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102 ヴィオラのいない鉱石採取


 ライデンヌ放送局の連中が帰ってから5日が過ぎた昼下がり、ヴィオラ騎士団の主だった関係者がカンザスの大会議室に揃った。ガリオンさんやラズリー、マリアンそしてカテリナさんまでもが集まっている。


「どうやら、私達の中継点も順調にその役目を果たしているようです。また、新たな中継点であるバージターミナルがテンペル騎士団の名の元に作られようとしています。ますます、大陸の西に騎士団が集まって来るでしょう」

「そんな中には、問題のある騎士団もあるようだ。一応、商会と教会から騎士団の信用度を調査しているが、今のところは問題は無さそうだな」


 ドミニクの言葉に続いて、ガレオンさんが発言した。

 中継点の入港パスを発行する際の審査が、上手く機能したという事だろう。籤引きの前に書類審査をしたと言ってたからな。


「現在は問題が無い。だが、3カ国お妃様達から警告を受けた。前に中継点にやってきたサーペント騎士団が壊滅したらしい。自業自得だから誰も気にはしないだろうが、サーペント騎士団と取引のあった商会も影響を受けているとの事だった。

その幹部の一部は俺達を恨んでいるらしい。ここは、ある意味閉鎖空間だ。テロが起きる可能性が無視出来ない。

 ガレオンさんの所にトリスタンさんのところから、専門家を招いている。注意してくれ。とありふれた事しか言えないが、十分に注意はして欲しい」


「テロ? 私達に恨みがあるって言っても、私達には思い当たる事がありませんけど……」

「ちょっと悪戯をしています。それも、向こうから先に仕掛けたものですけどね」


 それで逆恨みされるんだから、とんでもない連中だよな。

 まあ、入るなりハッキングをするなんて、まともな奴では出来ないと思うけどね。


「騎士団員の安全は保証できるの?」

「万全とは言えませんが、ヴィオラ騎士団専用桟橋であれば問題ないでしょう。考慮すべきは中央桟橋と西の桟橋です」


 商会の荷役に係わる要員は多い。さらに拡張工事に伴う作業員も増えている。

 身元調査は万全とは言っているが、紛れ込むことは可能だろう。商売上の来客も多いようだ。

 

「トリスタンさんは何人派遣してくれたの?」

「2人だ。警備兵とはかなり違った人達だったよ」


 心配そうな顔をしたアデルに俺が答えた。2人と言う数に更に不安が増したようだ。


「トリスタンが2人と言うなら2人で十分と言う事よ。悪い意味ではないの」

 そう言って、カテリナさんが皆を安心させる。

 

「ウエリントン王国のカウンターテロ専門のギルドを仕切る程の実力よ。リオ君には負けてしまったけど、決して弱い訳ではないわ。情報収集能力と部下の選択は、今まで何度もテロを未然に防いでいる事でも分かるわ」

「ガレオンさんが警備隊長である事は向うも知っている筈ですから、何かあれば連絡が行くでしょう」

「一度顔をみせて、それっきりだ。連絡がまだ無いという事は調査をしているんだろうな」


 そう言ってガレオンさんがタバコに火を点けた。

 殆ど気配を消して行動してるからな。誰も気が着かないと思う。


「そっちは、専門家に任せておくとして、私達は出航するんでしょう?」

「もちろんよ。その方が安全だわ。ヴィオラは売り払って、新たなラウンドシップを作ることになるけど、それまでは3隻で対応することになりそうね」


 その3隻が全てバージを曳けるのだ。

 さすがにガリナムは200tバージを1台だが、カンザスとベラドンナンは300tバージを4台曳いている。

 それに、中継点から1日も進めばマンガン団塊がゴロゴロしてるんだからありがたい話だ。

 もっとも、西にはどんな巨獣がいるか未だ分かっていない事も事実なのだが、今のところは、同じような種類しか見掛けない。


「明日10時に出発します。一応、10日を予定するけど、バージが満載になり次第引き上げるわ。万が一、閃デミトリア鉱石の反応が出た場合はガリナムで追跡します」

 ドミニクの言葉に皆が頷く。

 何と言っても先着順だからな。先に見つけた騎士団の物だ。


 会議の話が中継点の改修工事に移っていく。

 俺達が手伝ってる作業は、その進捗を獣機の作業量に換算して、ヴィオラ騎士団からの融資額にしているらしい。

 俺達3機で獣機20機分以上の仕事をこなしているそうだ。

 

