕まえようというのだろうか? ちょっと無理な気がするな。


 そんな、皆の光景をネコ族のお姉さんが撮影している。綺麗に取れたら、後で貰っておこう。

 水面に浮上して周囲を見回す。


 相変わらず、2人の姉妹は魚を相手に楽しんでいる。

 2人ともアームフロートを着けているから沈む事はないな。


「何を見てるの?」

「あの姉妹さ。結構勝気な王女様だと思ってたけど、寂しかっただけみたいだな」

「そうね。やはり歳相応なんでしょうね。でも、姉さんの方は目が見えないんでしょう。王都を離れられないし。やはり、王女様は姉さんの所にいたほうが良いのかもね」


 フレイヤも、仲良く遊んでいる姉妹を見てそう呟いた。

『ちゃんと、バルコニーまで連れて帰るのよ』って俺に言うと、ドミニク達のところに戻っていく。まだあの海老を諦めないのかな?

 ひとしきり姉妹で楽しんだようだ。そんな2人の様子を見に近付いて行く。


「良いところに来たのじゃ。エミー姉様は少し疲れたようじゃ。姉様と海で泳げるとは考えもしなかった。礼を言うぞ」

「すみません。私をベランダに戻して頂けませんか?」

「そうしますか。海は結構疲れます。でも、楽しかったでしょ」

 

 俺の問いに頷いたところで、手を引いて階段まで泳いでいく。

 階段に足が着いたところで、ネリー様をお姫様抱っこで抱き上げると、ゆっくりと階段を上っていく。


 バルコニーに着いたところで、そのままリビングに入りシャワー室に向かう。温めのシャワーで海水を洗い流したところでタオルを渡した。

 タオルで髪を拭いているエミー様を御后様の元へと連れ帰る。


「どうでした?」

「ローザと一緒に魚と戯れてきました。また一緒に行ってくださいますか?」

 俺の立った位置と微妙にずれた場所に顔を向けて訪ねてきた。

 

「ええ、今度は波のある場所に行きましょう。違った遊びが出来ますよ」

 俺の言葉に笑みを浮かべる。


「リオ殿、礼を言います」

「当たり前の事じゃないですか。それでは」


 そう言って、少し離れた場所で、タバコを楽しむ。

 何時のまにか、2人のネコ族のお姉さんが控えていた。そんなお姉さんが俺にコーヒーを運んでくれた。

 

 やはり海から出たときには甘いコーヒーだよな。

 そんな俺をカテリナさんが呼んでいる。

 何だろうと、近付いて行くと隣の席に座るように手で椅子をぽんぽんと叩く。

 コーヒーカップを持って、カテリナさんの所まで歩くとその席に座った。


「もう、1200時まで1時間も無いわ。ゆっくり休みなさい。ところで、自信の程は? こちらの御后様方達が賭けをしているそうなの。是非、貴方の事が知りたいと言っているのよ」

「賭けは、ちょっと申し訳ありませんというしかありません。向うは本職ですし、俺の方は素人ですから」


 そんな俺の答えに全員が厳しい目で俺を見る。

 そしてカテリナさんが俺の手を両手でグイっと握りつけた。


「リオ君。絶対に勝ちなさい。どんな卑怯な手を使っても、裏技を使っても構わないわ。そして、絶対に勝つのよ!」

 俺の顔を睨みつけて怒鳴るように言った。


 それは、もう……ハイ! としか返事が出来ない状態だ。出なければ簀巻きにされて海に投げ込まれかねない雰囲気だぞ。


「頑張ります!」

 と答えたら、全員の顔が穏やかになる。

 ひょっとして、大穴狙いで財布の中身を全部賭けたんじゃないだろうな。

 

「少し、作戦を考えて見ます」

 そう言って、リビングに入ったけれど。さて、どうしようか?


「アリス。聞こえるか?」

『問題ありません。ちゃんと聞こえます』


「ちょっと、問題が出て来た。手段は問わないから、長剣の達人に勝てる方法があるか? 一応、俺の身長程の棒を用意してもらってる。相手より長ければそれだけ有利だからな」

『手段を問わないと言いましたね。簡単な方法がありますよ』


 そんな前置きをして、その方法を教えてくれた。

 何と、俺の考える動きをムサシの電脳に送って、ムサシの身体制御信号をアリスを通して俺を制御するというのだ。

 

「俺の思うがままに自分の体が動くと?」

『生身では出来ませんがマスターなら可能です。追従動作を上げるために、マスターの擬態を部分的に解放します。他の者が見れば神技に近い動きが出来ますよ』


 有機体の反射神経を遥かに超えた動きとなれば、神技にも見えるだろう。

 手段、方法を問わないし、卑怯な手を使っても良いと言っていたな。かなりの裏技だけど、後で問題になったらカテリナさんに何とかして貰おう。

 


 


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