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237 王族達の世代交代


「3組とも、一晩王都でお泊りのようね。それだけリオ君を独占できるんだけど……。設計も進めないと話にならないわ」

「小惑星帯に設ける拠点についてはアリスに任せています。ラグランジュ地点に設ける拠点についてはカテリナさんの担当ですよね?」


 ウフフと笑みを浮かべて夕食を食べてるんだけど、互いにバスローブ姿なんだよな。急にフレイヤ達が戻ってきたらなんて言い訳すれば良いんだろう?


「拠点はそれで良いわ。シリンダーの搬送についてはリオ君のアイデアを使いましょう。少し前時代的だから、運行管理局も胸を撫でおろすんじゃないかしら。問題は、ライデンと私が担当する拠点とを往復するシャトルなんだけど……。こんな形はどうかしら?」


 俺達の横に仮想スクリーンが現れて、ラフスケッチが映し出された。

 これって、パンジーじゃないのか?

 いくら何でも、これで資材を運ぶのは時間が掛かり過ぎる。


「驚いてるみたいね。パンジーに似ているけど、この艦に合わせてパンジーを映すと、こうなるのよ」


 画像を見た瞬間、カテリナさんに顔を向けた。カテリナさんがいたずらが成功した様な笑みを浮かべているから、俺の顔はさぞかし驚いた顔をしてるんだろうな。


「10倍じゃないですか! これなら500tシリンダーを内蔵できそうですね」

「2個搭載できるわよ。そうそう、シリンダーは色々と使えるわね。緊急脱出用の大型カプセルとしても使用できそうよ」


 それは早めに作るべきだろうな。

 宇宙空間で事故を起こしても、すぐに救援に向かうことは困難だろう。パンジー型の地上との往復シャトルは半分の大きさのものが、もう1つ必要なんじゃないか?


「カテリナさんに任せたいですね。とはいえ、設計計算は……」

「ドロシーにお願いするつもりよ。アリスの能力には遥かに及ばないまでも、アリスに次ぐ電脳体でもあるわ」


 ドロシーが少し気の毒になってきたな。かなり酷使されそうな感じだから、アリスに手伝う様にお願いしておこう。


「資金は原石を使うことで何とかなると思いますが、その辺りの交渉がどうなることやら」

「かなりの値段になると思うわ。私達からの購入に宝石ギルドは税金を必要としなくとも、ウエリントン王国内で運行管理局と取引をすれば王族も喜ぶんじゃないかしら。贅沢税は20%近いのよ」


 たぶん3王国で分配するんだろうな。ウエリントン王国だけに利があるとなれば、他の王国とのなか互いの原因になりかねない。


「それで明日も調整するんでしょうね。どんな結果を持って帰るのか楽しみです」

「そうね。それじゃあ、出掛けましょうか」


 食事を終えた俺達はプライベートビーチへと向かう。

 砂浜の大きさは100mにも満たないけど、専用のビーチだ。ここなら誰も邪魔されない。

                 ・

                 ・

                 ・

 フレイヤ達が帰って来たのは、翌日の夕刻だった。

 まだまだ帰れないのかと心配してた時だから、帰島の連絡を受けた時は心底ほっとした気分だった。


「宝石ギルドは大騒ぎだったわよ。私達と一緒に出掛けたギルド員の報告も、最初は信用してなかったんだけど、現物を見せたら蜂の巣を突いたような騒ぎになってしまったの」

「ギルド側の提示した鑑定額は、ヴィオラ騎士団が前回行ったオークションでの最高額を重量比で支払うということでした。サファイヤの値段は150億Dデルになります。こちらの想定した額は100億前後でしたから、口座への入金確認を持って譲ってきました」


 ソファーでワインを飲みながらの報告だけど、フレイヤとレイドラの表情は嬉しそうだ。きちんと交渉が出来たことに満足してるのだろう。


「ん? ……今度は、ドミニク達ね。運送ギルドに向かったのよね?」

「彼らの領土に足を踏み入れてしまいましたからね。とはいえ、彼等にはできない運送ですから、目を瞑ることになると思っていたんですが」


 少しは上納しろと言うことかな?

 西に騎士団が流れているから、それなりに潤っていると思ってたんだけどなぁ。


 1時間も経たずに、疲れた表情のドミニクとクリスが部屋に入ってきた。

 報告を始めたドミニク達に、フレイヤがワインのグラスを運んでくる。


「私達にギルド員になってくれと言うのよ。それだけで半日粘るんだから、交渉までが長かったわ」


 そんな前置きをして、交渉結果を披露してくれた。

 ギルドへの加入を勧められたのは、やはり上納金が目当てのようだ。

 最終的には、名誉ギルド員ということになったらしい。名誉かどうかは別として、500tシリンダーを運行管理局に送る度に、1万Dということで握手となったようだ。


「もっと要求してくるかと思ってたんから、上々だと思うよ。それに運送ギルドに少しは融通が利くんじゃないかな?」

「できればタダにしたかったんだけど……」


 タダより高いものはないということだからなぁ。目を瞑るから……、なんて依頼が舞い込んできそうで怖くなる。

 

 最後のエリー達が戻ってきたのは、ほとんど深夜に近いころだった。

 たぶん、ヒルダ様が引き留めたんじゃないかな?


