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197 ドレスダンサー並みの生命力


「軍の高速艇が接近してくるよ。通信が届いてるみたい」


 ドロシーの報告にブリッジの通信士に視線が移る。


「フェダーン様から通信が入ってます。指揮官とコンタクトしたいとのことです!」

「こちらから連絡すると伝えて頂戴!」


 通信士の報告にカテリナさんが応じてくれた。情報を流したのはカテリナさんだからね。相手をしてもらおうかな。


「……了解よ。この高度でエレベータを下げるから乗り込んでこれるでしょう? 既に始まってるわ。早く来ないと見逃すわよ」


 どうやら白鯨への乗船方法を確認していたようだ。

 カテリナさんが、すぐに艦長と話を始めたから乗船方法について伝えているのだろう。


「基本は、ドロシーが行ってくれるわ。問題が無いことを見てて頂戴」


 片手でドロシーを呼び寄せて、艦長の隣に立たせている。

 白鯨の電脳もドロシーで制御できるってことなんだろうな。


「それにしても、ローザ達は逃げるのが上手いわね」

「鬼ごっこと勘違いしてるようにも思えますけど、サンドドラゴンはかなり怒ってるんじゃありませんか?」


 右に左に逃走コースを変えて、3機が纏まったり離れたりと中々に忙しそうだ。

 そんな戦姫の後ろを砂塵を巻き上げながらサンドドラゴンが追い掛けている。爆弾の爆発でグールイーターが四散してしまったから、目標が変わったということなんだろう。

 ゼロとナイトが待ち構える場所まで30kmほどに迫っている。


「アリス、サンドドラゴンの速度は?」

『時速53kmです。戦姫の逃走コースが目まぐるしく変わっていますから、それに合わせて追いかけてますが、時速55kmを越えたことはありません』


 今では完全に地表に姿を現している。見掛けはグールイーターが巨大化したようにも思えるんだが、全長は340mとアリスが教えてくれた。

 戦姫の放つレールガンを受けてかなりの傷を負っているはずなんだが、進行速度が緩む様子は全くない。

 やはり、次の手が必要になるんだろうな。


 10分ほど経過したころ、ブリッジにフェダーン様が副官の女性を連れて入って来た。

 どうやら、ドロシーの役目は終わったみたいだな。再びカテリナさんの隣に移動したから、俺達のところにやって来たフェダーン様に頭を撫でられている。


「それで、現状は?」

「罠にローザ達が誘い込んでる最中よ。それにしても、面倒な相手よねぇ。レールガンの弾丸を100発以上受けてるはずなのにあの動きなのよ」

「サンドドラゴンと言われるわけだな。姿を見るのは初めてだ。それで、リオ殿はこの後の始末をどのように?」


 簡単にゼロとナイトで作った罠を説明する。

 説明しながら、自分でも少し怪しく思えてきたことも確かだ。


「今度は大口径の一斉射撃となります。少しは効くと思うんですが、これだけ打たれ強いとなるとドレスダンサーを思い出しますね」

「それで爆装を急いだのね。罠が破られそうなときはノイマン効果弾の一斉射撃で時間を稼ぐということかしら? そうなるとローラ達の役目が重要になるわね」


 さすがはカテリナさんだ。APDS弾の衝撃波で体を刻むと理解してくれた。

 疑問を浮かべるフェダーン様達に、カテリナさんが解説しているから、この隙にコーヒーを頼んでみようかな。


「3分ほどでデイジーが目標に到達するよ!」

「ローザ達の残弾を確認しといてくれないかな? 場合によっては囮をしてもらうからね」


 ドロシーが頷いてくれたから、後は報告を待つだけだ。

 直ぐに返事が返ってきたけど、マガジン1個分とのことだ。20発では少し心許ないけど、ローザ達はレールガンにセットされたマガジン以外に3個のマガジンを持っていたはずだ。3機で都合180発を放ったことになるんだが、動きにまったく変化がない。


