021 本業で稼がねば
「もう少しで出発ね」
翌日の出港時間はフレイヤと一緒に、自室で優雅にワインを飲み始めた。ワイングラスを手の中で回しながら飲んでいるけど、1本500Dだから食堂のワインとは明らかに違う。
「たぶん数百Dってとこね。ワインの値段的には中の上って所でしょうけど、これ位が私には合ってるわ」
「結構、高いと思ってたんだけどな。もっと上があるのか」
そんな話で時間を潰していると、ゆっくりとヴィオラが動き出した。
同盟に加わった2隻も俺達の後に続いてくるのだろうが、一番遅いのがヴィオラになるとフレイヤが教えてくれた。
巨獣の迎撃能力で船の速度が変わるのは仕方がないんだろうが、船団を組む時には不便だな。
「ガリナムには驚いたわ。あれはガンシップね。75mm長砲身が12基よ。戦機3機分に相当するんじゃないかしら?」
「ベラドンナも凄いぞ。ヴィオラよりは小振りだがリアクター出力は十分だ。獣機を沢山乗せて落穂拾いに徹していたんだろうけど、低緯度をかなり長期間活動出来るように造られてる」
ラウンドシップは、騎士団の活動に合わせて少しずつ特化していくんだろう。
まだ見た事はないけれど、12騎士団のフラッグシップとなれば、軍の戦艦並みの特注品かもしれない。
2m四方はある舷窓から摩天楼が次々と現れては後ろに走り去る。俺達は、何時しか寄り添ってそんな光景を眺めていた。
何時の間に寝てしまったんだろう? 目が覚めると舷窓から見える風景が変わっている。どこまでも続く荒野だ。夜の間に防壁を越えたのだろう。
ソファーで寝ているフレイヤを起こさないように、シャワーを浴びる。
朝食はフレイヤが起きてからになるから、舷窓から外を眺めてタバコを楽しむ。
フレイヤが起きたところで、今度は彼女の支度が終わるのを待つことになる。女性だから、俺のようにパッパといかないのが問題だ。
それでも、灰皿が山になる前にフレイヤの準備ができたようで、俺達は連れだって食堂へと出掛けることにした。
朝が早いのか、食堂に人は少ない。俺達は左舷の窓際に席を取って、ネコミミの女の子に朝食を注文する。
届けられたハムエッグを食べながら外を眺めていると、やや離れた位置を併走するガリナムの姿を見つけた。
となると、右側にはベラドンナがいるんだろうな。上空から眺めるとさぞかし堂々とした姿に見えるだろう。
バージに荷物が満載だからあまり速度は出せない。俺達が拠点に着いたのは第二陸港を出港してから10日も経ってからのことだった。
洞窟の中に陸上艦がバージを曳いて入って行く。
あのホールで転回は難しいと思っていたのだが、中に入っていくと陸上艦からバージを切り離して、獣機が大型の戦車にしか見えないタグボートに接続している。
タグボートはヴィオラのバージに積んできたんだろうか? 2台あるから工事にも使えそうだな。
ホールの中は仮設照明の明かりで煌々と照らされているから、ホールの端の方で行っている作業まで舷側の窓から見ることができる。
獣機が次々とバージの荷を下ろしているが、俺達の仕事は今のところ無いみたいだな。
アレク達とスクリーンを見ながら獣機達の動きを見ていると、スクリーンが強制的に切り替わった。
『ヴィオラからニュースのお時間です。今回の航行でこの洞窟がヴィオラ騎士団の拠点に正式に認定されました。明日から、拠点の工事が始まりますが、ヴィオラそれにガリナムの2隻は周辺の鉱石採取に向かう予定です。ベラドンナは拠点に残り獣機を用いて拠点作りを行います。それでは、カテリナさん。拠点の解説をお願いします……。』
