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170 王女様達がやって来た


 オオトカゲは、大人5人とちびっ子4人が協力して何とかしとめることができた。

 一言で言えば簡単だが、その実はかなりハードな狩りだった。

 リンダ達の小型拳銃では歯が立たず、槍を投げれば跳ね返されるような硬い皮の持ち主だ。

 まるでトカゲというよりはワニの表皮のような感じだったが、逃げ場を失って向かってきた奴の口に俺の投げた槍が上手く刺さったのが運の尽きということなんだろう。

 槍を取ろうともがいているところに、マグナム弾を討ちこんでどうにか始末できた。

 終ったところで全員が溜息を漏らしたぐらいだから、その手強さが分かると言うものだ。


 捕らえたオオトカゲを丸太に縛り付けて、俺達が交替で担ぎながらボートまで歩く。これだけでもかなりの重労働だ。

 新たにゴムボートを1艘膨らませると、オオトカゲをどうにか乗せることができた。

 後は川を下るだけだ。皆、笑みを浮かべているのがンんとも言えない一体感なんだよね。

 簡単に倒せなかったということもあるんだろうけど、これを機会に俺達の仲が深まりそうにも思えてくる。


 意気揚々と今夜のバーベキュー会場に運び込んだら、カンザスのシェフが驚いてたけど、直ぐに大きな包丁を運ばせて解体を始めた。やはり食べられるみたいだな。

 あちこちに散って遊んでいた連中が、再び集まってビールを飲みながらバーベキューを楽しむ。

 こんな集いが俺達の結束を確かなものにするんだろう。

 アレクの隣で酒を飲みながらそんな事を考えた。


 あくる日は、エミーやフレイヤ達と真珠貝を探し、その次ぎの日にはベラスコと魚を追い回す。

 のんびりしている暇が無いのが俺としては問題なのだが、皆楽しそうだ。

 そんな日が5日間続いて、俺達は明後日に拠点へと帰る事になったのだが……。


「そろそろ、ヨットが入り江に入って来るわよ」

「例の2人の王女ですね。向こうには都合が無いんでしょうか?」

「あら? 惑星ライデンの頂点ににいる騎士よ。東の王国2つとも反対する貴族は無かったと聞いているわ。本人達もかなり早くにウエリントン王国にやってきたみたいだけど、住む場所がねぇ……」

「パレスができるまでは、カンザスってことかしら?」


 フレイヤが確認する様に問いかけると、カテリナさんが笑みを浮かべながら首を振った。


「パレスは完成したわ。今朝方、ベルッドから連絡があったの。軍の工兵部隊が手伝ってくれてたから、ベルッド達は細部を仕上げるだけだったんでしょうけどね」

「そうなると、調度品が必要になるのかしら? かなりの出費よねぇ」


 さすがに木箱に腰を下ろすようでは困るだろうし、適当な品を買い込んで捨てるのにも苦労するようなことはしたくない。

 誰かに、コーディネートを頼むべきなんじゃないかな?


「お母様に、調度品を依頼しましょうか? 王宮に飾られることも無く倉庫に美術品が積み上げられているそうですよ」

「王宮の審美眼に適うものでなければ、作家も売れぬからのう。毎年のように美術品の献上があることも確かなのじゃ。我にはどれも似た品としか思えぬが、見るものが見れば値打ちがあるのじゃろうのう」


 まあ、価値観は人それぞれってことかな。俺の審美眼もローザと大して変わらないからエミーに任せた方が良いだろう。


「エミー、ヒルダ様と相談してくれないか。予算は、俺の口座を使ってくれ。特許でかなり潤ってるからね」


 笑みを浮かべて頷いてくれたから、この件はこれで終わりで良いのかな? 俺の過剰ともいえる口座の残高がこれで半減するんじゃないかな。


「カンザスの方も間取りを変えたんでしょう? そっちは良いの?」

「リオ君の執務室兼寝室と新たに3人の部屋を作っただけだから、前とほとんど変わらないわ。王女達は自分達で部屋をコーディネートするでしょうし、リオ君の部屋は私がしといたわよ」


 思わず、え! と叫ぶところだった。

 だいたい、執務室と寝室が兼ねられるとは思えないし、カテリナさんのコーディネートセンスも疑わしいところがあるんだよね。


「2人の王女達もライムのようなメイドを連れてくるのじゃろうか?」

「当然でしょうね。でも1人だと思うわ。エミーの場合は特別だから。それにパレス専属として2人を確保したから、彼女達を統率するメイド長が必要になるでしょう。ヒルダに頼んでおいたわ」