「それにしても……、サンドドラゴンには目が見当たりませんが、どうやってデイジーたちの動きを感知してるんでしょうね?」

「口の周囲にある触手が怪しいわね。空気振動を捉えてるんじゃないかしら?」

「あの口の周囲の髭か? 倒すことができればその辺りの研究もできるであろうな。それにしても、あの牙は凄いな。チラノのが草食巨獣に思えるぞ」


 最初に見た時はヤツメウナギを思い出したんだけど、2mを越える牙が円周上に連なっている。それが喉の奥まで幾重にも続いてるんだよなぁ。

 パレスの飾りになりそうだから何本か頂いておこうと思っていた牙だ。


「ラウンドクルーザーを噛み砕くという証言もあったようだ。誰も本気にしていなかったが、どうやら真実を述べていたということだな」


 直接戦っていないから、結構好き放題な話をしてる。

 そんな時、仮想スクリーンに表示された戦姫が進行方向から左右にわかれた。

 やはり戸惑っているようだ。その戸惑いをアレクが見逃すはずがない。


 爆轟滑空砲16門が一斉に火を噴いた。

 APDS弾だから着弾しても爆発はしないんだが……。


「貫通してるわ。出口の開口部が小さいわね。それに直ぐに体液の流出が止まってしまう」


「アレクに伝えてくれ。『マガジン2個を放ったら直ぐに離脱せよ』以上だ!」

「やはり、あの手を使うの?」


「さらに高速弾を放てますからね。ローザに連絡だ。『アレク達の離脱を確認した後、東にサンドドラゴンを誘導せよ。サンドドラゴンの正面に位置せずに30度ほど位置をずらすように』以上だ」


「同士討ちを避けるということか。だが、待機してるのはパンジーのようだが?」

「今度はパンジー2機の連携です。カテリナさん、爆撃装置の照準器は調整してありますね?」

「もちろんよ。高度500m以下で時速200km以下なら、目標の1m以内に着弾するわ」


「次の爆弾も準備しといた方が良さそうだな。ゼロのノイマン効果弾もだ」

「カーゴ区のドワーフさんに連絡しとく!」


 ドロシーの返事に、カテリナさんが笑みを浮かべている。


「アレク達が動いたわ。ノイマン効果弾は効いてるのかしら?」

「本体に穴が開いてるぞ。軍にも装備させたいところだ」

「それは後程交渉するとして、ゼロを呼び寄せましょう。とことん体表面を傷つけて再び潜れないようにすべきです」


 ドロシーが通信を送ってくれたのかな? ゼロが真直ぐ白鯨に向かってくる。


「それにしても、おもしろいようにローザ達の後方を付いて来るな」

「鬼ごっこと同じなんでしょう。そろそろローザは卒業しないといけないんでしょうけど」

「ふふふ、全くだな。だが、あのように囮役を上手くこなせる人材はそれほどいないことも確かだ」


 変な方向にフェダーン様が感心しているけど、どちらかというと、ローザに見合った相手を探すことが大切なんじゃないかな。


「ローラ達がやるみたいね。ゆっくりと後方から接近しているわ」

「40mm爆轟滑空砲だったか? 先ほどのナイトの攻撃でもそれほどの効果が無かったように思えるが?」


 首を傾けてフェダーン様がカテリナさんに問いかけている。


「ローラ達のパンジーは超長距離狙撃が可能な50mm爆轟滑空砲なの。弾速はナイトの割ましよ」

「操縦と射撃が得意とは言っていたが……」


 ちょっと懐疑的になっているけど、その視線はしっかりと仮想スクリーンに向けられている。

 その時、パンジーの下部で閃光が起こった。


「なるほどね、リオ君の狙い通りということかな? 表皮が裂けたわ。かなり傷が深そうね」

「マガジン1個分を使ってもらいましょう。少しは爆撃の効果も期待できます」


「そうなると、遅延信管に換えた方が良いのかしら?」

「コンマ1秒でも遅延できれば十分です」


 にこりとカテリナさんが笑みを浮かべる。通常弾でもそれぐらいの遅延があるということだろう。


「パンジーの爆装完了。出発したよ!」

「ありがとう。次はゼロが帰ってくる。50kg爆弾を半数に装備、残りはノイマン効果弾を装填と伝えてくれ」


 さて、アレク達の弾丸補給もしておくべきだろうな。ローザ達の弾丸は用意してないから、しばらくは動き回っていてもらおう。


「どうやら、マガジンを1つ撃ち尽くしたみたいね。ローラ達が後方に下がってるわ。

 