ネコ族の少女に変わって、カテリナさんが現れた。
背景に映し出された洞窟の平面図をポインターで示しながら、これから作る拠点の概要を説明してくれる。
『この洞窟ホールの大きさは東西1.6km、南北1.7km。天井高さが最大で300mの大きさがあります。このホールを利用して……』
東側に横幅30m、長さ1kmの桟橋を作るようだ。高さも20m近くになる。これだけの大きさならヴィオラが3隻は停泊できるから、それより小型のガリナムとベラドンナなら余裕を持って停泊出来る。
ホールの西側にパージを停泊させる桟橋を作るらしい。鉱石の積み替えが出来るように荷役装置が2基設置される。
バージ用の桟橋だから長さは500m程だし、横幅も15mぐらいになるようだ。高さは8mと言っていたから、大型バージの上面と同じ高さになるように考えているんだろう。
東の大型桟橋の中は戦機や獣機の整備工場、動力炉、発電装置等が設置される。
騎士団員の居住区は、大型桟橋の南海の端に高さ30m程のビルを作るようだ。水タンク、燃料庫、換気装置等は複数の設備を設けると言っていた。
真ん中が大きく開いているから、将来はそこに新たな桟橋を作るんじゃないかな。
『現在、このホールでは、機密服と酸素ボンベが無ければ活動出来ませんが、将来はこの奥に続く洞窟を複数の隔壁で閉じて、内部の有害なガスを外に出します。天井に孔を空けて、外の空気を中に引き込むことで重装備をする事無く活動が可能な空間に変えて行きます』
「かなりの工事になるな。資材もまだまだ運びこまなければなるまい」
「でも、便利そうですね。問題は周辺の監視です。ここは荒地に張り出した尾根の合間にありますからね」
俺の言葉にアレクが頷く。
「それ位は誰もが気が付くことだ。円盤機を残していったろう。既に周辺の山頂に監視装置を設置しているはずだ。この拠点の全体監視を何処でやるかは分らんが、そこで確認出来るようにな。でないと、俺達が出航して直ぐに巨獣と鉢合わせと言うことになりかねない」
「そういえば、新たに円盤機を積み込んできましたよ。上空からも監視するんでしょうか?」
「確か、偵察用とか言っていたな。燃料カートリッジを増やして長時間上空で監視をするのかもしれないぞ」
ベラスコの問いににアレクが答えている。
ドミニクも2隻を同盟に加えたんだから責任を感じているんだろう。
新たに購入した円盤機は2機だが前の円盤機と合わせれば5機になる。かなり広範囲に周辺の偵察が可能になるだろう。
夕食後に買い込んだ蒸留酒と葉巻を持って、ベレッドじいさんのところに会いに行く。
「すまんな。お前のアリスにはあまり手は掛けていないんだが……」
「そんな事は無いですよ。長剣も頂きましたし。皆で分けてください」
買い込んだ火酒と葉巻を、嬉しそうな表情でベレッドじいさんが受け取ってくれた。
ドワーフ族は義理堅いから、仲良くしておくに越した事が無い。
色々とアリスの面倒も見てくれるし、暇な時は何時でもアリスを見てるんだよな。
部屋に帰ると、カテリナさんが私服で訪れていた。マスターキーで出入自由というのも問題だ。
「あら、お帰りなさい。良い物を見つけたので勝手にやらせてもらってるわよ」
そう言って氷の入ったグラスを俺に振って見せる。
棚に置いておいたアレクへ渡そうと思っていたウイスキーだな。残り2本あるから、ここで1本空けたとしても問題はないけどね。
「どうぞ。結構美味しいわよ。高かったでしょう?」