 まあ、タダでもやってあげたけどね。

 後で、商会側がボーナスを支給する相談をしていたと、マリアンが教えてくれた。

 ちょっと嬉しくなってしまうのは平民の性だな。


 会議の最後の話はアレクの容態だ。

 どうやら動けるまでに回復したらしいのだが、病室を抜け出しては酒を飲んでいるようだ。

 ドミニクの判断でカンザスに引き取ることになったのだが、そうなるとサンドラ達も一緒だから戦機の配分で悩むところだ。

 今回は別行動ではないから、まとめてカンザスに搭載しても良さそうだ。


「新たなラウンドクルーザーは、艤装中の新造巡洋艦を半額で譲って貰ったわ。潜砂艦の対処方法を編み出してくれたお礼ということなんだけど、構造は前のヴィオラと同じにするつもりよ」

「少しは改造しないの?」

「足回りを強化したぐらいだわ」


 前のヴィオラの思い入れがあるんだろう。

 俺もそれで十分に思える。俺達が相手にするのは巨獣であって、他の騎士団ではない。


 そんな会議が終り、帰ろうとしたところで、カテリナさんに呼び止められた。

「そろそろ薬がなくなった頃でしょう。次ぎはこれを試してみて!」

 そう言って紙包みを渡されたが結構重い。

 その中にはプラスチックのボトルに入った、ピンクのカプセルが沢山入っていた。

 「1回1カプセルで十分よ」

 そう言いながら、ウインクしてるのがちょっとだな……。

 後でアリスに分析して貰おう。


 アデルそれやメイデンさんはさぞかし忙しいだろうな。

 明日10時だとそれなりの事前準備が必要になるだろう。

 その点、クリスは今のところ暇だし、ドミニク達は今まで十分に準備している筈だから、リビングで俺達と一緒にコーヒーを飲んでいる。


「ところで、どの辺りを探すんだい?」

 俺の言葉にドミニクが端末を操作してスクリーンを展開する。

 そこには、科学衛星が捉えた中継点周囲の画像が映し出されている。


「尾根沿いに行こうと思うの。南西は他の騎士団が向かっているわ。尾根沿いは危険ではあるけど、鉱石の宝庫よ」

「前回は巨獣が出たんじゃなかったか?」

 

 俺達が大型巨獣を相手にしている時にアレク達はイグナッソスの群れを相手にしてたんだよな。

 良くも無事だったと思うぞ。だけどその後であの惨事だからね。


「円盤機が頼りだけど、尾根が深い場合は哨戒機を増やすわ」

「夜間もだいじょうぶだろうね?」

「サーマル画像と動体探知機能を強化してあるから前よりは安心よ」


 カテリナさんの言葉に皆が納得してるようだ。

 マッドだけど、結果はちゃんと残してるからなあ。


「そういえば、例の滑腔砲はどうなりました?」

「ちゃんと、ベラスコの分を作ってあるわ。サンドラ達にも渡してあるから、備えは万全よ」


 リンダが興奮してたからな。あれが、4丁あるだけで安心できる。

 将来は、カンザスの獣機部隊が装備するのだが、それだけで戦機数体分に匹敵するんじゃないか?

