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132 早く合流しよう


「この地図は貰って良いのかしら?」

「その為に持参した。それで、条件はあの通りで良いのか?」

「一応、リオ君の望みだし。エミーも気にしないで済むわ。それより、おもしろいアイデアをリオ君から貰ったんだけど、軍で試してみない?」


 早速売り込み始めたぞ。まあ、そんなところがカテリナさんらしいんだけどね。

 潜砂艦の探索方法と攻撃方法について2人が話し始めると、ネコ族のお姉さんがコーヒーをポットごと運んできてくれた。後は勝手に飲んで頂戴というところなんだろう。時計を見ると既に2時を回っている。早く寝た方が良いんじゃないか?


「なるほど、臼砲というのはおもしろいアイデアだ。金属のみを確認するならそれほど大型化しないだろうし、駆逐艦への搭載もそれほど無理が無いだろう。ヒルダと相談して返事をすればよいな?」

「それで良いわ。たぶん採用すると思うんだけど、ついでに新たな砲弾のアイデアも教えてあげるわ」

「スコーピオ戦で使えるのだろうな? ナルビクの砲弾は全てエルトニアに運ぶことを国王陛下が命じている。前回は砲弾不足で苦労したらしい」


 あの砲弾は、スコーピオ戦の兵站維持に使うのか。それほどの戦になると思うとちょっと想像ができないな。

 次々とカテリナさんが使えそうな兵器について話をしているけど、機動兵器とそれの搭載する武装についてはまったく口にしていない。

 その場で急に披露するつもりなのかな? 使えそうなら一気に注目を浴びそうな気もするんだけどねぇ。


「なるほど、それほどのアイデアマンだということになるのだろう。リオ殿が戦姫の騎士だけではないことがよく理解できた。私も軍の殻に閉じこもることが無いようにしたいところだ」

「いつでも歓迎してくれるはずよ。巡洋艦も頂いたし、戦機もね」


 互いに顔を見合わせてニヤリと笑みを浮かべるのはここだけにしてほしいな。どう考えても悪人顔に見えてしまう。

 夜分にいつまでもいては礼儀に反すると言って、フェダーン様は帰って行ったけど、そもそも夜遅くに訪ねてくる前に考えて欲しいところだ。

 

 フェダーン様をログハウスの外まで見送ったところで、再び寝室に戻る。

 すっかり目が覚めてしまったけど、朝までカテリナさんと過ごそう。今日は戻れるはずだから、ホテルで昼寝ぐらいはできるだろう。

 フレイヤ達は朝早くからドリナムランドのアトラクションに向かうはずだからね。


「これでハーレムが完成するわね。歴代国王陛下の中には妻を12人も持った人もいるらしいから、もっと頑張ってみれば?」

「体が持ちませんよ。至って普通の男ですから、そんな野望はそもそも持っていませんからね」


 アレクだって2人で手一杯らしい。俺の場合はフレイヤ、クリス、エミーにカテリナさんだからなぁ。ドミニクとレイドラは微妙な関係だけど俺の前を平気で裸で歩くんだから困ったものだ。さらに2人も加わると……、俺の居場所がなくなるんじゃないか?

 

「中継点にハーレムを作ることになりそうね。大丈夫、私に任せておきなさい」

「できればひっそりとした建物が良いんですが」

「そうもいかないわ。各国の王族だってやって来るでしょうからね。それなりの威厳と様式美は必要なの」


 なるべくカンザスのリビングで暮らそう。

 博物館のような部屋では、気が滅入りそうだ。


 少し話しかけるのを止めたら、いつの間にかカテリナさんが眠っていた。案外疲れているのかもしれないな。いつも研究や改造で飛び回ってる御人だ。

 シーツをカテリナさんに掛けて、ベッドを抜け出す。


 ベッド横にある小さなソファーセットには灰皿があった。自由に飲みなさいと言われた冷蔵庫を開けて、ビールを取り出してプルタブを開ける。


「アリス、あの海賊のその後は分かる?」

『どうやら捕縛されたようです。地上走行はそれほどではありませんから、駆逐艦に取り囲まれて投降した模様です』

「残りは、あの巡洋艦だね?」

『そちらも所属する艦隊に戻ったところを拘束されています。艦長以下幕僚は王都に移送中のようですね』


「ナルビク王国は約束を違えなかったということかな。となると退治している両軍も後退したんだろうか?」

『結局のところ互いの示威行為だと思われます。会見の後に直ぐに引き返しました』


 ちょっとした臨時の動員訓練という感じだったのかな?