「ちょっと、贈答用に買い込んだものです。まあ、残り2本あれば良いでしょう」
カテリナさんからグラスを受取ってソファーに腰を下ろす。
「結構、おもしろいところね。たぶん、古代の採掘跡地なんでしょうね。ガスでかなり痛んでいたけど、人骨を見つけたわ。持っていた工具は全く分らないほど腐食していたけど……」
「ここは、危険なんでしょうか?」
「今は全く危険が無いと言って良いわ。良い場所を探したものだと思う。放送を聴いたと思うけど、有毒ガスはパイプで外に出すことが可能よ。あのガスのおかげで巨獣が来ないんだから、ここは位置的には極めて危険なんでしょうけど、安心して休む事が出来るわよ」
それでも直ぐにそうなる訳ではない。ゆっくりと時間と資材を投入して俺達の拠点ができるのだ。
「拠点を持つのは、アデルの夢だったわ。良く私達に話してくれたものよ。『拠点を持つと言うのは、国を持つようなものだ』ってね」
カテリナさんは窓を見ているけど、その瞳に写っているのは遥か昔の思い出なんだろう。静かにグラスの酒を飲んでいる。
改めて、酒をグラスに注いであげると、小さな声でお礼を言ってくれた。
「こんなことを聞いては失礼なんでしょうけど……、ドミニクの父親の死因って、何なんですか?」
「一応、話してあげたほうが良さそうね。アデルの死因は、遺伝子再生不良と呼ばれる騎士特有の病気よ。戦機の操者である騎士は、ある特定の遺伝子配列を持つの。でも、騎士の遺伝子配列は本来の配列では無いんでしょうね。細胞分裂の過程で本来の遺伝子配列に戻ろうとするのよ。普段の生活なら寿命まで問題は無いんだけど、それを加速するのが戦機の操縦なの。実年齢で35歳。これを過ぎて戦機を操れば、一気に遺伝子が暴走を始めるわ。……後には肉の塊が残るだけ」
驚いてカテリナさんを見つめた。悟ったような覇気のない表情で、グラスの酒を飲んでいる。
「アレク達はそんな宿命を持っているんですか……」
「だから、30を過ぎれば騎士団を退団して他の職業を始める者が多いわ。王国に農園を買って暮らしている者や、獣機に乗り換える者もいるみたい。獣機なら何時までも乗っていられるしね」
そういえば、フレイヤの母親達は元騎士だと言っていた。華やかに見えるが、その活動期間は短いんだな。
「でも、リオ君はそうならないわ。ある意味、一生を戦機……いえ、戦姫と共に暮らせるのよ。今のテクノロジーでは不可能だわ。少しは、理解したつもりでも、直ぐに私の手の平から零れてしまうような技術なのよねぇ。全く良い娘を持ったと自分を褒めてあげたいくらいだわ」
ひょっとして、ずっと俺の近くにいるって事なのか?
確かに姿体は、20代なんだけどね。……何となく、気になるのは俺の倫理感がそう告げるだけなんだろうか?
ふらりとカテリナさんがソファーから腰を上げると、テーブルを挟んでタバコを吸っていた俺の隣に移動して俺の肩に体を預ける。
「私には未知の技術でも、将来の指標となるものは出来そうだわ。私の生きた証が残せそうな……」
小さな呟きは最後まで続かずに、俺に体を預けて眠ってしまった。
改めてウイスキーのボトルを見てみると、三分の一位しか残っていない。俺が部屋に来る前から飲んでたみたいだから、このまま寝かせてしまおう。
カテリナさんをベッドに運ぶと、ソファーに寝そべってカテリナさんの話を振りかえる。
騎士の寿命は、実年齢で18から30前後の約10年程度と言うことになる。
アレク達も、後数年で進路を変えねばならないってことになるな。その時はどうするんだろう?
