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169 狩りはお揃いの衣装で


 腹一杯食べたけれど、まだまだ食材が残っている。

 ローザ達がしとめた野生の豚は3匹だった。豪快に丸焼きにしたんだが、それだけで100人分はあるんじゃないか?

 いくら騎士団員が腹ペコ揃いだとはいえ、ちょっと量が多すぎたようだ。


「明日もバーベキューをするのじゃ!」

 

 そんな事を言って、ちびっ子達がはしゃいでいる。俺達は笑みを浮かべて明日の健闘を缶ビールを掲げて祈ってあげた。

 リンダとフレイヤの会話から分かって来たのは、狩りの途中で大きなトカゲを途中で見かけたらしい。それを狩るつもりらしいが、トカゲって食べられるのか?


「リオはどうするんだ?」

「のんびり昼寝をしますよ。折角の休暇なんですから、何も外で動き回らなくても……」


 ラウンドクルーザーのコンペもあるしな。のんびりジャグジーに使って考えておかないと後でカテリナさんに何て言われるか……。


「まったく、若いんだから少しは羽を伸ばせ!」

「我等と、トカゲを狩るか?」


 ローザが誘ってくれる。隣のドロシーもうるうる目で俺を見てる。

 困ったな。


「私達に付き合って、貝を採りましょうよ!」

「もう1つ、銃を持ってきました」

 

 まったく、困ったな。こんな時には、一番小さい子と同行したほうが良さそうだ。


「そうだな。明日はローザ達と一緒に行くよ」

「ちゃんと衣装を用意しておくのじゃ!」


 嬉しそうに、そう言ってドロシーとどこかに走っていったけど、俺にもあのインディアン衣装を着せるつもりなのだろうか?

 何となく、アレクと一緒に釣りをしていたほうが良かったような気がしてきた。


 宴会が終わり保養所に引き上げる中、ネコ族の一団とすれ違った。たぶん残った料理の美味しく始末をしてくれるのだろう。何となく嬉しそうな一団だったな。

 ひょっとして、他の島からやってきたのかもしれない。サービス業へのネコ族の進出は予想以上に広いみたいだ。こんなイベントを互い手伝うことで同族意識を高めているのかも知れない。


 保養所の部屋に戻ると直ぐに皆がジャグジーに向かっていく。ローザ達が一緒だから、俺はのんびりとソファーでタバコを楽しむ。

 エミー達はジャグジーを出るとそのままお休みのようだ。相当疲れてるんじゃないか? ローザ達もドロシーとともに客室に引き上げていく。

 

 どうやら、俺1人で入浴だな。久しぶりだから、酒のグラスを持ってジャグジーに向かう。お湯でのんびりと楽しもう。

 

 ジャグジーのお湯に浸かりながら、冷たい酒は何となく贅沢な感じがする。

 そういえば、例のコンペも考えねばならない。

 アリスを呼び出して、その後のラウンドクルーザーの概念を再検討する事にした。

 天井のドームが降りてきて、スクリーンモードに変わり画像が投影される。


『武装は88mm長砲身連装砲塔をゴンドラの下部の前後に1つずつ搭載します。この種の船には、防衛用の武装は必要ないと思われます。ナイトを6機、新型獣機を16機、ゼロを8機搭載します。戦機は4機搭載できますが、私達の合流用です。鉱石コンテナは200tを8台に増やしました。全長は400m、最大直径65mに増加しています。移動速度は時速150km。鉱石探査用に別のラウンドクルーザーが必要になります』

 

 母艦という事になるな。となれば、小型で高機動が可能な駆逐艦を使って鉱石探索をする事になる。


「小型駆逐艦の概念も作ったんだろう?」


 俺の言葉とともに画像が切り替わる。

 そこに映し出されたのは、30m程の艦体が2つ蛇腹で結ばれたラウンドクルーザーだった。


『40mm滑腔砲塔を2門搭載します。ガリナムと同じ多脚式走行装置を備え最大速度は時速60km。時速30kmの巡航速度で地中探査が可能です。探査深度は約15m』

「2隻を並べて探査するのか? そうなると、搭乗する騎士団員はどれ位になるんだ?」


『母艦に約150名。駆逐艦タイプには乗員50名が必要になります』

 

 総勢300名近くになるのか……。何も見つけられないと、大幅な赤字になりそうだな。

 ん? ちょっと待てよ。獣機が全くいないけどだいじょうぶなのか?