 後で、ヒルダ様から、無理な願いを聞くことになりそうだけど、俺達に貴族まがいの暮らしが出来かねる以上、仕方のないことではあるんだよね。


「王女達の到着予定は?」

 レイドラの問いに、皆がカテリナさんに視線を移す。

 

「予定では、今日の20時よ。浮き桟橋は出ているし、ツアー会社のクルーザーも帰ったから問題はないと思うんだけど」

「出迎えは?」


「輿入れだから、エレベータ前で出迎えれば良いわ。休暇中ということなら今のままで十分よ。そうだ! ライム達にちょっとした夜会の準備をお願いしたいんだけど」


「ドリンクパーティにゃ? 今からなら準備できるにゃ。会場はここで良いのかにゃ?」

「そうね。ここしかなさそうね。50人分として準備をお願いね」


 直ぐにライムさん達が部屋から姿を消してしまった。簡単とは言ってるけど、俺には面倒だとしか思えないんだけどねぇ。


 早めの夕食を取ると、来訪時間まで2時間もない。

 フレイヤ達は何時もより入念にメイクをするみたいだけど、俺にはそんなことが無いから、カテリナさんとリビングでワインを楽しんでいる。


「これは、持ち帰ってもだいじょうぶじゃろうか?」


 ローザ達が俺達の前に現れると、ローザが代表して確認してきた。

 ローザ達をよく見ると、頭の上に大きなカブトムシが乗っている。どこで捕まえたんだろう? そういえば、ドロシーが虫取り網を持っていたな。あれで捕まえたのかな?


「ギガントね。だいじょうぶよ。帰ったら、レイトンに育て方を教えて貰うといいわ」


 カテリナさんの言葉に、ローザ達は笑みを浮かべて部屋を出て行った。


「だいじょうぶなんですか? それにドロシーが生物を飼うのも……」

「情操教育には、生き物を育てるのも役立つわ。それに、あの甲虫は貴重種よ。王族が飼うには丁度いいわ」


 それなら余計にダメじゃないか。だけど、ローザ達に簡単に捕まるようでは、この島にかなり生息してるってことなんだろうけどね。


「後で生息状況を調べた方がいいかも知れないわね。ローザ達が手に入れたのを知れば、直ぐに買いたいと言ってくる連中が出てくるわ」

「商売になるんですか?」

「あの大きさなら、金貨数枚ぐらいになるでしょうね」


 そんなに高いカブト虫だったとは思いも寄らなかった。

 

「レイトン博士に相談してみます」

「数匹の捕獲許可を与えれば喜んで協力してくれる筈よ。私が交渉してあげる」


 たぶん、ローザ達を連れてレイトンさんの所に行くんだろうな。博士の驚く顔が目に浮かぶぞ。だけど、上手く運べばこれも俺達の国の新たな産業になりそうだ。

『カブト虫あります。値段は時価!』

 そんな看板を出してみようかな。


「あまり開発が去れていない場所だから貴重種が他にもいるんじゃないかしら。レイトンに島全体を調査させてから開発を行った方が良さそうね」

「賛成です。俺達は彼等からすれば新参者ですからね。彼らの生活を脅かさないように開発しましょう」


 2人でワインのカップをカチンと鳴らす。

 これで乱開発が防げるだろう。収入は北で得られるんだから、この島は休養に特化すれば良いんじゃないかな。


「あら、まだ支度をしてないの? さっさとジャグジーで体を洗って着替えてきなさい!」

 

 フレイヤにつまみ出されるようにソファーから追い出されてしまった。

 言われるままにジャグジーに体を沈めて、頭と体を適当に洗って直ぐに出ると、更衣室に新品のTシャツと短パンが出ていた。胸に騎士団のロゴが入っているところを見ると、今夜はこれで統一ということなんだろう。


