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234 運行管理局の拠点衛星


 惑星ライデンから採掘されたレアメタルは、ライデンの静止衛星軌道に設けられた運行管理局の衛星に集められる。

 地上のマスドライバーからレアメタルを詰め込んだシリンダーを十数枚の電磁網で減速させながら回収するのはそれなりに高度な技術が必要なんだろうな。


『レミーネ様と回線を接続しました』

「仮想スクリーンを開いてくれ。先ずは受け入れてくれるかだけどね」


 30cm四方の小さな仮想スクリーンがコクピットに開いた。レミーネさんがこちらを向いているけど、ちょっと当惑した表情が浮かんでいる。


「しばらくですね。ヴィオラ騎士団の騎士リオですが、小惑星帯の採掘を終了したので受け入れをお願いしたく先行してきた次第です」

「鉱石そのものですか? それとも……」

「租精練を終えています。今後の事も少し相談したく、サンプルを持参したのですが」

「誘導ビーコンを発信しましょう。12.33GHzですが、受信は可能ですか?」


『確認しました。強帯域でのパルス信号ですね。発信位置を特定、いつでも衛星に着艦できます』


「受信できた。発信場所のプラットホームに向かえば良いのかな?」

「お待ちしてます。それでは」


 仮想スクリーンが閉じた。後は移動だけだな。


『マスターの体を戦闘形態に20%ほど移行します。短時間なら船外活動が可能ですし、小銃弾は弾きます。レールガン、レーザー兵器であれば損傷を受けますが、大型兵器は無さそうです』

「念のため、ということか。アリスの方は?」

『マスターと3分間通信が途絶したら、衛星本体を破壊します』


 そんな事態にはならないと思うんだけどねぇ。とはいえ、暗殺には気を付けないといけないだろうな。


「毒物には?」

『ナノマシンが分解します。毒は問題ありませんし、電磁的な脳波への干渉も防止できます』


 ほとんど無敵じゃないのか?

 

「それじゃあ、行ってみるか。ゆっくりと近付いてくれ」


 俺の指示でシリンダーの陰からかなり遠くにアリスが移動した。たぶん近接レーダー監視からギリギリの距離まで移動したんだろう。

 ゆっくりと近付くとはいっても、宇宙空間でのことだから、数分も経たずに大きな球形の運行管理局の衛星が見えてきた。


『ビーコンに乗りました。こちらに向けて2基のレールガンが向けられていますが?』

「弾丸を避けられる?」

『直撃を受けても大丈夫ですよ。機体表面に2段階の重力場を形成しています。減速するどころか弾かれるのではないかと』


 レールガンを持つ以上、それに対抗する手段を持つということなんだろう。それにしても重力が装甲になるとはねぇ……。

 既に、開かれたハッチが見えている。

 数機の戦機が待機しているけど、まさか俺達を高速しようなんて考えていないだろうな。その瞬間に、アリスの反撃が始まるぞ。


「そのままビーコンに乗って、甲板に下りてください。ライデンの五分の一程の重力があります」

「了解した」


 改修用の戦機用の甲板なのかもしれないな。そのまま20m四方で奥行きが100mほどの倉庫のような甲板に入ると、後方でゆっくりとハッチが閉じていく。

 戦機に誰かが搭乗しているようだな。アイドリング状態のようだが動かなければ問題はない。


 アリスが甲板に足を着けると、弱い重力が発生したのが分かる。

 これが、咽喉管理局の持つ技術の限界なのかもしれない。もっとも、居住区であればもう少し高い重力を発生しているはずだ。俺達の拠点に来訪した時には重力について文句を言っていなかったからね。


『この甲板の重力場にむらがありますね。大型の半重力装置は未だに作ることができないのではないでしょうか? それとミレーネ様から通信です』


 再び小さな仮想スクリーンが現れる。


「よくいらしていただけました。既に周囲は地上環境に同じです。重力は模擬できていませんが、迎えを出しますからご一緒にいらしていただけませんか?」

「了解した。あのドアから出てきたのが迎えの連中かな?」

「そうです。それではお待ちしております」


 仮想スクリーンが閉じた。

 いよいよだな。交渉決裂にはならないと思うけど、向こうが手を出すようなことはなるべく避けたいところだ。


「行ってくるよ。外に出してくれ」

『了解です。私の拘束は敵対行為とみなしてよろしいですね?』

「拘束する相手を破壊するだけにしといてくれ。衛星の破壊は俺の指示に従って欲しいな」

『了解です。マスターの指示、もしくはマスターとの相互通信が断たれて3分後に開始します』


 アリスの胸部装甲が開いてコクピットの前部が解放されると、倉庫の中のような光景が目に映る。

 そのまま跳び下りるのは地上では無理だけど、重力が低いからねぇ。2つのバッグを手に、コクピットから飛び下りる。ゆっくりと落ちて甲板に降り立つ。


「地上の者だな! この場で射殺されたくなければバッグを下して両手を上げるんだ!」

「このままで良い。早く案内して欲しいな」


 俺の言葉に怒ったんだろうな。いきなり銃を振り上げて銃床で俺を殴りつけようとする。 

片手を離してバッグを落とすと、殴りつけてきた銃床をしたから上に突き上げた。男の体が上を向くところを、もう一方に握ったバッグで払いのけた。低重力なのか今の俺の体のせいなのかは分からないけど、左端の壁に飛んで行って張り付いたままだ。


