115 しばらくは赤字になりそうだ
特番放送があった日の翌日。ベラドンナとガリナムは戦機3機を搭載してマンガン団塊を採掘に出掛けて行った。
何かあれば、カンザスが緊急出動することになっているけど、早くヴィオラが王都の工廟から帰ってこないと赤字経営になりそうだ。
フレイヤの愛機をカンザスのブリッジ下部に取り付けるための着艦装置の改造工事が遅れていることが、同行できない原因だ。
どうやら、少し大きくなってしまったらしい。そんなところがカテリナさんらしいけど、ちゃんと寸法を測っていたんだろうか?
円盤機の方は急ピッチで作業が進んでいるから、次の採掘には持って行けるようにとのことらしいんだけどねぇ……。
明日からまた穴掘りが待っている。
のんびり出来るのも今日限りだな。
リビングでのんびりコーヒーを飲んでいると、フレイヤとカテリナさんがリビングに入って来た。
俺の両隣に腰を下ろして、カウンターからこっちを見ているライムさんに飲み物を頼んでいる。
「珍しい組み合わせですね」
「あら、そうかしら? 円盤機の最終確認をしていたのよ」
「出来たんですか?」
「次の出向には持っていけるわ。着艦装置は盲点だったけど、明日には取り付けが終わるわよ。それに、ちゃんと此処から乗れるようにしたから」
俺の問いに、そんな慰めにもならない事をカテリナさんが教えてくれた。
あの、カプセル移動方式なのかな?
あまり聞かないでおこう……。
「それで、新型獣機の操縦者達は?」
「訓練施設でシミュレーションをしているわ。明日からはレイトンの手伝いをしてもらうつもりよ」
例の温室作りだな。重量物も扱うし、細々とした作業もあるらしい。確かに獣機操作の慣熟訓練には丁度良さそうだ。
その上、拠点の生鮮食物の育成に一役かってくれるんだからね。
「この地でちゃんと育つんでしょうか?」
「レイトンは十分育つと言ってるわよ。土壌分析では、肥料さえ必要としないと言っていたわ」
さすがにそれは無いだろうけど、あまり肥料を使わないのは良いことだな。
最初に1棟建てて、様子を見ながら増やせば良いだろう。
この地で自給自足は難しいかも知れないが、その努力はするべきだろうな。
そうなると、必要な物は水になるか……。
「水は結構確保してあるわ。ベルッドに感謝ね。200㎥タンクが2つ屋外にあるわよ」
「ベルッドさんも楽しみなんですよ」
皆がいないことを良いことに、3人でジャグジーを楽しむ。
湯気の中の星空に流れ星が見えた。
中々凝った造りなんだよな。
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次ぎの日は朝から穴掘りだ。
いつもならエミーも一緒なんだけど、今日はローザと一緒にレイトンさんのところに出掛けて、学校の授業についての打合せをするらしい。
あの2人ならちゃんとした学校に行っていたからだいじょうぶだろう。
他の連中も学校には行ったんだろうけど、ちゃんと授業を受けている姿がそうぞうできないんだよなぁ。案外、問題児だったんじゃないか?
アリスがイオンビームサーベルでどんどん壁を抉っていくから、1時間おきに獣機と自走バージがやってきて瓦礫を片付けて行く。
どうにか200mほど掘ったところで今日は終了だ。
瓦礫を満載にして帰っていく自走バージを見送ってカンザスに戻ると、リビングにいたのはフレイヤだけだった。
「ごくろうさま!」
ソファーに腰を下ろした俺に、コーヒーを作ってくれた。
ライムさん達も出かけてるのかな?
タバコを取り出して火を点ける。
やはり、仕事を終えた後の一服はたまらんな。それに、コーヒーにも合うんだよね。
「リオの方は進んでるの?」
「それなりかな……。今日も200mは掘ったけど、何て言ってもラウンドクルーザーが2隻並んで停泊できる大きさがないとね。まだまだ先があるよ」
「でも、完成すれば常時10隻以上が中継点に停泊出来るわ。倍以上の人で賑わうわね」
「ああ、そうなると更に商会も増えるだろうし、ホテルも増設しないとね。ちょっとした娯楽施設も欲しい所だ」
そう言えば、プールを作ろうって言っていたんだよな。
あれはどうなったんだろう?
地上設備だからヴィオラ専用桟橋に作っても良いと言った様な気がするぞ。
マリアンに確認してみるか?
メールをドロシーに頼んでおく。
忙しそうだから、メールなら返事が来るだろう。
「ところで、ドミニク達はまだ帰らないの?」
「ええ、激論を展開しているわ。原因は南西1,200km程のところで見付かった戦機よ。次々と見付かってるらしいの」
「それは、アデルが黙っていないと思うな」
「レイドラが教えてくれたけど、その通りみたいよ。あの一帯で戦機が6機、中小騎士団が多かったから皆大騒ぎみたい」
戦機1機でもステータスには違いない。他の騎士団とも同盟を組みやすくなるに違いない。
だけど、一箇所にそんなに戦機が埋まってるのは何故なんだろう?
