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181 パレスの装飾をしよう


 9時を過ぎると、フレイヤやドミニク達も起きてくる。その姿を見てカテリナさんが部屋へと戻って行ったのは着替えをするためだろう。

 あの派手なネグリジェをいつまでも来てるわけにもいかないだろう。


 カテリナさんが戻ってくる頃にはローザ達もリビングにやって来た。

 朝食を頂きながら、レイドラが次の航跡採掘の航程を話してくれる。


「昼食後に出掛けるということじゃな?」

「困りました……。今日か明日には輸送艦がやって来ると思っているのですが」

「パレスの調度品ね。母さんから話には聞いてたけど、そうなるとエミー達には残って欲しいわ。リオも残ってくれるなら、万が一の時には駆けつけてくれるでしょう?」


 俺も同行したいところなんだけどなぁ……。


「残ることは良いけど、ムサシは搭載して出掛けて欲しいな。もっとも、ローザ達が一緒なら、巨獣は余裕で倒せると思うけどね」

「任されたぞ! 我等3人がいるなら大概の巨獣は倒せるじゃろう」


 うんうんと頷いている3人組なんだが、いつの間にか逞しくなっている。

 西の中継点の守りも、ローザ達なら十分に対応できるだろう。


「宿泊は、商会のホテルを使いなさい。パレスの調度はリオ君の部屋を優先すればパレスで暮らせるでしょうけど……、そうなるとメープルさんを残すことになるのかしら?」

「ミューとランカものしておくにゃ。カンザスにはライム達でだいじょうぶにゃ」


 カテリナさんの話しを聞いて、コーヒーを運んできてくれたメープルさんが侍女の分配をしてくれた。

 確かにメープルさんだけでは大変だろうな。


「ガレオンさんのところから、獣機を2機回して貰えば重量物の運搬も楽になるわ。私達の部屋は、そのままで良いわよ」

「そうだね。ガレオンさんのところにも獣機はあったんだよな。忘れてたよ」


 ドミニクに礼を言った。中継点の治安維持部隊の隊長をしてもらってたんだけど、今ではヴィオラ騎士団領の防衛隊隊長になって貰っている。

 拠点防衛の要として1個小隊ほどの防衛部隊を指揮しているんだが、獣機部隊も1個分隊いるからね。

 一応、防衛隊なんだけど、高速艇の荷物の積み下ろしまでしてもらっている。かなりいい加減なところもあるけど、俺達の国は国民が少ないからねぇ。


 食事が終わったところで、俺達は荷物をまとめてカンザスを下りた。

 商会の運営するホテルに荷物を運び終えると、パレスの前に積み重なった荷物の開梱を始める。


「これは絨毯?」

「回廊が長いですが、一応、図面をもとに長さを合わせてありますから、敷くだけですよ」


 絨毯の次は、机や衣装棚が続々と出てくる。

 救援に駆けつけてくれた獣機が次々とパレスに運び入れているけど、ミューさん達の梱包をバラしていく速さも半端じゃないな。


「これは食器にゃ! まだ厨房に食器棚が運ばれてないにゃ」

「そっちの端に置いとくにゃ。……これは絵画にゃ、どこに飾るにゃ?」


 メープルさんが、3人の王女様と話し合いながら次々と飾る場所を決めていく。

 やはり王宮に勤めていただけの事はあるなぁ。考えることなく配置を決めるんだからねぇ。


「この鎧は、2つセットでしたね?」

「もう1つ、出てこないと配置のバランスが取れませんね」


 セット物も小さなものなら良いんだけれど、大きな物は別に梱包されてるからねぇ。とりあえず飾る場所に運んで、もう1つ出てきたら配置を決めれば良いんじゃないかな?


 夕方近くになって、輸送艦が中継点に入って来た。あの中にもたくさん入ってるんじゃないか?

 この作業はいったい、いつになったら終わるのか先の見通しが立たないんだよなぁ。


 3日目になると、かなり作業も手慣れてくる。

 細々した調度品はローラとミューさん達が担当して、エミーとオデットが大型の調度品をメープルさんと一緒になって並べている。もっとも、獣機に指図しての配置だから、あまり進んでいないように思えるけどね。

 俺は、その中間を受け持っているんだけど、貰って来た絵画の数が半端じゃないんだよな。並べるだけで美術館波になるんじゃないか?


 6日目を迎えると、以前とは見違えるパレスの姿が現れた。

 まだまだ、調度品の梱包が残っているんだけど、3日も過ぎれば無くなるんじゃないかな?