 タイミング的には丁度良い感じだ。1分も掛からずにフレイヤが爆撃をするだろう。


「パンジーが爆撃コースに乗ったみたい。照準器と操縦系統の自動連動信号を確認!」

「後は、ターゲットに近付いてボタンを押すだけね。1km手前でボタンを押しても命中するわ」


「それならボタンを押す必要が無いように思えますけど?」

「最終安全装置の解除ボタンよ。切り離しボタンではないの」


 色々と安全策は考えてるみたいだな。宇宙船の設計もそう願いたいところだ。


「落とした!」


 ドロシーの言葉に、全員が仮想スクリーンに視線を移す。

 次の瞬間、サンドドラゴンが弾けるような爆炎が周囲を覆う。


「殺ったの!」


 誰もがそう思ったに違いない。だが、爆炎が晴れると数十mほど頭を上げたサンドドラゴンの姿が現れた。


「あれでもダメってこと?」

「いや、効果はあったよ。胴の一部が大きくえぐられてる。あれでは地中に潜ることは出来ないだろうな。ある意味、奴の脅威が半減したことも確かだ」


 それでも動いてるんだよな。だけど、ローザ達を追う速度が半減以下になっている。あれでは肉食巨獣に襲われるんじゃないか?

 数頭ならあの口で噛み砕けるだろうが、群れを作ってきたらドレスダンサーと同じ結果になるに違いない。


「アリス、傷の様子はどうだ?」

『約横幅5m、長さ30mの傷を確認。傷の深さは3m以上と推測します。体液流出が継続していますが、徐々に弱まっているようです』


「それほどなのか? 、だが、250kg爆弾となれば戦艦の砲弾並だ。狙って当たるとは思えんな」

「ちゃんと当たったでしょう? ドロシー。ゼロに、あの傷口を狙う様に連絡してくれない」


 傷口を総攻撃するってことかな?

 

「かなり動きが鈍ってるように見えるわ。ナイトも攻撃に参加させましょう!」


 やはりローザ達を追う速度が半減しているようだ。

 となれば、ムサシの投入も視野に入れるべきかもしれない。


「ゼロの波状攻撃が始まるよ!」


 ローザの言葉に、再び画像を食い入るように見る。

 次々と50kg爆弾が投下されたが、本体に当たったのは1発だけだった。やはり自動照準装置は必要かもしれないな。

 続いてノイマン効果弾が胴体に次々と着弾する。こっちは外れたのが1発だけだった。

 ゼロの軸線上に射出装置が設けられているから出来る芸当なんだろう。


「動きが止まったわ。尾の方は痙攣してるような動きね」

「かなり深くえぐったということかしら? フレイヤはまだ出発できないの?」

「もう直ぐみたいですよ。ドロシー、エリーに連絡してムサシを投入すると伝えてくれないか? 艦長! ムサシがカーゴ区域から出る。高度を50mほどに下げてくれ」


「斬り裂くの? それなら、アレク達に頭を攻撃させなさい。マガジン1個分も放てば頭部はぐしゃぐしゃよ」

 

 カテリナさんの言葉に頷いた。

 既に、ローザ達がたっぷりと銃弾を撃ちこんでいるはずだ。ナイト6機でマガジン1個分とすれば72発を撃ち込むことになる。動きの止まった直径20mの頭部なら全弾命中できるに違いない。

 表現は少しグロいけど、確かにぐちゃぐちゃになりそうだ。


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