この拠点を管理運営する仕事もあるだろうし、あの農園で母親達と暮らす事も出来る。
さらに、問題となるのはアレク達が同年代だという事だ。ヴィオラの騎士が半減する事態が生じることになる。更にカリオンもいなくなると言う事態が最悪だな。俺とベラスコの2人になってしまうぞ。
緩やかな世代交代をすることを考えなくちゃならないが、……まあ、そんな事はドミニクに考えさせとけば良いのかも知れない。
次の早朝。ヴィオラとガリナムがゆっくりと拠点を出て鉱石採取に向かう。
洞窟ホールから出口までの長い洞窟は、操船を担うブリッジの連中の腕の見せどころだ。
俺達はいつものように待機所に集まって、ブリッジから見える前方の風景をスクリーンに映してその腕を見ている。
「確かにヴィオラ騎士団のブリッジ要員は一級揃いだな」
「洞窟直径に比べてヴィオラは半分ですから操船が容易なのは当たり前だと思いますが……」
珍しくコーヒーを飲んでいたベラスコが呟いた。そんな彼を面白そうにアレクが見て、その訳を説明しだす。
「ヴィオラ単体なら簡単だろうな。だが、考えてもみろ。ヴィオラの後ろには300tバージを4台も曳いているんだぞ。パージ1つが40mはあるから接続具込みで50mとすれば200mが加わる。それも5つの関節があるようなものだ。壁面に接触させずに制御してるんだから大したものさ」
尻尾を壁にこすらないで進むネズミみたいな感じだな。
そんな事を考えていると、突然前方が明るくなって俺達は外に飛び出したようだ。
すぐにヴィオラから円盤機が1機発進して上空からの監視を始める。
ヴィオラは2つの尾根に挟まれた場所を抜け出すと西に向かって2時間程走ると、ブームを展開して地中を探り始める。直ぐ隣にガリナムが並んでいる。2隻のラウンドシップが並走して進むことによって鉱石探査の幅が100m近くになるらしい。少しでも地中の鉱石探査を優位に行なうつもりのようだ。
探査時の巡航速度は時速20km程だから、巨獣の移動速度に近い。採掘時以上に巨獣に狙われやすいとフレイヤが教えてくれた。
俺達の方が遥かに大きいのだけれど、彼らには縄張りを荒らす他の巨獣か、動きの遅い大型の草食獣に見えるらしい。
現在はイエローⅠの待機状態になっているが、俺達は船首の展望台に集まっているからこのままで十分だ。
昼食は食堂からの出前になるのだが、カツ丼が無いのが寂しいな。パスタに似た料理を薄味のスープと一緒に食べ終えると、食後のコーヒーはカップにストローが付いていた。
「第2巡航時なら食堂を使えるが、第1ではな……。獣機の連中のようにイエローⅢよりはマシだと思う外ないな」
「鉱脈が見付かれば直ぐに採取ですからね。実際、一番苦労してると思います」
「そういうことだ。だから、獣機の騎士は俺達よりも少しだが給与は上だ」
「あまり、俺達は働いていませんからね。でも、それだけ危機が訪れなかったんだと思えば良いわけですね」
「ああ、出来れば騎士団のお荷物に徹したいな」
そう言いながら、タバコに火を点けた。コーヒーにタバコは合うからな。
突然ヴィオラの速度が落ちてゆっくりと周回を始めた。
獣機士達が立ち上がると待機所を駆け出していく。
「どうやら、鉱脈を見付けたようだぞ」
『ヴィオラ騎士団員に連絡。鉱脈を発見。獣騎士は至急ハンガーに集合せよ。戦騎士はイエローⅢで待機。繰り返す……』
急いで更衣室に飛び込んでコンバットスーツに着替える。
レッドⅠの連絡でハンガーに行けば良い。レッドⅡならばアリスのコクピットで待機だ。
「まあ、どうなるかだな。例の騎士団が襲撃されたのも北緯50度以北だ。この辺りはそれを越えている」
円盤機からの映像を仮想スクリーンに映してアレクが呟いた。
2機の偵察用円盤機が周囲を監視しているから、巨獣の接近は早期に分かる筈だ。
隣にもう1枚のスクリーンを展開して獣機の作業を見守る。
18機の獣機が協力し合ってマンガン団塊の掘り出しと運搬を始めている。ガリナムにも数機の獣機を搭載していたようだ。
