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286 パンドラはドミニクの妹?


 俺達が中継点の戻ってきた翌日の夜に、ザクレムさん達は休暇を過ごしに王都へ高速艇で出掛けて行った。

 10日間の休暇を過ごし、帰還報告をしてくれたザクレムさんは始終笑みを浮かべたままだった。

 理由を聞いてみると、幼馴染と婚約したらしい。


「私もこの歳ですから、妻に向かえることにしました。才女とはいえませんが私には過ぎた妻になるのではと思っています」

「王宮の総務部門で働いていたなら、俺としても歓迎したいね。2人で協力して中継点の発展に努めて欲しい」


 これで、さらに人材が整ったということになるのだろう。

 ベルッド爺さんには第2桟橋に代官邸を作って欲しいと伝えてあるから、ベルッド爺さんが良い職人を探してくれるに違いない。


 書類整理と中継点の要人との会議で、2か月が直ぐに過ぎてしまう。

 次は小惑星帯での鉱石採掘だな。


 リバイアサンでの出発が近づいて来た時だ。

 夕食後に皆でワインを楽しんでいると、ドミニクが口を開いた。


「しばらく手が離せないと母さんから連絡があったわ。何をしてるのかは想像できるけど、私達だけでだいじょうぶよね」

「何とかなるんじゃないかな。すでに2度の鉱石採掘を行っているし、リバイアサンのコントロールはドロシー任せでも問題ないとカテリナさんが言ってたよ」


 いろんなことに手を伸ばし過ぎた感じもするな。とはいえ、それが俺達の今の地位を作ったともいえる。

 3王国の協力も期待できそうだから、小惑星帯へ拠点を設けることが出来たら、それを他の騎士団にも開放する方法も考えねばならないだろう。

 採掘量が増えれば航路管理局との運搬船の運行も調整しなければならない。

 いつまでたっても仕事は増えるだけみたいだ。


 数日後にリバイアサンで小惑星帯に向かう。

 1か月近い鉱石採掘を行い、ヴィオランテで休養を取り中継点で2か月を過ごす……。

 こんな生活が1年以上繰り返された。

 その間の主な出来事は、ローザが結婚したこと。ザクレム代官の公邸が完成し、ザクレムさんが綺麗な妻と共に公邸で暮らし始めたことだ。

 マリアンが急にお相手を探し始めたみたいだけど、こればっかりは縁もあるからね。

 婚活が上手く行かない場合は、ヒルダ様に相談してあげようかな。


「あのローザ様がねぇ……」

「結婚の挨拶にやってきた時の様子を振り返ってフレイヤが呆れていた。


「仲が良いのは良いことじゃないか? シリル達のお相手も王国では色々と考えてるとは思うんだけどねぇ」

 

 王宮の思惑よりも、本人達の意思を尊重して欲しいところだけど、王女や貴族の子供ともなると、そうもいかないのかな?

 王侯貴族の衣食住は全て税金だ。それを享受してきた報いなのかもしれないけどね。


「とりあえず、平和よね。中継点に近付く巨獣はメイデンさんがガリナムで狩り続けているから、周囲300kmに巨獣は1匹もいないわ」

「見付けたら、ゼロを使わずに突撃してるからねぇ。本当に戦闘狂なんだよなぁ」


 案外ローザもメイデンさん夫婦と似た夫婦になるかもしれないな。

 ローザも巨獣を見付けたら、シリル達を率いて飛んでいくらしいからね。


「ただいま!」

 

 大きなカバンを抱えてかえて帰ってきたドロシーが、俺達にペコリと頭を下げた。

 とことことカテリナさんの部屋に向かって歩いて行く。

 ドロシーの部屋はカテリナさんの部屋兼用なんだよね。


「ちゃんと勉強してきたのかしら?」

「勉強は必要ないよ。友達を作るように言ってあるんだけど、どんな学校生活を送ってるんだろうね」


 リバイアサンの大規模な修復は1年ほどかかるらしい。安全を重視する以上、とことん点検をしてくれとベルッド爺さんには伝えてある。

 その間、ドロシーを学校に行かせてみようということになって、ドロシーは毎日学校に通っている。

 学園長はドロシーの秘密を知っているから、見た目が同じ学年のクラスに転入させてくれた。

 ちゃんとお小遣いをフレイヤが渡してたから、たまに商会の運営する店で友人達と道草をくっているようだ。


「どうだった? 誰かにいじめられた?」

「そんなことは無かった。ジルちゃんとメイちゃんに宿題を教えて、帰る途中でお店に寄ってきたの」


 ふんふんと頷きながらドロシーと会話しているフレイヤは、世話好きなお母さんという感じだな。

 ちゃんと友人ができたのには驚いたけど、それだけ感情が豊かになってきたからに違いない。

 ドロシーの妹達も、学園に通わせた方が良いのかもしれないな。


 暇になってしまったので、たまに白鯨やカンザスにも乗り込むんだけど、何となくお客という感じなんだよなぁ。

 結局、中継点のパレスで過ごすことが多くなってしまった。

 そんなことだから、フェダーン様に託されった防衛衛星や戦闘艦の設計をアリス監修のもとに行っていたのだが、詳細設計は俺には出来ないから基本設計で俺の仕事は終了になる。

 後はアリスが施工設計まで行ってくれるだろう。


 だらだらした生活が半年以上続いた時だった。

 突然、カテリナさんがパレスのリビングに現れた。


 いつものことだからあまり驚くことは無いけど、少し変化ができたことが嬉しいのだろう。エミー達が席を立って出迎えた時だった。

 なんと、メープルさんがベビーカーを押して入ってきた。


「ドミニク、喜びなさい。貴方の妹、パンドラよ!」

「「エエェ!」」


 リビングに大きな声が響いた。俺も驚いて大声を上げた1人だったけど、どういうことなんだ?

