第3話 ステータスメイキング
「ではステータスを決めていきましょう。名前はどうしますか?」
「ユータにしたいのですが目立ちますかね?」
親に貰った名前だ、できれば残しておきたい。先に死んでしまったのだから親不孝には変わりないがせめてこれくらいはしてもいいだろう。
「苗字がなければ大丈夫でしょう、今までにも転生した方はいらっしゃいましたからね。そこそこ日本風の名前の人はいらっしゃいます。次は職業を決めましょう」
職業、これは一番の悩みどころだ。
女神様によると職業は能力の成長に補正がかかったりもするらしい。例えば戦士なら力が伸びやすくなる、みたいに。
「とりあえずいろいろ見てもらいましょうか、おすすめは魔法が使える職業です。人数が少ないので食べていくのには困りませんよ。戦えない魔術士系職業の方は畑に水をまいたりして暮らしています」
――世知辛い! 話が世知辛いですよ、女神様。
まあ、魔法が使えたら開墾も捗りそうだし日照りでも大丈夫だろう。
そう考えると魔術師と農家って相性がいいのかもしれない。
「これに職業が載っているので見てください。職業は、下級、中級、上級、最上級になっています」
女神さまがタブレットを渡してきた。
「多いですね……」
――マジで多い。
いくらスクロールしても終わりが見えない。そういえば日本でも3万種くらい職業があったっけ? なら納得かも。
そこにある職業は、
近接戦闘職
剣士→剣術士→剣聖→剣神
槍士→槍術士→槍聖→槍神
斧士→戦斧士→斧聖→斧神
拳士→拳闘士→格闘家→拳神
重装士→武士→武将→武神
騎兵→騎士→騎将→神騎将
騎兵→天馬騎士→聖天馬騎士→戦乙女
騎兵→竜騎士→聖竜騎士→神龍騎士
間接戦闘職
魔術士→魔導士→魔導将→賢者
弓士→弓術士→狙撃手→狙撃神
魔物使い→精霊術士→召喚術士
支援職
僧侶→神官→司祭→賢者
盗人→盗賊→刺客→密偵
占い師→呪術士→祈祷師
踊り子→舞踏家
→歌手
特殊職
勇者→覚醒勇者
聖女
巫女
大賢者
戦闘系だけでもまだまだ有るし、それに生産職や事務系の職が続いている。
――なんかこの職業って〇〇ができます的な事を証明する資格じゃないかと思えてきた。あながち間違ってなさそうだ。
「今回は口止め料も含めていますからね、すべての職が選べます。普通は中級職までなんですよ?
女性用の職業もありますから注意してくださいね。女性専用ではないので選ぶこと自体はできますが……選んでみます? ペガサスに蹴られるかも知れませんが」
「勘弁してください」
――ちょっと! ワクワクした顔でこっち見ないで、選びませんからね!
ペガサスに蹴られるとかシャレにならないし、男が職業聖女(笑)って、異端審問されても文句言えんぞ。
それにしても、処女の乙女しか乗せないとかペガサスも難儀な宗教を信仰したものだ。業深すぎるだろ。
「女性の職は論外として――ん? 賢者ってなんですか? 大賢者との違いは?」
「魔術士と僧侶はそれぞれ攻撃・支援に特化した職ですが、賢者になると両方使えるようになるのです。もちろんランクアップ前のクラスによって得手不得手はでますよ。あと賢者は空間魔法が使えます、物理的にも飛躍的に強くなります。
大賢者は賢者には違いないですが問答無用で勇者に振り回されることになります。ある意味呪われた職業です。
特殊職は全部そんな感じです。
勇者は隠しても勇者とばれ祭り挙げられます。嫌なら人のいないところで、自給自足するしかありません」
悲報、特殊職はある意味で呪われていた。
――まあ、好き好んでやりたがるやつもいるかもしれんが、俺は絶対になりたくないな。
とりあえず、この中なら賢者かな? なんか万能職みたいだし。あと空間魔法も欲しい。
「魔導士系賢者でお願いできますか?」
「わかりました。せっかくですし鉄球はいりますか? 最強の装備ですよ」
「なんで知ってんだ!?」
――やべ、つい突っ込んじゃった。
「だいぶ緊張しているようでしたので、つい」
この女神なかなか良い性格をしているようだ。
「あとは他の転生者と同じように何か才能を伸ばします。何がいいですか?」
「回復魔法でお願いします」
やっぱり怪我をしたり、病気になったりする可能性を考えるなら回復魔法一択だろ?
「――なかなか欲張りですね」
「そうですか?」
「……まあ良いでしょう」
よし、認めさせたぞ。これで怪我とかも怖くない。
「他のステータスはレベル1の賢者に合わせておきます。ステータスと念じれば確認できます。言葉も読み書きできるようにしておきますので心配いりません。向こうの通貨もいくらか渡しておきます」
読み書きができるようにしてくれるとは有り難いねぇ。てかなかったら詰んでる気もするが。
「いろいろありがとうございます」
「他になにか心残りや気になることはありますか?」
「あ、家族に言伝をお願いできますか? 少し心残りで」
もしできることなら伝えたい。
「それぐらいなら構いません」
「バカなことしてごめん、
みんな元気で、とお願いします」
「わかりました」
「ありがとうございます」
本当にありがとうございます、女神様。
「ではそろそろ転移させますね。 そういえば名乗っていませんでしたね。私はアメノミナカヌシ。
中条悠太さん、いえユータさん、あなたの人生に幸あらんことを」
「お世話になりました」
地球の日本で死んだ俺は、こうして異世界に転移した。
●
ユータの消えた部屋で女神が一息つく。
「言伝はどう伝えたものでしょうか……ユータさんの疑似人格が夢に出てくるで良いでしょうか」
……なかなか良いのではないでしょうか。これで良いでしょう。
「そういえばあの子に終わったら連絡しろと言われてましたね」
そういいつつ女神は電話みたいなものをとりだした。
「もしもし、私です。実験データを送りました。最上級職ですが」
『なんで最上級!? バカじゃないの?』
「少し口を滑らしてしまいまして……口止めに」
『これだから引きこもりは……』
「引きこもりは関係ないでしょう!?」
『てか、少し頭いじれば良かったんじゃね?』
「バグが起きたらどうするのですか……」
『最上級職ぶち込んでる時点でバグだろ』
「はうっ!?」
『まあいいや、じゃあそっち行くね』
「お願いします。それでどっちに賭けます?」
『彼が不幸にも失意の中で死ぬ方に賭けるよ』
「では幸福に生きて満足して亡くなる方に賭けましょう」
『いいね、久々に賭けが成立だ』
「私が勝ったらあなたの秘蔵のワイン、もらいますよ?」
『ちょっ!? なら私はアメノの日本酒!』
「――っ!? え、ええ構いませんとも――」
『You're done。じゃあ、今から行くから。バーイ』
「ええ、それでは」
ぷつり、と通話の切れる音がする。
「どこで私が日本酒を隠してることを知ったのでしょうか?」
……大事な日本酒をつい賭けの景品にしてしまいました。ユータさん! 私の日本酒のためにも幸せになってくださいね!?