 そんなわけで、ホテルを引き払って、パレスで暮らすことになったのだが……。


「この大きさを4人で入るのは贅沢ですねぇ」

 ローラが俺のグラスにワインを注ぎながら呟いた。

 確かに大きい。直径5mはあるからねぇ。もっとも、2階の岩風呂は10m四方ほどもあるから、泳げるんじゃないかな。


「俺達の人数が多いからなんだろうね。将来もっと増えそうな気もするけど、それはカテリナさんの研究次第なんだ。まだまだ子供を作るのは先になりそうだね」

「戦姫を駆る騎士が生まれるのでしょうね。となれば、戦姫の発掘も視野に入れなければなりません」


 オデットの言葉に2人が頷いている。

 とはいえ、いまだかつて騎士団が戦姫を発見したという話を聞いたことも無いんだよな。各王国の戦姫は運航管理局との戦で1機になってしまったらしいが、その前にはある程度の数があったということになる。

 だとしたら、その戦姫はどこから手に入れたのだろう?

 カテリナさんに聞いてみようかな? 案外、俺が知らないだけなのかもしれない。


 俺の寝室は、早々と形になったんだけど、床が絨毯では無くて竹を編んだようなマットが敷かれていた。

 部屋の片側の壁を全て使ったようなメイクコーナーは高さが1mほどの鏡が横に続いている。

 手前のテーブルは大理石みたいだし、蓋を開けると洗顔用の流しまで付いている。コーナーとベッドの間は俺の背丈ほどある衝立で区切ったようだ。

 奥のサニタリーにはシャワールームと浴室がある。とても1人用とは思えない大きさなんだよな。さらに奥に扉があり、扉の奥は30m四方の植物園があった。良い音色で鳴く虫はどんな姿なんだろう?

 木製の小さなテーブルとベンチがあるから、風呂上りにここでビールを楽しめそうだ。


「良い場所ですね」

「ああ、ヒルダ様の暮らす第2離宮には及ばないけど、これは贅沢過ぎるきがするね」


 地下空間に咲く花々と虫の音。蝶々も飛んでるかもしれないな。

 あまり華美に囚われない空間があるだけで、俺は満足できる。


 寝室のテーブルでワインを飲み、ベッドに入る。

 そろそろカンザスも帰って来るんじゃないかな。それまでには何とか調度品を片付けたいところだ。


 翌日、やはり最後に起きたのは俺になるようだ。着替えを持ってサニタリーに向かうと、エミー達がシャワーを浴びていた。

 邪魔をしないように、浴室に入ってぬるま湯に浸かる。

 直ぐに外に出て着替えを済ませると、奥の扉を開けて植物園のベンチで一服を楽しむ。


 シャワーの音が聞来なくなったから、寝室に戻ったのかな? 時計を見ると、7時を少し過ぎている。

 寝坊をしてライムさん達に呆れた表情をされたこともあったけど、こんなに早起きがいつまで続くか自信が無いことも確かだ。


 20分ほど過ぎたところで、寝室に戻る。

 衣服を整えていると、エミー達のメイクも終わったようだ。

 2階の食堂へと降りていくと、メープルさん達が食堂で俺達を待っていた。


「よく眠れたかにゃ? 今朝は簡単に済ませるにゃ」


 簡単だと言っても、サンドイッチとあっさりしたスープ。それにメロンが1切れとコーヒーだから、俺にとっては贅沢な食事だ。


 食事が終わると、調度品の運び入れが始まる。

 だいぶ梱包の木箱が少なくなってきた。先が見えてくるとやる気も出て来るな。


「へぇ~、観葉植物も強請って来たの?」

「それは、園芸店からの購入品です。まったく緑が無いというのも寂しいですからね」


 パレスの中で、周囲を眺めればどこかに必ず緑があるということにしたかったらしい。

 次々と観葉植物の鉢植えが出てきた。

 これは、俺の担当になるのかな? 俺の身長より少し低い観葉植物の鉢を持って、パレスを何度も往復することになった。


 パレスで暮らし始めて2日目を終えると、運ばれた来た梱包が全て無くなった。

 やっと終わったと、メープルさん達を交えてワインで乾杯する。


「明日は位置を少し直すぐらいにゃ。商会からネコ族の娘さんが10人やって来るにゃ。パレスのお掃除をするにゃ」

「これだけ大きいと、やはり掃除人を雇うことが必要になりますね」

「3人程雇えば良いにゃ。良く仕込んであげるにゃ」


 王宮並みの礼儀作法まで、教えてあげられるということなんだろう。ライムさん達が帰って来たとしても、元々はエミーの侍女だったんだから、掃除をさせることは出来ないだろうな。

 ドミニクに許可して貰って雇ってもらおう。


 翌日。どうにか掃除を終えた頃に、カンザスが中継点に入って来た。

 専用桟橋に停泊したところで、パレスからカンザスに移動する。


「やはり、ここが落ち着くなぁ。パレスは大きすぎるんだ」

「贅沢な悩みね。明日にでも、皆で見に行きましょう」


 採掘の方は、まずまずの成果だったらしい。俺達の本業だからね。次は俺達も同行しなければなるまい。


 今夜はフレイヤとクリスが一緒だ。

 ローテーションを考えてると言ってたけど、やはり女性が多すぎるんじゃないかな?

