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240 海賊の動きが気になる


 昨夜はフレイヤと一緒にベッドに入ったはずなんだが、目が覚めるとローラとオデットが俺に体を寄せていた。

 一体いつ変わったんだろう?

 起きようとしたが、2人の腕が俺をしっかりホールドしている。このまましばらく過ごすことになりそうだな。

 それでも、0800の時刻に合わせたアンチックな目覚まし時計の音で2人が目を覚ます。俺に笑みを浮かべて、そのままプライベートジャグジーに連行されてしまった。

 今日は1日のんびりできそうだから、朝飯は我慢することになりそうだな。

 2人に手を伸ばしてゆっくりとジャグジーの中で体を合わせる。


「相変わらず朝が遅いにゃ。これで我慢して昼食をしっかり食べるにゃ」

 

 どうにか衣服を整えてリビングに顔を出した時には1100時を過ぎていたからねぇ。メープルさんが困った人達だと言いたげな表情で、俺達に簡単なサンドイッチとコーヒーを出してくれた。


 そんな俺達の前に、マグカップを持ったカテリナさんが座った。

 笑みを浮かべているのは、遅くなった理由が分かったに違いない。


「アリスから連絡を受けたわ。ヨルムンガンドにシグルーン……、良い名前ね。地球からもたらされた古文書にその名前がヒットしたとガネーシャが言ってたわ」

「リオ様は古文書にも精通しているのですか?」


 感心した表情のローラに、カテリナさんが頷いている。


「アリスという巨大な図書館もあるんでしょうけど、直ぐに名前を告げたとアリスが教えてくれたわ。リオ君単独の記憶もかなり広いようね」

「まあ、思い付きではあるんですけどね。それよりも、王都の工廟に空きはあるんでしょうか? 隠匿桟橋は次の船を作るために必要でしょうから、少し変わった船というのはここでは無理だと思うんですが」


 俺の言葉に、ニコリと笑みを深めた。

 無理なんて言葉に反応するんだから困った人だな。


「あら、だいじょうぶよ。リバイアサンの点検と部分改造は船体内だから、上空でもできるの。リオ君が変わった船というからには食指が動くのよねぇ」


 仮想スクリーンを広げて、簡単な説明を始めることにした。

 基本構造はパンジーになるけど、大きさは駆逐艦並になる。武装は88mm連装砲塔が1基だけだけど、3機のゼロを搭載する。


「色物は良くないわよ。狙いは何かしら?」

「広域偵察艦です。巡航速度は時速100km以上になるのではないかと。地上すれすれに飛びますから、あの大きさのリフティングボディでかなりの揚力を得られるはずです」


 俺の言葉に、うんうんと頷いている。

 理論的には可能だと思っているのだろうか?


「狙いは海賊ということになるのかしら? これなら、広域監視も可能でしょうし、強襲も出来そうね。爆装もするんでしょう?」

「できれば貫通型の500kg爆弾を3つは欲しいですね。振動センサをバラ撒いて場所を特定できればこっちのものです」


「原石の売り上げを一部を回せば何とかなりそうね。でも、誰が使うの?」

「テンペル騎士団に貸与しようかと。あのコンテナターミナルなら、活動の機会があるはずです」

「そうね。ドミニクへの説得は私がしてみるわ」


 これで、テンペル騎士団も少しは楽になるんじゃないかな。

 出来れば2隻欲しいところだけど、俺達の好意なら1隻で十分だろう。せっかくコンテナターミナルを作って貰ったんだから、それぐらいは手助けしないと3つの王国から文句が出そうだ。


「他の騎士団に船を譲られるのですか?」

「あの場所に作って貰った経緯もあるからね。黙って見ているわけにはいかないよ」


 高速艇とは異なるけど、似たような構造になるのかもしれない。簡単な見積もりでさえ100億Dとなったぐらいだ。小惑星帯での原石探しを次も頑張ることになりそうだな。


「ローラ達の方は上手く行ってるの?」

「報告書を読んでいるところです。学園長との会見が明日ですから、それまでには課題の整理もしたいと思っています」


「原石探しは俺達に必要ですね。運行管理局と宝石ギルドも好意的ですから、次もたくさん集めませんと……」

「他の宝石もと、宝石ギルドが言っていたそうよ。2波長で探すことになりそうね。それも次の航海には間に合うと思うわ」


 すでに考えていたみたいだ。どんな宝石なのかな?

 

「私達には単なる小石なんだけど、欲しい人はいるみたいね。ライデンの河原で見つけるのは他の騎士団に任せて、私達は小惑星帯で採掘すれば良いわ。他の連中に邪魔されないのが一番よね」

「問題があるとすれば、運行管理局の過激派と軍部でしょうね。もっとも向こうの半重力推進機関は大出力を出せませんけど、燃料さえあれば俺達に近付くことは可能ですからね」


 大出力のイオンエンジンが連中の移動手段の筈だ。半重力推進機関はそのアシスト程度だろうが、それだけでも少しは燃料を節約できるに違いない。


「武装は88mmだけですよね?」

「パンジーには滑空砲を積んでるわよ。それに、無反動砲で打ち出すノイマン効果弾もあるわ」

「リバイアサンに搭載してなければ問題ないでしょう。アリスもいますからね」


 そう言って顔を見合わせると互いに笑みを浮かべる。

 カテリナさんがそれで満足するわけはないし、アリスだってレールガン以外にも武装がありそうな気がするんだよなぁ。


 次の航海は一波乱ありそうな気もするけど、とりあえずはライデンの海賊を何とかしなくちゃならない。


 夕食後に俺の部屋に現れたのは、ドミニクとクリスだった。

 3つの艦隊の調整をしていたはずだが、終わったんだろうか?