 だけど、ヒルダ様は相当怒ってた感じなんだよね。交渉決裂の時には本当に攻め込むつもりだったのだろうか?

 いつもの優しいヒルダ様があんなに怒るなんて想像できなかったけど、エミーも怒らせたら、あんな感じになるんじゃないかな。気を付けなければ……。


「中継点に異常はないんだろう?」

『中継点からの連絡は特にありません』


 俺達が帰ったら、次はアデル達が休暇を取る手はずだ。色々と休暇の過ごし方を研究してるのかもしれないな。

 俺達の休暇の残りは3日もある。今日1日昼寝をしていても、残り2日はフレイヤ達にサービスしよう。

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 8時を過ぎたところでカテリナさんを起こす。

 まだ寝るとか言って駄々をこねるのは止めて欲しいんだけど、そのままジャグジーに連れて行って一緒に入ったら機嫌が直ったみたいだ。


「リオ君のアイデアを少し検証してみるわ。アリスも手伝ってくれるでしょう?」

『呼び出してくだされば、ご協力します!』

「そう、ありがとう。助かるわ。……それで、リオ君はドリナムランドに行くんでしょう? 10時に無人タクシーがやって来るわ。料金は私が持つから、楽しんでらっしゃい」


 とりあえず頷いたけど、フレイヤ達に何と説明するか悩んでしまう。

 早めに話しておかないと、後々困ることになりそうな気配が濃厚だからねぇ……。

 食事が終わったところで、コンバットスーツとブーツをバッグに詰め込んで、騎士の礼装のままドリナムランドに向かうことにした。向こうのバッグに入っている私服に着いたらすぐに着替えれば良いだろう。ドリナムランドに騎士の礼装は何となくそぐわないよなぁ。


 見送りを断って、ログハウスの外に出ると、カンカン照りの天気だ。

 ジワリと汗がにじんでくる。早くタクシーが来ないと熱中症になりそうな気もするぞ。

 通りの面した木陰でしばらく待っていると、無人タクシーがやって来た。

 直ぐに乗り込んで目的地を告げる。

 後はドリナムランドに着くのを待つばかりだ。

 目を閉じていると、いつの間にか眠ってしまったようだ。

 

 軽いチャイムの音に目が覚める。

 慌てて時計を見ると、30分も過ぎていない。

 窓から外を眺めると、確かに前に見たドリナムランドのエントランスが見える。


「料金は?」

「頂いております。ご安心ください」


 丁寧な男性の声で答えてくれた。乗り逃げなんてしたら騎士団の恥だからね。ましてや公爵の肩書がある。格好のゴシップネタにされてしまうだろう。

 大きな門に近付くと、門が開いてトラ族の若者が手荷物を預かりに来てくれる。


「荷物はこれだけなんだ。2日前に来たんだけど、ちょっと用事があってね」

「カウンターで氏名を教えて頂ければ、部屋にお持ちします。ドリナムランドにようこそ!」


 カウンターに行けば良いのか。

 カウンターのお姉さんに騎士団の名とお手の名前を告げると、すぐにカードキーを渡してくれた。


「他の皆さまは、すでにランド内に行ってしまわれましたよ」

「あまり寝てないから、部屋で休息するよ。食事は時間外でも大丈夫かな?」

「24時間いつでも、お好きなメニューを楽しめますよ。昼間でしたら、東館の7階にある展望レストランがお勧めです」


 ドリナムランド内を見下ろしながら食事ができるらしい。

 フレイヤ達を見ることはできないだろうけど、どんな雰囲気かぐらいは分かるんじゃないかな?

 お姉さんにお礼を言って、部屋へと向かう。とりあえず一眠りしよう。


 部屋ナンバーを確かめて扉を開く。

 大きな部屋なんだけど、誰もいない。既にルームサービスを終えたようで、寝室のベッドがきちんと整えられていた。

 先ずは一眠りするか……。


 目が覚めたところで時計を見ると、午後3時を過ぎている。

 4時間程寝ていたようだ。俺のバッグを見付けて、ラフに着替えをしたところで軽い食事を取りに向かうことにした。

 一応、騎士ということで常時武装が許可されている。

 リボルバーのホルスターを隠すように腰のバッグを調節したところで部屋を出た。


 確か、7階と言っていたな。

 お客の要望にいつでも応えられるということなんだろうけど、この時間に俺以外の客がいるんだろうか?