俺としてはそっちの方が気になるな。
そんな事を考えていると、リビングの扉が開いてドミニクとレイドラが入ってきた。
疲れた表情で、ソファーに落ちるような感じで腰を下ろす。
フレイヤがミニバーに行って冷蔵庫からビールを持ってくる。
「ありがとう」
そう言ってビールを受取ると、早速プルタブを開けて美味しそうにドミニクが飲み始めた。
「昔からアデルは頑固なのよ。でも、その気持ちは理解出来るわ。直径100kmに戦機が6機。大勢の騎士団が出掛けているわ」
「だが、行って必ず見付かるわけではない。俺としては賛成しかねるな」
「結論的には、そうなったわ。次ぎの戦機はアデルってことでね。たとえ戦鬼でもアデルに渡すつもりよ」
「良いんじゃないか。俺達には戦鬼が1機増えてるし。それに、アデルも欲で動いてるわけじゃないと思うよ。
一応同盟関係ではいるけど、将来的には袂を分かつんだから、それまでに少しでも多く戦機を揃えたいんじゃないか?」
現状で2機だ。このまま一緒に行動していれば同盟期間内に2機位はさらに増やせるんじゃないかな。無理はしない方が良い。
「それで、何時出掛けるんだい?」
「3日後よ。コースはこの間の延長線を探索するつもりよ」
千kmは先だな。採掘と合わせると10日程度の航行になりそうだ。
「明日にはベラドンナが帰港するわ。次の出航の準備に5日は掛かりそうだけど、カンザスの巡航速度を考えると、5日目には合流が可能よ」
寂しそうにドミニクが呟く。
確かに、ちょっと低速だからねぇ。
「となると、ガリナムはベラドンナのエスコート?」
俺の問いに、レイドラが小さく頷くことで答えてくれた。
あれだけ派手に活躍してきたんだから、しばらくはメイデンさんも大人しいんじゃないかな?
カテリナさんに40mm滑腔砲を強請っていたけど、どうなったんだろう?
後でカテリナさんに聞いてみよう。
「メイデンさんが一緒なら安心出来るよ。今度は俺も一緒だから、何かあれば急行できる」
お願いするわ」
アデルの心境ならマンガン団塊よりも戦機が欲しいに違いない。出航して直ぐに探索を始めるんじゃないかな?
いつものコースをちょっと変えただけで見つかる場合だってあるのだ。それに戦機を欲しがるのは騎士団なら当然だ。
ドミニクだって更に増やしたいに違いない。
次回の鉱石探索だって、南西方向をあえて狙わずに北の山裾に近い区域を探索するのは、鉱石だけが目的ではない筈だ。
とはいえ、同じ騎士団であれば、各種のラウンドクルーザーを揃えるのではなく、同型艦をそろえるべきだな。それが出来ないならば少なくとも船速は揃えるべきだろう。
「そうなると、後3日はここにいることになるのね」
「穴掘りが少しは進むな。現場監督がこの頃差し入れしてくれるんだ」
差し入れしてまで俺の機嫌を取ってるんだよね。
余程工事が進むんだろうけど、その工事の発注主って俺じゃないのか?
考えると混乱するから止めとこう。現場監督が持ってきたお菓子は美味しく皆で頂け案だからそれで良しとしよう。
「まだまだ掛かりそうなの?」
心配そうな表情でフレイヤが聞いてきた。
「そうだなぁ……、半年位は掛かるんじゃないかな? 現在の主力工事は転回用のホール造りと、新西桟橋の工事だからな。誘導路は深く掘るし、北に作る桟橋間の連結用ホールはまだ手付かずだよ」
「それと平行して、屋外のバージ桟橋も作ってるんでしょう?」
「あっちは、既存を長く伸ばすだけだから、俺がいなくてOKだと思うな。俺が手伝えるのは工事用の先行トンネルの掘削だ」
桟橋を新たに作るのだ。そう簡単には終らないと思うな。
3日以上停泊している小さな中規模の騎士団の獣機士達も、小遣い稼ぎに手伝ってくれてる。
何かあったらと、保険代わりに手伝ってくれてるみたいなんだが、マリアンはちゃんと給料を支払っているようだ。
これはこれで、あれはあれって奴だな。俺達はそんな事で恩を買おうと言うつもりはこれっぽっちも思っていない。
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3日後にカンザスが先行して拠点を出る。
その日の作業が終わり夕食を取りに皆がリビングにあつまった。
食事が終わり皆がワインのカップを傾けたところで、カテリナさんにカンザスの唯一の欠点について確認することにした。
「そうねぇ。確かにカンザスは少し遅いかもしれないわね」
「何とか出来ないんですか?」
皆がカテリナさんに視線を向けているから、俺の問いは全員の望みでもあったようだ。
最大船速が35kmは巡航時の最大の傷害だ。最低でもヴィオラ並みが必要だろう。
「カンザスの質量が問題なの。いくら反重力装置で船体を浮かせても、動かすとなれば多格式走行装置の足の材質の耐久性が足りないのよ」
確か今の材料は、獣機の外骨格と同じクロマリン合金だな。
それより強い材料となると……。
良いのがあるじゃないか!
「カテリナさん、重ガルナマル鉱石があるんじゃないですか? あれなら、新型獣機の骨格や外骨格に使えるぐらいですから……」
「重ガルナマル鋼? そうねぇ、……検討する余地はあるわね」
突然席を立つと、リビングから飛びだして行った。
早速、ラボで試験するつもりなのか?
「何とかなりそうね」
飛びだして行った扉を見詰めてドミニクが呟く。
俺達も同じように扉を見ながら頷いた。
それから2日後。後方からガリナムが接近してくるのが分かる。あの後ろにはベラドンナがいるはずだ。
どうやらこれでマンガン団塊を探索できる。
たぶんブリッジのドミニク達もホッとした表情をしているに違いない。
カンザスの飛行にはもう1つ問題がある。
バージを曳航出来ないのだ。
これも、今後の課題の1つだな。通常の牽引方式では、万が一の時にその場に放置しなければならない。頭の痛い問題ではあるけど、1つ1つ解決していくしか無さそうだ。