「アリス、新型獣機で鉱石採掘を行なうのか?」

『そうです。新型獣機なら機体機能は従来の3割増しになります。迅速な採掘と万が一の防衛戦にも対応できます』


 そうなのか? 確かに理屈ではそうなるけど、後で確かめる事が必要だな。

 

「これでいいんじゃないかな。概念図とデモ用のCGを作っておいてくれないか。さすがアリスだ。俺から追加する事は無いよ」

『了解です』


 すっかり氷が溶けたグラスの酒を一口に飲むと、ジャグジーを後にする。

 カテリナさんはこれでOKだから、明日はローザ達に付き合ってあげるか。だけど、トカゲって食べられるのか?

 そんな事を考えながらベッドに入った。既にエミーはぐっすりと夢の中だ。起こさないように隣に潜り込む。


 次ぎの日、目が覚めると隣にいたエミーは既に起きているようだ。

 衣服を整えジャグジーに行って顔を洗う。

 リビングに向かうと既に皆は朝食を終えている。俺がテーブルに付くとライムさんが朝食を持ってきてくれた。トーストにマグカップのコーヒー、それにカリカリベーコンと目玉焼き。

 そんな朝食を終えるとマグカップを持ってソファーに移動する。


「リオはローザ達と一緒なのよね。明日は私達と一緒に潜るからね!」

「ああ、いいよ。ところで、真珠は採れたの?」


 俺の言葉に皆が微笑む。腰のバッグからハンカチ包みを取り出すと、2個の真珠を見せてくれた。宝探しツアーよりも大きいようだ。


「まだまだありそうよ。いいお土産になりそうだから、リオにも頑張って欲しいわ」

「ああ、頑張るよ」


 ドミニクにそう答えておく。お土産ならば、確かにちょうどいい感じだな。事務所やガリナムそれにバシリスクに乗っている女性達にも喜ばれそうだ。


「これを着て待っていて、とローザ様から言われたにゃ」


 そう言ってライムさんがバッグを俺に寄越した。例の衣装だろうな。インディアンルックは俺に似合うのか?

 そんな事を考えながら、部屋に戻って着替える事にした。

 とりあえず着てみたけれど……、白の短パンに白いハイソックス。上着は半袖だけど、ヤケにポケットが付いている。その上、縁の広がったヘルメットは……、まるで、探検隊の服装じゃないか!

 その上に装備ベルトを付ければ問題は無いだろうが、こんな格好でトカゲを狩るのか? 44マグナムリボルバーならクマでも倒せるだろう。拳銃を持っていけば何とかなりそうだけど、一応ナイフも持って行こう。ベレッドじいさんに作ってもらった錆びないナイフがあるからな。

 ナイフケースをベルトに付けて、俺の準備は完了だ。


「何? その格好」

「トカゲを狩る衣装らしい。ローザに付き合うと言った以上、これは仕方が無いのかも……」


「でも、似合ってるわよ。絵本で見た探検隊みたい」

「誰も入った事が無い洞窟に……、なんて言いながら前から映される探検隊ね」


 そんな事を言いながら笑っているんだよね。

 笑い続けるフレイヤ達を無視して、ライムさんが水筒とお弁当を俺に渡してくれた。小さな弁当の包みはバッグに入れて、水筒はベルトに取り付けた。ますます探検隊になってきた感じだ。


 バタンと扉が開いてローザ達がやってきた。俺と同じような服装だ。こうしてみると、皆で着ればそれ程違和感が無い。リンダ達も中々似合ってるぞ。


「うむ、中々似合うのじゃ」


 ローザがそんな事を言ってるけど、背中に担いでるのはライフルなのか? それはリンダに渡しておいた方がいいような気がするぞ。

 それに、ドロシーが持ってるのは虫取り網だ。トカゲを理解していないのかな?