 リビングに向かうと皆が揃っている。

 本来なら筆頭騎士やローザ達も来席ということになるんだろうけど、私的なパーティということで、ここにはいないようだ。

 そういえば、エミーが降嫁した時もローザはいなかったんだよな。王家の事情と案外割り切っているのかもしれない。


「リオの準備も出来たみたいね。これでやって来るのを待つだけになるわ。先ほどヨットが到着したの。向こうも最終準備をしてるんでしょうね」

「あまり飾り付けても……」

「リオ君にはそう思えるかもしれないけど、女性にとってはやはり一大イベントなんでしょうね」


 煌びやかな衣装よりも、シンプルで動きやすい方がどれだけ良いか……。

 ドレス姿で暮らしていたはずのエミーでさえ、今ではフレイヤと変わらぬ姿だからね。ローザの場合は、たまにドレスを着せてあげないと将来が心配になるほどだ。


「もう直ぐ着くそうよ。エレベータ前で出迎えましょう」


 通信を受け取ったカテリナさんが俺達をリビングの片隅に位置したエレベータ前に並ばせる。

 立ち位置もあるんだろうけど、あまり気にしないで並んでいると、エレベータが止まり、十数人の女性が部屋へ入って来た。


「リオ殿。長らく待たせてしまいましたね。案内してきましたよ」


 ヒルダ様が笑みを浮かべて報告してくれた。


「むさくるしいところで申し訳ありませんが、我等常に心を一つにして困難に立ち向かっておりますれば、新たな家族が増えたことを喜んでおります。先ずは、こちらにどうぞ」


 俺の話が終わったところで、フレイヤが客人達を先導してソファーセットへと案内してくれた。

 白いベールをかぶり、やや俯いている2人が王女様なんだろうな。王女様の手を取っているご婦人はお妃様ということなんだろうか?

 片方は、ナルビク王国の巡洋艦と小競り合いをした時のお妃様だから間違いは無さそうだけど。


「席に着く前に、花嫁達をリオ殿に渡さねばなりませんね。ウエリントン王国からエミー殿が降下した時にリオ殿が示された条件を……」

「ちょっと待ってください。まさか、この場で『身一つでお渡しします』と言ってガウンを払って俺に突き出すようなことはしませんよね?」


 ちょっと間が空いたけど、次の瞬間、来客達の爆笑が起こった。

 やはり、考えていたな。実の娘さんなんだから、その辺りは母親として考えて欲しいところなんだけどなぁ。


「分かってしまっては、おもしろさが少し減ってしまいましたね。でも、私達はリオ殿の要求が嬉しくもあったのです。『身一つ』その言葉には、本人以外は何もいらないということに外なりませんからね。ですから、あえて『身一つ』でお渡しします。ナルビク王国大王女オーロラをよろしく御寵愛下さりませ」


 言葉が終わると同時に、王女の纏ったガウンを外して俺に押しやったから、転びそうになった王女を咄嗟に抱きしめることになった。

 近くのカーテンを片手で剥ぎ取り、王女体に纏ったところで、先ほどのお妃様に顔を向ける。


「確かに受け取りました。王族並みの暮らしは出来ないでしょうが、共に喜怒哀楽を過ごしていきます」

「婿殿。次はエルトニア王国の第三王女オデットでございます。同じく生涯の御寵愛を」


 そういえば、2人だった!

 またしても、つまずきかけた女性を抱き寄せて、カーテンで体を包む。カーテンが大きくて良かった。


「まったくお人が悪いですよ。ともあれ、お二方は確かに受けとりました。これ以上増えるとは思えませんから、何とか妻達と仲良く暮らしたいと思います。とりあえず盃を取ってください。乾杯と行きましょう」


 俺の傍にいつの間にかレイドラが付いていた。2人の王女をレイドラに預けて、テーブルのシャンパングラスを手にする。


「ヴィオラ騎士団長のドミニクだ。乾杯の挨拶は私で良いだろう。それでは、3つの王国から分かれた新たな王国とその妻達に! 乾杯!!」


 軽く一口飲んだところで、各自が席に着く。ちょっとした摘みとワインのボトルだけなんだけど、ドリンクパーティだからこんなものだろう。


「エミー様に倣ってトランク2つ分の衣類は中継点に送ってありますよ」

「それなら、なおの事さっきのあれは無かったんじゃないですか?」


 俺のささやかな抗議は、笑い声で無視されてしまった。


「これで3王国とも1安心ですね。全ての王国の戦姫が稼働しましたし、将来性も出てきました。さらにリオ殿の元に3王国が揃って王女を降嫁できたのですから、さらに期待も持てます」


 なるほどね。そう言うことも裏では意図してたんだな。

 だけど俺に子供が作れるのは、カテリナさん次第だからねぇ。まだまだ難しい課題があるようだ。神に挑むような研究ではあるけど、フレイヤ達の為にも完成して欲しいところだな。



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