 フレイヤ達がベビーカーから赤ちゃんを抱き上げて、笑みを浮かべながらあやしている。


「さっき私の妹と言ってたけど?」

「正真正銘、ドミニクの妹よ。私が生んだんだから間違ってないわ」


 ドミニクの確認するような問い掛けに、いつの間にか俺の隣に座っていたカテリナさんが自信満々の表情で答えてくれた。


「そうなると、お父さんは?」


 ドミニクの真剣な表情に、カテリナさんは軽く俺に指を向けた……。


「何ですと!!」

「間違いなくリオ君が父親よ。でも、あまり広めたくない話よね」


 そうだろうな。仮にも正妻より先に未亡人をはらませてしまったことになる。


「そういうわけだから、この子もここで暮らすことになるわ。ドロシー、お姉さんなんだから面倒見て頂戴ね」

 

 フレイヤ達の間から、ドロシーが顔を出して頷いてくれた。

 子育ては苦手と言ってたからねぇ……。


「ちょっと待ってください。そうなると、カテリナさんの研究は成功したんですか?」

「自分で最終確認したから、間違いなく完成よ。ライデンで不妊に悩む夫婦にも応用できるからベビーブームがやってきそうね」


 フレイヤの問いに答えたカテリナさんだったが、その言葉に嫁さん連中が赤ちゃんから周りの連中に移った。

 ドロシーが赤ちゃんをフレイヤから受け取ってこっちに退避し始めたから、メープルさんが駆け寄って抱っこしてしまった。

 ちょっと残念そうな顔をしてドロシーが、メープルさんの腕の中の赤ちゃんを眺めてる。

 

「どうしたんでしょう? かなり剣呑な雰囲気なんですけど」

「順番ってことなんでしょうね。これはドミニク達に任せといた方が良いわよ」


「そうします。でも、結局は全員が子持ちになれるんでしょう?」

「賑やかになりそうね。幼児室も作らなくちゃならないわよ。保母さんは……、メープルがいるからだいじょうぶよ」


 そう言えば、メープルさんは孫の世話をしていたと言ってたな。

 俺達の世話だけで大変な気もするけど、俺達に子育てが急にできるとも思えない。メープルさんに少しずつ教わることになりそうだ。


 翌日からドロシーの帰宅が早くなったように思える。

 帰ると直ぐに、メープルさんからパンドラを受け取り、ベビーカーに入れてお散歩に出掛ける。

 散歩と言っても、ヴィオラ騎士団専用桟橋を往復して戻って来るだけらしい。それでも帰ってくるとベビーカーの中でぐっすりとパンドラが眠っているから、案外ドロシーの子守が合ってるのかもしれないな。


「ありがとう。毎日では大変でしょう? たまにはお友達と遊んでくるのよ」

「だいじょうぶ。今日は妹の画像を見せてあげたの。皆、可愛いって言ってくれた」

「それじゃあ、御礼をしないといけないかもしれないわね。明日の帰りは、これで皆とドーナツを食べてらっしゃい」


 カテリナさんがドロシーに銀貨を渡している。

 ドロシーにはフレイヤがお小遣いを上げているんだけど、それだけじゃ足りないかもってことなんだろう。


 次の出産は誰になるのかで、フレイヤ達は熱い議論を戦わせているようだ。

 この時間も露天風呂に全員集合してるんだけど、結論が出るのは何時なんだろう?


「今更ですが、副作用は無かったんですか?」

「今のところは出ていないわ。あるとすればパンドラに現れると思うの。通常の妊娠期間の半分で出産したのよ。人工子宮に移してから急激に育ったわ。

 パンドラはもう少しで歩きそうだけど、出産後3カ月しか経ってないの。細胞の増加率はかなり下がってきたけど、最初の誕生日には2歳児を越えるかもしれないわね」

「早熟ということになるんでしょうか?」

「それに近いということでしょうね。でも、その内に落ち着くと思うわ。他の娘と会わらずに暮らせるはずよ」


 10日間程、フレイヤ達の対立が続いて、パレスの雰囲気がかなり怪しくなってきたところで、カテリナさんがフレイヤ達を呼び出して調整をしたようだ。

 カテリナさんの協力がない限り子供を望めない事実がある以上、フレイヤ達も従う外になかったみたいだな。

 どうやら、俺と体を重ねた順番ということになるらしい。

 フレイヤ達に、体調をモニタリングするブレスレットを渡したそうだが、レイドラは受け取らなかったようだ。

 龍神族の記憶を自分の子に託すことに耐えられないと話してくれたそうだ。

 ライデン世界の龍神族は世捨て人のような暮らしをして細々と生活している。

 自分の子供も自意識を持てば、そんな所属に絶望を持つかもしれないと考えたんだろうな。

 龍神族はライデン世界で滅びゆく種族になりそうだ。


「現状は黒字なんだから、この際まとめて子供を作れば良いわ。でも、リオ君の血を引く子供になるんだから将来は領地相続の問題が出てくるはず。子供は1人で良いでしょう?」

「それでも、7人ですよ。将来ヴィオラ騎士団が分裂しないように考えないといけませんね」


 団長であるドミニクの子が騎士団を継承するとしても、俺の持つ領地、資産が問題だな。それに生まれてくる子が、男子か女子かも問題だ。

 3王国とも長男が王国を継承する。騎士団と国王で対立するようなことがあってはならないからね。


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