「抵抗するのか!」

「正当防衛だ。攻撃されれば攻撃する。もっとも、お前達が攻撃を甘受する正確ならこのまま宇宙空間まで放り出すが?」

「できると思ってるのか!」


 後ろに下がりながらだから、迫力がないなぁ。


「止めなさい! 誰の指示ですか。私は会議室に案内する様に伝えたつもりですが」

「我等は管理局のためを思って……」

「今、新たな迎えを出しました。しばらく営倉で反省が必要ですね」


 再び扉が開き、銃を持った一団が入って来た。本格的な戦闘になるのかな? そっと左手を腰に向けてリボルバーのグリップを握ろうかと思っていると、新たな一段の1人が俺の前にやってきて敬礼をしてきた。


「リオ殿ですね。ちょっとした行き違いとして頂きたい。我等の中にも過激な連中がいるのです」

「行き違いはどこにでもありますからね。それでは案内をよろしくお願いします」


 最初にやって来た連中が後から来た連中にどこかに連れ去られていく。なんか怒鳴っているけど、連行する連中は気にしていないようだ。

 やはり、どこにも過激な連中はいるってことだな。ある意味ガス抜き作用もあるのだろう。大きな組織にならなければ良いんだけどね。


 結構長い回廊を歩いているような気がする。それに伴って少しずつ重力が正常に戻っているようだ。

 

「半重力装置の連携が上手く取れないのが問題なんです。回廊が長いのはそんな理由なんですよ」

「俺達の船も、苦労してるところがありますよ。それでもこれだけの大きさの拠点を持っているとは驚きです」


 直径3kmを越えてるんじゃないか? それぐらいの大きさなんだが、重力制御はかなりお粗末だ。

 俺達の領土を作る上で最大の障害は重力制御になるのだろうが、俺達にはアリスやカテリナさんがいるからねぇ。良い制御システムを作ってくれるんじゃないかな。


「ここです。ちょっとお待ちください」

 そう言って、案内してくれた男性が扉を軽くノックした。中から「どうぞ」の声がしたところで、男性が扉を開く。


「リオ殿をお連れしました。過激派は営倉でしばらく頭を冷やして貰います」

「ご苦労様。……リオ殿。お久しぶりです。どうぞこちらに入ってください」


 会議室の大きさはソロほど広くない。真ん中に大きな丸いテーブルがあり、レミーネさんの隣に若い男女が座っている。副官になるのかな?

 ミレーネさんに促されるまま、テーブル越しの席に座った。


「遠路、ご苦労様でした。私達に御用があるとか……」

「2つほど。先ずは、これをご確認ください。小惑星帯で採掘したレアメタルを租精練したサンプルです。これを500tのシリンダー単位で納めようと思うんですが、その方法と、報酬をどのようにするかを決めていなあったことに気が付きました。お手数をお掛けする迷惑料は……、これで満足いただけないですか?」


 最初のバッグからサンプルの入ったケースを取り出して、レミーネさんの前に置く。直ぐに隣の男がサンプルを受け取って部屋を出て行った。

 分析屋だったのかな? 俺の目的をある程度想定していたということになる。

 だけど、新たなバッグを開いた時は大きな目を開いていたから、想定外だったに違いない。


「それは!」

「俺達の分析ではダイヤの原石になります。このまま地上に持ち帰っても砕いて売りさばくことになりますが、運行管理局ならそれなりの使い道もあるのでは?」


「数が出るのであれば星間貿易の材料になる出でしょう……。この種の原石はまだまだあるのでしょうか?」

「6日間で4個見付けました。ダイヤが1個にエメラルドが2個とサファイヤが1個です。一番大きなものは、そのダイヤの2倍ほどあるエメラルドですね。王冠にでも下降して国王に譲ろうと考えてるところです」


「先ずは採れることを広めると……。とはいえ、場所が問題ですね。戦姫を使っても母船の投入にはリスクがありすぎます」


 2人して溜息を吐きながら原石を眺めている。

 運行管理局としても、貿易品として使えると考えたようだ。


「もし、運行管理局として購入いただけるなら、ライデンの宝石ギルドに下ろしますが?」

「適正価格を、宝石ギルドと調整すれば良いということですね。それは願っても無いことです。条件は特にないのですか?」


「特にありません。サンプル分析は時間が掛かりそうですね」

「そうですね。もう少しお待ちください。そうそう、飲み物もお出ししていませんでしたね。それと、ここならタバコも楽しめますよ」


 飲み物よりタバコの方がありがたい。バッグからタバコを出すと、目の前のテーブルの一部が開いて灰皿が現れた。リバイアサンでは結構制限があるんだけど、この部屋については地上と同じように楽しめるということなんだろうな。



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