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第7話  冒険者ギルド2

「すこし待ってもらえるかな?」

「なにか?」

 エロフ! じゃなくてエルフだ! 金髪エルフ、ケモミミほどじゃないけど感動だ。 

 肌も綺麗で髪もサラサラ、これこそがエルフだ。目は少し細目で、眼鏡をかけていた。

 まあ、声を掛けてきたのがおっさんじゃなくて良かったよ。

 

「私はサーシャ・プライス。ここの副ギルドマスターだ。君に聞きたいことが有ってね。少し話さないかい?」

 話さないか、と一応は聞いてはいるが、この副ギルマスの提案は事実上の命令だ。何しろ声は明るいのに目は全然笑っていない。怖い。

 後ろのイヌミミ受付嬢さんからも断るなよ、と言いたげな雰囲気がビンビンと伝わってくる。チラリと後ろのイヌミミさんの方を見ると、耳をペタンと倒して目線を避けられてしまった。

 怖いんですよね。わかります。

 これは了承するほかないだろう。

「すみません、これから宿を探さないといけないので……」

 やばい、つい断ってしまった。仕方ないじゃん、怖いんだし。


「ほう? それは気にしなくていい。宿はいくつか紹介してあげよう」

「え? いや、その……」

 怖いから行きたくないですって言えたらなぁ! 言える訳が無い。


「他に何か問題でも?」

「問題は、まあ、ありませんが」

「では2階に行こうか。冒険者のミーティングスペースがあるからそこで話そう」

「わかりました……」

 もう頷くしかない。


 2階にはいくつか部屋があり、副ギルマスに連れられその中の一つに入る。

 中には机と、それを囲むように椅子がいくつかあった。


「座ってくれ」

 促されるままに座る。机を挟んで対面するようにサーシャさんも座る。

 机に肘をつき顔の前で指を組むサーシャさんはどこかの司令官に似ていた。

 威圧感が半端ないぞ。


「さて、少し説明をしよう、呼び出された意味を知りたいだろう?」

 俺は無言で頷く。


「この前、新規に登録した冒険者、特に中級職や上級職の奴が問題を起こしていてね。

 いや冒険者が問題を起こすのは日常茶飯事だが――この前のは酷すぎたんだ。

 やつら迷宮で魔物を狩るのは良いがそのまま放置して素材を持ってこないんだよ。

 魔石を取り出しもしないんだ。殺せるだけ殺しているようだがね」

 酷い話だろう? とサーシャは続けた。

 サーシャさん青筋が浮いてますよ? 威圧感が増すからやめて欲しい。


「迷宮で魔物を殺したら魔石を取り出さなければアンデット化する。

 とりだしてしまえばその内迷宮に取り込まれるので問題はないがね。

 死骸を見つけた他の冒険者が処理することもあるが、いかんせん取りこぼしが多い。

 少し前までアンデットが大量に発生していたんだよ」


「これは都市に深刻な影響を与えていてね、

 特に冒険者ギルドの損害には目を覆いたくなったよ……」

 お金も問題はシビアですよね、わかります。俺も異世界に無一文で送られるって事を経験しました。

「目に余るので全冒険者に対して調査が行われたんだ。

 これは簡単でね、私のように審問官のジョブをもつものが質問するだけでいい。

 簡単だろう?  

 新規で登録した冒険者だけではなく金で雇われた冒険者もだいぶいたが……まあ、

 ならず者のような奴らだったし処分する口実にはなったから良しとしよう。

 おかげで少し冒険者が不足しているがね」

 だんだんと威圧感が増していく。何も悪いことをしていないのに、気が付けば冷や汗をかいていた。


「だから君のような将来有望な冒険者は大歓迎だ。

 だからこそ君がケルンや帝国に対して、

 被害を与えようとしているかどうか調べる必要がある。

 わかってもらえるかな?」

「わ、わかります」

 ええ、わかります、わかりますとも。だからその笑みをやめてください。怖いです。


「では今から君にいくつか質問するからそれに答えてくれ」

「わかりました」

 さっさと答えて帰らせてもらおう。


「君はこのケルンや帝国に被害を出すために冒険者になったかい?」

「いいえ」

 もちろん違う。そもそも今日この世界に来たばかりだぞ。

「では冒険者になった理由は?」

「身分証と金を手に入れるためです」

「なるほど、ありがとう。もう質問は終わりだよ」

「もう終わりですか?」

 あっけないな、もっといろいろ聞かれるかと思った。


「ああ、君には何も問題ないようだ。君を疑ったことを謝罪させてもらおう。本当にすまなかった」

「いえ、必要なことだとは思いますから」

「冒険者がみな君のように素直ならこちらも楽なのだがね」

 はあ、とため息を吐くサーシャさんはとても疲れた顔をしている。


「結構ヒヤヒヤしていたよ。最上級職に暴れられたらどれだけ被害が出るかもわからないのでね」

「暴れたりなんかしませんよ!」

 そんなことを思われていたのか……。

「はっはっはっ! いや悪かったね」

「というか、俺が暴れた場合どうするつもりだったんですか?」

「審問官や捜査官のジョブには対象を拘束するスキルも有ってね、

 冒険者と一対一なら遅れは取らないさ。

 最上級職に試したことはなくて少し心配だったけどね」

 なんてヤバい能力なんだ、サーシャさんには逆らわないようにしよう。


「そういえば君は若くして賢者になったみたいだけど、今まで冒険者にもならず何をしていたんだい?」

 ……どう答えたものだろうか。

 異世界から来ましたと馬鹿正直に答えるのは駄目だろう。かと言って嘘を吐けばバレる。ならもう黙秘しかない。

「おっと、冒険者に過去の詮索はご法度だったね。悪い悪い」

 なんとかやり過ごせたようだ。


「そうそう、宿を紹介しないといけなかった――君は獣人が好きかい?」

「大好きです!」

「お、おう。そうか」

 ついつい叫んでしまった。

 少しサーシャさんが引いている気がするが気にしない。


「獣人親子が経営する宿が有る「そこを紹介してください!」んだが――最後までしゃべらせてくれないか」

「あ、すみません」

 失礼なことをしてしまった。


「まあいい。猫の尻尾亭という宿だ、冒険者ギルドを出て右へ行けばいい。あと今回のお詫びと言っては何だが、これをあげよう」

 サーシャさんからチケットを10枚渡される。

「これは?」

「宿屋チケットだ。加盟店なら一枚で一晩泊まれる。猫の尻尾亭も加盟していたはずだよ」

「ありがとうございます!」

 いやはや、怖いサーシャさんに尋問された甲斐があったというものだ。ありがたく貰っておこう。はやく宿屋に行きたい。


「引き留めて悪かったね。君のこれからの活躍に期待している」


 いろいろあったけどただで宿が手に入ったのはありがたい。

 さっそく宿に向かうとしよう。


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