「何日掛かるか分からないから、今夜は私達とね」

「優秀な艦長達で助かるわ。マンガン団塊の採掘はヴィオラだけだったころと比べて3倍以上よ」

 

 俺達の給与も3倍になると良いんだけど、団員の数も増えたし現役引退組にも手伝って貰っているからねぇ。以前の3割増しとは教えてくれたけど、それで全員が満足してるんだろうか?


「伝手を頼って、入団希望者が殺到しているらしいけど、こればかりは試験というわけにもいかないわ」

「新型獣機の獣騎士が足りないみたいね。何とかしたいんだけど……」


 要するに、人員不足は自覚しているけど、誰でも良いというわけにはいかないということなんだろうな。


「能力的には、問題ないんじゃないか? 心配なのは彼らの背後関係があるかどうかだと思う。それなら、トリスタンさんのギルドに選抜を頼むのも手だと思うんだけどね」

「素行歴ということ? 場合によっては私達を敵視するところからの工作員ということもあり得る話ね。ドミニク!」

「ええ、王都に行ってみましょう。原石のオークションでお世話になってるから、向こうも話し合いには応じてくれるはずよ」


 どんな試験が行われるか……。一応、世間的な試験は行うだろうが、その裏で王都の治安部隊のデーターベースを照合してくれるはずだ。

 俺達が落とすのではなく、王都で名の知れたギルドだからねぇ。誰も文句を言えないんじゃないかな。


「難しい話は、これで終わり!」

「しばらくぶりだから、たっぷり楽しまなくちゃ!」


 突然2人が猛禽類のように、俺に飛びついてきた。反動でベットに倒されてしまったけど、2人とも俺の顔を笑みを浮かべて見てるんだよな。

 オオカミの襲われた野ウサギの気分は、たぶん今の俺の心情に近いんじゃないか!


 ぐっすりと眠っている2人をベットに残して、バスローブを羽織るとリビングに向かった。

 なぜか眠れないんだよな。誰もいないカウンターの向こう側に回って、ビール缶を冷蔵庫から取り出しソファーに腰を下ろした。

 タバコに火を点けると、仮想スクリーンを開いて中継点のニュースを眺める。


 いつの間にか、ヴィオラ騎士団のHPに中継点のニュースまでが掲載されるようになっている。

 ネコ族のお姉さん達のボランティアで運営されているHPらしいが、どうやらこれが公式のHPだと世間には認識されているらしい。


 内容は陳腐なものが多いけれど、閲覧回数は10桁を越えてるんじゃないか?

 マリアンに監修を依頼した方が良さそうだ。俺の施政方針まで書かれてるんだからね。そもそも施政方針なんて誰にも言った覚えはないんだが、もっともらしい事が書かれてるから困ったものだ。


 ぶつぶつと独り言を言いながらニュース欄を覗いていると、海賊の襲撃に関する記事が目に付いた。

 やはり低緯度地帯での襲撃だが、生存者の話として『逃走先に別の海賊がいた』というのが気に掛かる。

 そもそも、海賊は単独行動を基本としている。その理由をカテリナさんに質問したら、獲物の分配で争いが起きるからだと教えてくれた。

 偶然出ないなら、海賊を統括する存在がいることになる。

 ナルビク王国の腐った連中と同じような存在がいるのだろうか?

 

「あら? 起きてたの」

「ええ、なぜか目が冴えてしまって。ドミニク達は熟睡してるんですけどね」

「異常ではないわよ。これも売れるかもね」


 ん? ひょっとして……。


「本当に、リオ君には感謝しきれないわ。なら、サービスしないとね」

 

 オオカミが野ウサギを襲う様にゆっくりと俺に近づいてきた。

 まったく親子だよな。完全に肉食系女子そのものじゃないか!


 俺の隣に座ると、俺に覆いかぶさるようにして白衣を開いた。


「ところで、1つ疑問があるんですけど?」

「あら、何かしら」


 丸裸で俺に両腕を回してるんだけど、カテリナさんは疑問に答えるのが大好きなんだよな。


「海賊は纏まらないと以前教えて貰ったんですが、先ほど見たHPの記事ではまるで同盟を組んでいるような話になってたんです」

「簡単な話ね。同盟ではなく、巨大化したのよ。ヴィオラ騎士団も4つの艦隊を持っているでしょう? 同じ海賊が複数の艦隊を持てば海賊内の争いは起こらないわ」


 そういうことか……。

 必ずしも王国内の腐った連中が糸を引かずとも可能になる。

 だとしたら……、その対策は……。

 カテリナさんが俺を抱く腕に力が入る。このまましばらくはカテリナさんと過ごすことになりそうだ。

 


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