カテリナさんとヒルダ様が恨めしく思えてしまう。


 翌日。朝食が済むと、フレイヤ達はエミー達と一緒にパレスへ出掛けた。

 俺はカンザスでアリスと一緒に新型パンジーの設計を始める。アリスが一緒なら基本設計までは簡単にできるんだよね。その先もアリスなら可能なんだろうけど、専門家もいるんだから、基本設計で終わりにしておこう。


 どうにか作業を終えて、残りはアリスにお任せだ。

 ライムさんにコーヒーを頼んで、のんびりと一服を始めるとカテリナさんがやって来た。隣にいるのはガネーシャだな。何か問題が出てきたんだろうか?


「こんにちは。あの話は中継点でも噂になってたわよ。さすがは騎士団だけの事はあるって感心してたわ」


 そう言って笑みを浮かべたところを見ると、必ずしも好意的とは言えないようだな。


「反省してます。ヨットは戦機と違う事ははっきり分かりました」

「そうね、かなり違うわ。……でもね。あれだけのうねりと横波を受けて冷静に対処できたのはさすがだという事よ。どんな事態でも騎士は冷静だと感心してる人達は、その噂を広げるわ。私は悪い事ではないと思うわよ。でも、少し無謀だった事は確かね」


 そんな事を言いながらライムさんが運んで来たコーヒーを飲んでいる。


「それで今日は?」

「詳細設計が上がったわ。後はダメだしをした後で施工設計を行なって組み立てる事になるわ。少し付き合ってくれない?」


 俺が頷くと、ガネーシャが端末を操作してスクリーンを展開する。

 かなり形が変わってきたな。先ずは緒言を聞いてみよう。


「よろしいですか? これが全体像になります。全長250m、横幅60m、地上高は50mです。下部のゴンドラに200tコンテナが6台収納可能。操船は先端下部に設けた艦橋で行ないます……」


 反重力発生装置は5台設置される。その動力炉は地底湖の眠っていた脱出艇の動力炉、ブラックホールエンジンの簡易版だ。

 2基設置されているのは万が一に備えてだろう。緊急停止させても、予備があれば問題ない。

 武装は左右に伸びた胴体に付いている砲塔だ。2連装の88mm長砲身砲は頼りになりそうだな。

 船体内の大型カーゴ区域に戦機と獣機、それにゼロが格納される。その総数は30機を越える。

 飛行船の移動は、船体の後部にある2重反転式のプロペラを使用するみたいだ。プロペラの直径だけでも6mもあるのが3セットも付いている。


「……操船系統は全て2重化してあります。戦機の出し入れは簡易エレベーターを6基使用することにしました」

「問題は無いんじゃないか? 少なくとも俺にはそう思えるんだが……」


 スクリーンを眺めながら俺がそう言うと、カテリナさんが俺の言葉に頷いた。


「私もそう思うわ。でも、アリスがダメを出したの」

 

 何だと? 一体どこに問題があるんだ?

 もう1度良く全体像を眺める。特に問題は無いと思うのだが……。

 待てよ、これには2隻の小型艇、ギガントがセットになる。それとの連携の問題だろうか?

 だが、それも問題になるとは思えない。となると……。


「アリスは教えてくれたんですか?」

「それが、直ぐに分かるはずだと言うだけで……」


 なるほど、やはりって感じだな。

 

「ダメ出しと言うより、もう1隻作るようにという具申ではありませんか?」

「そうです。どこが問題で予備機を必要とするのかが分からなくて……」


 もう1隻を予備機と取ったからだろうな。


「どこにも問題は無いと思います。そうですね。全体像をもう1度見せてください。

 この画像から、武装を外して移動速度を落として、積載するコンテナを5台。カーゴには獣機が10機にゼロを4機にした簡易版を作ればアリスの答えになるでしょうね。アリスはこのラウンドクルーザーが中継点に戻る時間を削減したいんだと思います。コンテナの輸送船を作れば、この船で長期的な活動が出来ると考えたようです」


「アリス。そうなの?」

『マスターの言葉通りです。ラウンドクルーザーの動きは速いのですが、ギガントの動きが追従しきれません。結局はギガントの移動速度に合わせる事になります。それなら同じような船をもう1隻作って補給船とすれば長期活動ができます』


 その言葉を聞いて2人が呆れたように俺を見ている。

 俺は2人の疑問に答えただけだぞ。

 アリスにからかわれたのかな? だけどそれだけ2人の設計が上手く出来てるってことだと思うな。


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