 そんな心配をしながらレストランに向かうと、ちょっとしゃれたレストランにたどり着いた。

 南北に大きなガラス窓があり、北側に至っては足元にまでガラスの床になっている。

 ちょっと驚いて見ていたら、ボーイ姿のネコ族の若者が近づいてきた。


「お客様、お1人でしょうか?」

「ああ、そうなんだ。今起きたばかりでね。軽めの食事がしたいんだけど」


「なら、サンドイッチとコーヒーでどうでしょうか? 直ぐにお持ちできますよ」

「助かるよ。席は、あの窓辺で良いかな?」

「どうぞご自由に。あまり人気がない席ですから、御気分が悪くなられるようでしたら、他の席に移動してくださっても構いません」


 俺に、亜頭を下げると厨房の方に向かっていった。

 確かに高所恐怖症では、持たないだろうな。俺はそんなことは無いから、ガラスの床に歩いて行って、適当な席に着く。

 下を覗いてみると、小さく動く姿が見える。これは中々良いんじゃないか? こんな場所でのんびりとビールが飲めたら、リラックスできそうだ。


 サンドイッチとコーヒーが運ばれてきた。少し薄口でマグカップにたっぷりだから俺にはありがたいところだ。たっぷりと砂糖を入れて先ずは一口。

 良い豆を使ってるな。

 夕食が楽しみになって来た。でも、その前にサンドイッチで腹ごしらえと……。


「相席をよろしいかな?」

「ええ、どうぞ」


 お代わりしたコーヒーを飲みながら一服を楽しんでいると、俺と似たような姿をした男性が挨拶してきた。

 俺の答えを聞いて、小さく頷くとテーブル越しの席に着き、ボーイにコーヒーを頼んでいる。


「腰の膨らみ、騎士と見たが?」

「そうです。ヴィオラ騎士団の騎士、リオと言います」

「私は、オルドラン騎士団のカイゼルだ。同じ騎士同士、荒野で会うこともあるだろう」


「こちらこそよろしくお願いします。まだちょっと別行動していたものですから、他の連中と行き違ってまして……」

「だろうな。君ほどの男が1人でコーヒーを飲んでいたのはそういうことか」


 そう言って笑っているけど、俺は普通の男だと自覚してるんだけどなぁ。


「つい先日、隣国と軍隊が衝突するところだったらしい。3王国とも相互に婚姻を結んでいるから、同盟以上の絆を持っていたはずなのだが」

「ちょっとした誤解で、瓦解することだってあるでしょう。ですが俺達にまで類が及ばずに済んで良かったです」


 しっかりと類が及んでいるんだけどねぇ。その辺りの事は話さない方が良いに決まってる。

 目の前の騎士も、俺が当事者の1人とは思っていないだろう。


 荒れ地でのマンガン団塊の採掘や巨獣の話しで楽しく会話が進む。

 その途中で、ヴィオラ騎士団が中継点を持つ騎士団だと知って驚いていた。


「そうだったのか……。私達も何度か訪れたんだが、あの位置にある中継点はかなり使えるな。マンガン団塊を直ぐに降ろせて、補給もできる。今年はいつもより高緯度で採掘しているから、報酬もだいぶ上がったよ」


 ヤードに戻る頻度が少なくなれば、その分マンガン団塊を採掘する期間が延びるということになるのだろう。

 ヤードからクレームが来そうだけど、中継点でのラウンドクルーザーの修理はまだまだ本格化していないし、零細騎士団が今まで以上にヤード近郊で活躍しているとアレクが言ってたからね。

 

「バージの新型の話を聞きましたか? さらに荷下ろしが容易になるようですよ」

「まだ更新していないのか? 国王陛下の通達でかなり出回っているぞ。誰が考えたか知らないが、確かに荷降しが格段だ。俺達の騎士団ではヤードと協定をして、ヤードで空のコンテナと積み替えるんだ。バーで酒を飲む時間さえ制限されてるよ」


 笑みを浮かべて話してくれた。

 飲む時間がそれなりあって、飲み終えるころには積み替えが終わっているということなんだろう。

 それにしても、かなり普及しているんだな。俺達も早めに確保しといた方が良いのかもしれないな。


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