表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

第5話  ユータ、ウサギを狩る

「ここらでいいかな」

 俺はこの世界で最初に転移した場所に戻ってきていた。

 最初は林かと思っていたが、少し離れた場所から見るとかなり広いことが分かった。どちらかと言えば森と言ったほうが正しいだろう。

 ここなら何か売れそうなものが有るに違いない。とりあえずは町に入る金を稼がないと野宿が決定してしまう。

 なんとしても金を稼がないと。

 ウサギなら1匹銀貨一枚、余裕を持って3匹は狩りたい。


「とりあえず魔法が使えるか練習してみるか」

 ……そもそも魔法ってどうやって使えばいいのだろう? とりあえず、手を前に出して適当に魔法を唱えてみよう。

「ファイヤーボール!」

 何も起こらない。呪文が違うのか?


「メ〇! メ〇ミ! メ〇ゾーマ!」

 何も起こらない。うん知ってた。


「周りに人は居ないよな?」

 少し心配になり、まわりを見渡すが誰もいない。こんなところを誰かに見られたら1週間は引きこもると思う。


「てか、全然使い方がわからん」

 どうすんのこれ? 賢者が魔法使えないとか、アイデンティティ喪失してないですか? 

「そういえば前に読んだラノベでは魔法を使うにはイメージすることが大事とか書いてあったっけ?」

 まあ、ダメもとでやってみるか。


「炎よ! 球となり我が敵を穿て! ファイヤーボール!」

 何も起こらない。

 フ〇ック! 返せ! 俺の尊厳とか色々、さっき失った大事なものを返せ!


 マジでどうすんの? 転生初日から詰んでませんかね?


「魔法魔法まほ……ん?」

 あれ、なんか使い方が分かったかもしれない。今までは手の先から魔法を出すイメージでやってたけど、そうじゃ無く、自分の内側、記憶の糸を手繰るような感覚でイメージしてみると頭の中に色々と魔法が浮かんできた。

 とりあえず、ファイヤーボールを選択、ボタンを押す感じでポチっとな。

「ファイヤーボール!」


 ボヒュン!


 うわ! 手からなんか出た。こうやって使うのか、なるほど。

 よしよし、使い方もわかったし練習しよう。

 あれ、なんか焦げ臭い?

 ふとファイヤーボールが飛んで行った先を見てみると木が燃えていた。

「やばい! 火が燃え移ってる! ウォーターボール!」


 ボヒュン!


 ……火は消えた。だけど ウォーターボールさんよ。木をへし折らなくても良いんじゃないですか?

 これでウサギ狩りなんてできる訳がない。オーバーキル過ぎる。ミンチなんて買い取って貰えないだろうし、そもそも触りたくもない。


 まだ、まだ慌てるような時間じゃない。風魔法もある、試してみても良いだろう。

「エアカッター!」

 ……一抱えある木が一発で切り倒せたよ、木こりさんも大助かり。HEY! HEY!! HOO!!!

 こんなもん狩りに使えるか! くそったれ!


 ●


「おらぁ!」

 ウサギにこん棒を振り下ろす。ウサギは少しうめき声をあげて動かなくなった。こん棒って意外と使い易いものなんですね。ゴブリンになったようで気分は最悪だけど。

「やっと三匹……」

 この数時間でだいぶウサギ狩りが上手くなった気がする。コツは森から追い出すことだ。森の中では障害物が多く、ウサギに追いつくなど不可能だが、平野に追い出してしまえば賢者のステータスなら追いつくことができる。

 追いついたとしても攻撃を当てるのは難しいが、それは数をこなせばいつか当たる。

 

「そろそろ町に行かないとな」

 だいぶ日が暮れてきた。そろそろ町に向かわないといけない。

 ウサギの数は3匹で銀貨三枚。これだけあれば町に入り何か食べることができるだろう。

 俺は狩ったウサギを抱え、町に向かって走り出した。

      

 ●


「何とか間に合った……」

 ぎりぎりセーフ。何とか日が落ちる前に到着できた。最上級職万歳、日本にいた時の体力だったら絶対に間に合わなかった距離だ。

 並んでいる間は基本暇だ。できることと言ったら誰かと話すことぐらい。まあ、適当な雑談でもこの世界の事が知れるから助かる。

 こんなことも知らないのか? とバカにされる事に我慢できるならいい情報収集だろう。


「次!」

 門番から声がかかる。俺の番だ。


「すみません。身分証が無くて、お金もないので、このウサギを買い取ってもらいたいのですが」

「この水晶に触れろ」

 門番さんが門の端に置いてある水晶を指さす。言われた通りに触れたら青色に光った。


「問題なし。奥でそのウサギを買い取ってもらうといい。そこで入場料も払うように」

「ありがとうございます、あと冒険者ギルドってどこですかね?」

「都市の中央、内壁の傍だ。五階建てのでかい建物だから行けばすぐにわかる」

「ありがとうございます」

 お礼を言って頭をぺこりと下げる。

 門番さんはさっきまでの厳しい顔を緩め〝迷宮都市ケルンへようこそ〟と言ってくれた。あの人は絶対いい人だ。心のメモに書き加える。


 言われた通りに門の中を進む。いろいろとごちゃごちゃしたスペースが有ったのでそこに向かった。

「すみません、ここで買い取って貰えるんですか?」

「そうだよ、そのウサギかい?」

 良かった。ここであっていたようだ。


「そうです、三匹全部買い取って貰いたいのですが」

「かまわないよ。ん? 血抜きしてないのかい? こりゃあ駄目だよ値段が下がる」

「血抜き?」

「ああ、血抜きもしてない肉なんて臭くて食えたもんじゃない」

 なるほど、そういうものか。

てか、ナイフすら持ってないのにそんなことできる訳ないだろ。


「こりゃ皮しか使い物にならんな……三匹全部、大きいのも小さいのも合わせて銀貨2枚と大銅貨1枚だね」

 おおよそ3割減か……まあ、仕方がない。

「わかりました。それでお願いします」

 ぼられてる感が無くもないけど、他に選択肢もない。諦めるしかないだろう。

「あいよ、入場料引いて銀貨1枚と大銅貨1枚ね」

 硬貨を受け取り門を抜ける。

 

「んー、やっと町に入れた」

 町の中に入り、一言呟く。

 町に入れたからといって感慨にふける訳にもいかない。冒険者ギルドに向かいお金を借りないと。

 さっそく俺は冒険者ギルドに向かい歩き始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