 ニコラとロゼッタは剣と槍を持ってるけど、全員の装備に統一性が無いのが問題だな。まあ、ある意味遊びではあるのだから、それでもいいのかもしれないけどね。


「それでは、出発するのじゃ。途中まではバギー、川でゴムボートに乗り換えて遡上するぞ!」


 何か難しい言葉まで使ってるな。

散々に俺を笑っていたフレイヤ達が、今度はローザに向かって笑みを浮かべているな。

フレイヤ達は一緒じゃないから良いとして、まるでドリナムランドのジャングルクルーズのまんまじゃないか!

 そんな遊びが出来るのも、この島の良い所かも知れないけど……。


 エミー達に手を振って部屋を出る。上手く運べば今夕のバーベキューはトカゲの丸焼きになるのかな?

 思わず笑みを浮かべながら、ローザ達の後を追いかけた。

               ・

               ・

               ・

 6輪バギー3台に分乗して川辺に向かうと、バギーの荷台に乗ったゴムボートを広げてそれに乗り込んだ。

 電動船外機が付いているから漕がずに川を上っていける。

 俺が船外機を操るゴムボートにはローザ達が乗っている。先頭は男の騎士が2人。殿はリンダ達女性の騎士だ。

 ゆっくりと川を遡るゴムボートからは左右に広がるジャングルが見える。

 どこまで遡るかは分からないけど、こんなゆったりした川遊びもおもしろいかも知れないな。


「トカゲは水辺に住むらしい。危険を感じるとジャングルに入ってしまうそうじゃ」

 

 子供達が両岸を双眼鏡で観察してるけど、そんなんで見付かるのかな?

 かなり怪しい狩りになりそうな気がするぞ。


 川を遡る事1時間。2kmは進んだんじゃないかな?

 そんな事を考えていると先頭を進んでいたゴムボートが突然停止した。俺達が近付いて行くと、腕を伸ばして岸辺を指差す。


 いた! なるほどトカゲだな。尻尾を含めれば2m近いオオトカゲだ。


「あれじゃな。猟銃を使えぬから面倒じゃが、この距離ならば一発で……」


 そんな事を言いながら、ローザが背中のライフルを構える。

 ジッと狙いを定め、トリガーを引いた。


 プシュ!


 何だ? エアガンなのか?

 トカゲは何か当った事に気が付いて、ジャングルにバタバタと足音を立てて入っていった。


「さあ、狩りじゃ! 場所は発信機が教えてくれるのじゃ」


 急いで俺達はゴムボートを岸に寄せる。

 さっきのライフル銃は、発信機を打ち出すエアガンだったらしい。これからは槍と剣になるのか?

 

「リオ様、これを!」


 そう言って、リンダがゴムボートから槍を1つ取って俺に渡してくれた。

 2.5m程の槍だな。投げて使うのか?


 男の騎士達が1m程の刃が付いたマチェットでジャングルを切り開いて道を作ってくれる。2人で交替しながら切り開くからそれなりに歩いていける。


「右30度方向に120mじゃ!」

 

 ローザが小型端末で場所を教えている。

 本格的になってきた。思わず笑みが浮かぶ。打ち込んだ発信機を辿るから獲物に逃げられる事は無いんだが……。

 問題は、この槍でちゃんと狩れるかどうかだな。

 ドロシーがしっかりと虫取り網を握ってるのが場違いな感じがしないでもないが、ジャングルに珍しい昆虫でもいれば捕らえる事が出来るだろう。それもまたおもしろいかもしれない。


 トラ族の若者と騎士の2人が、マチェットでジャングルの蔦や背の高い草木を刈り取り、道を作らねば歩くことさえできないような場所だ。

 ローザ達が、地図の味方と狩りの作戦を学ぶ良い機会でもあるんじゃないかな。案外役立つことって、学校では教えてくれないとベラスコが嘆いていたくらいだ。


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