役割分担を決めていたのかな。混乱も無く順調に作業が行なわれているようだ。
「重テラリウムを含んでいるらしいわ。動力炉の炉壁用に高値が付きそうよ」
「問題は量だな。バージ1つもあればありがたい話だが……」
一か所で200tを超えるマンガン団塊群は中々見つからないらしい。作業は12時間を越えたが、300tバージの四分の一を確保したようだ。
採掘が終わると、俺達の艦隊は再び西に向かって動き出した。
2日間は何も見つけられなかったが、4日目の夜に、突然館内放送が流れる。
『ヴィオラ騎士団員に連絡。鉱脈を発見。獣騎士は至急ハンガーに集合せよ。戦騎士はイエローⅢで待機。繰り返す……』
俺とフレイヤはベッドから抜け出して急いで身支度を始めた。
「戦機のイエローは火器も一緒なのよ。リオ達は待機所だけど、私達は管制室で待機よ」
そう言いながら俺に手を振ると部屋を出て行った。
真夜中だから、と言っていられない。探査装置で鉱脈を探している連中は4時間交替でシフトを組んでるようだし……。何時も見付かるのが昼間とは限らない。
待機所に行くと、どうやら俺が最後だったようだ。
皆に挨拶してソファーに腰を下ろすと、サンドラが濃いコーヒーを渡してくれる。
ありがたく頂いて一口飲むと少しずつ眠気が冷めていくのが分った。
「俺達は待機だが、リオには特命が下りている。15分後にヴィオラを発進して、北に向かってくれ。距離は60kmで良いそうだ。円盤機のセンサーが故障したらしい。現在1機が周回している」
「急がないと不味いんじゃないですか?」
「まあ、そうなるな。だが、コーヒー位は飲んでいけ。居眠りでもされたら大変だからな」
そんなことを言っているけど、良いんだろうか? とりあえず、早めに飲んだ方が良さそうだ。
「俺達は出動しなくて宜しいんですか?」
「巨獣の姿も見付からないのに出動は無意味だ。リオの機体は動きが早い。そして小さいながらも暗視野が確保されている。だから、夜間の偵察には都合が良いんだ」
ベラスコは出撃したいようだな。
それでも、アレクは許可を出さない。
そんな連中に頭を下げると、コーヒーを半分ほど残して俺は立ち上がった。
「行って来ます!」
「おう、気を付けてな」
軽い挨拶をかわして俺はハンガー区域へと急いだ。
エレベーターを降りるとハンガー区域を駆けていく。何時もなら、ずらりと並んだ獣機がもぬけの空だ。
弟子達を連れて戦機の整備をしていたベレッドじいさんに挨拶をして、素早くアリスに連絡を入れる。
「だいぶ急いでるようじゃな。話は聞いておる。弾丸クリップは腰に2個付いておるぞ」
「偵察ですから、問題はないと思うんですが、ありがとうございます」
胸部装甲版とコントロールポッドが開いたアリスのコクピットに、隣接したタラップを駆け上がる。
コクピットを収めたポッドが閉じると同時に、コンソールの照明が灯り、内部空間を明るく照らし出した。
正面のスクリーンには、ゆっくりと胸部装甲版が閉じる姿が映し出されている。
「目的地は北60km。夜間だから、高度50mで探索しよう」
『ブリッジより修正が来ています。接近中の巨獣を調査のこと。方位340度、距離80となっています』
アリスの操縦をアリスに委ねる。
アリスは隣に立てかけられた40mmライフル砲を片手に取ると、ハンガー要員の赤と緑に光る2本の棒に誘導されてゆっくりと昇降装置に向かって歩きだした。
「ひょっとして、迎撃なのか?」
『それは、相手次第でしょう。このライフルを全弾使用しても無駄であれば、隠匿兵器を使用します』
昇降装置を上っていく途中で、物騒な事をアリスが伝えてきた。
相手がイグナス程度なら問題は無いだろう。ベラスコの初陣を皆で祝福してやるのも悪くない。
ヴィオレの甲板に数歩歩いてブリッジに出発を告げると、アリスは地上にジャンプする。着地と同時に、北に向かって速度を上げていく。