「税の話をしたら驚いてましたわ。父様以外に、逗留していた2つの王国のお妃様まで加わる会議になりました」

「俺達だけが儲かるようでは、信頼関係を築けないからね。それで提案はしてくれたかな?」


 断るのは見えていた。そこを無理やり20%の税を納める。3王国で分配という名目だったんだが。


「最後には納得してくれました。半分を3王国の民生事業に、残り半分を西への進出に必要な財源とするようです。どうやら3王国でその財源について話し合っていたようです」


 聡明なヒルダ様達だからなぁ。維持費の問題は当初から課題としていたに違いない。


「とはいえ、最初の原石は父様が購入してくれるということになって、その辞退に半日も掛かりましたわ」

「他の2王国にも見つけるたびに贈呈すれば問題は無いだろう。とはいえ、ウエリントン国王陛下としては、矜持にも関わりそうだな」


「それで長引いたようなものです。この証書を預かりました。直径およそ120km。かつて3王国が領地を互いに主張し、現在も主権が曖昧な島だったそうですが、これを譲っていただきました。他の王国も了承しておりますから、私達の新たな領土になります」


 このプライベートアイランドの100倍もあるんじゃないか!

 位置的にはナルビク王国の南方になるんだけど、近くに島が無いから絶海の孤島という感じだ。

 大物釣りが大好きなアレクの老後が決まったような場所だけど、本当に貰って良いのだろうか?


「困ってたみたいだから丁度良い機会だったんじゃないかしら? 場所が場所だけに使い道は無さそうだけど、リバイアサンを始めとする大型艦の拠点になるかもしれないわよ」

「かなり希望が入ってますね。でも、それで名目ができるなら貰っておきましょう」


 開発をどうするかだな。

 しばらくはこのまま、ということになるんだろうね。


 ワインを飲み終えたところで、お開きになる。

 今夜は、フレイヤとエミーが一緒だ。散々カテリナさんと過ごしたからなぁ。俺達に笑みを浮かべてカテリナさんは自室に向かって行った。


 翌朝は、皆で浜で思う存分遊ぶことになった。

 早々と帰って来たメープルさんから、対戦の申し込みを受けたけど、休暇の最後にと言って開放してもらう。

 かなりの使い手だからなぁ。だけど、白兵戦の訓練ならメープルさんが最適なんだろうけどね。


 明日は中継点に帰ろうという日の昼下がり、俺を訪ねてきたのはヒルダ様と数人のお妃様だった。フェダーン様も一緒だから、スレイプニルのその後は? ということかな。


「それにしても、エミー達が包を解いた時は誰もが自分の目を疑いましたわ」

「他の王国にも見つけ次第、順次届けますよ。大きさが多少ばらつくと思いますが、そこはあらかじめご了承願います」


「とんでもないこと。あの大きさは国宝と言えるでしょうね。王冠用にとリオ殿からの伝言に国王陛下が嬉しそうに頷いておりました」


 満足してくれたなら、それで十分だ。

 すでに税の使い道も決めたようだから、俺達は宝石ギルドに運ぶだけで良い。というか、一緒に乗り込んでいる宝石ギルドの連中がライデンに到着する都度運んでいくんじゃないかな。


「ここにいらしたのは、御礼だけとも思えませんが?」

「機動要塞の組み立て状況は順調ですよ。ガネーシャ様が度々工廟に足を運んでくれます。次に来る時には、いよいよブラックボックスを持ち込むそうです」

「スレイプニルも8割方できている。さすがにナイトと比べると存在感がある。機動要塞の運用開始には訓練も終えることができるだろう」


 フェダーン様とヒルダ様が搭乗するんだろうけど……、その時の王都でのヒルダ様達の役割は誰が担うんだろう?


「ひょっとして今回の来訪目的は?」

「さすがはリオ殿ですね。私の後継となる第一王子キュベロンのお妃の1人、サリーネ王女とフェダーンの後継となるメイシャ王女の紹介をと思いつきましたの」


 ヒルダ様が名前を告げると、ソファーから立ち上がって俺に軽く頭を下げる。思わず俺も立ち上がってぺこぺこと頭を下げるから、他のお妃様が口を押えて笑みを浮かべてるんだよなぁ。


「リオ殿は一国の主なのですよ。国王陛下と同格なのですから、あまり頭を下げるのは……」


 ヒルダ様にやんわりと注意されてしまった。だけど、元々は貧乏な庶民だったからねぇ。そんなに簡単に性格が変わることはないんじゃないかな。


「私達も職務を完全に放棄するわけではない。課題があれば相談に応じるつもりだが、表面上は彼女達が国政に参加することになる。リオ殿にも色々と協力して頂きたい」

「それはもちろんです。どちらかというと俺達の方がお世話頂いた気がしますから、恩返しはしたいですねぇ」


 王族達の世代交代ということになるんだろうな。

 とはいえ、ヒルダ様達だってまだまだ現役の筈なんだけどねぇ。ひょっとして、ヒルダ様達も国王陛下達と一緒に西の荒野で思う存分暴れたいのかな?

 ずっと第二離宮で政務をこなしてきた反動もあるんだろうな。



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