               ・

               ・

               ・

 翌日。

 約束の時間に俺達は中継点を出る。

 ラウンドクルーザーだけで外に出ると、谷の両側に作られたバージ桟橋からバージを接続して谷を出て行く。

 先頭はガリナムだ。その後を、ベラドンナが続いて最後はカンザスになる。


 一路、尾根伝いに谷を南に進み、尾根が尽きた時に西に進路を変える。そのまま、第2巡航速度を保ちつつ足早に西へと向かう。

 俺達は、たちまち取り残されてしまった。


「やはり、地上走行速度が時速40kmは出せないと辛いのじゃ」

「イザとなれば、空を飛べば良い。距離が100kmを超えたらたぶんそうすると思うよ」


 ベラドンナでさえ時速45kmは出せるからね。

 そんな連中が真直ぐに1日も走れば、カンザスとの距離は200km程離れてしまう。

 一度探査した場所だからなるべく先に向かおうとするのは分るけど、もう砂埃すら見えなくなってしまった。


 俺達の前には広大な荒地だけが広がる。そんな光景をエミーがジッと見ていた。

「姉様は何処を見ているのじゃ?」

「私ですか? ……この大地ですよ。巨獣を育て、私達の日々の糧を恵んでくっる優しい大地ですから」


 優しい大地……。そんな見方も出来るんだな。

 だが、優しくとも、俺達に厳しい試練を与える事も確かだ。ある意味、母のような存在なんだろうな。

 俺達を優しく見守り、時として厳しく俺達に接する。

 そんな姿をエミーは見ているのだろう。

 

「たぶん、本格的な探査は明日の夜になるんじゃないかな。この辺りは前回に探査しているからね」

「そうじゃな。……姉様。我等とゲームで時間を潰そうぞ」

 そう言って、エミーを誘う。

 テーブルにはゲームのスクリーンが投影されており、お菓子と飲み物をライムさん達が用意している。

 きっと、2人も参加するんだろうな。

 エミー達のはしゃぐ声を聞きながら、のんびりとタバコを楽しむ。


 中継点から出てしまえばテロには無縁だが、マリアン達はそうもいかない。ガレオンさんとシリルさん達に任せる他は無いんだが……。

 だが、シリルさん達2人がかなり高度な技能を持っていることは確かだ。

 誰にも知られずに、闇から闇に始末するんだろう。


 ひょっとしたら、カウンターテロの隊員って、この時代の忍者みたいな存在なのかもしれない。

 そんな存在がこの世界の影で活躍しているのだろうか?

 そういえば、王都の治安は意外と良いんだよね。

 治安維持部隊もあまり見掛けえた事が無い。忍者みたいに闇から王都の治安を維持している存在があるのかもしれないな。


 そんな事を考えていると、いつの間にか時間が経っている。

 今日は平穏な1日になりそうだな。


 荒地に夕暮れが迫ると、全員がリビングに集まってきた。

 夕食を早めに取って空に飛立つつもりなのかな?

 それ程贅沢な食事ではないが、新鮮で量はある。

 あまり高くは無いワインを飲みながら皆で話をしながらの食事は、俺には贅沢に感じるな。

 

「今夜0時に飛立つわ。現在のヴィオラとの距離は140km。20分も掛からないけど、夜の航行は物騒でもあるし、カンザスが近くにいれば安心でしょう」

「ガリナムの前方30km程の着地するわ。数時間で追い抜かれるけど、その頃には周囲も明るくなる筈よ」


「でも、円盤機が周回してるんですよね。接触することは無いんですか?」

「飛行高度が全く違うわ。カンザスは100m程の高さだし、円盤機は数百m上空よ」


 そんな話をワイングラスを傾けながら聞いている。

 確かに高度が違えば問題は無いだろうが、ちょっと心配になるな。


 その辺りは、ブリッジのクルーに任せよう。

 カンザスを中継点に手動操縦で入港出来る程の腕の持ち主だ。

 後は、フレイヤ達の周辺監視の連中が的確に指示を出してくれるだろう。


「それで周辺の状況は?」

「静かなものよ。尾根の影が気にはなるけど、科学衛星の画像で先読み出来るから今の所は安心ね」


 フレイヤも手持ち無沙汰のようだな。

 まあ、何も無いと言うのが一番ではあるのだが……。


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